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お空の行き方




 雨が窓をたたきます。女の子はまん丸の雨つぶがくっついたガラスを、部屋の中から指でなぞりました。


「きょうも雨だねぇ」


 女の子はため息まじりにつぶやきました。お母さんも空を見上げて「そうだねー」とため息をつきました。





 ここは、森の中の開けた原っぱに、ポツンと建つ一軒家いっけんや。そこにお父さんとお母さんと女の子が三人で住んでいました。


 この土地には、もう何ヶ月も雨が降り続いています。草木も花も、いつまでも続く雨にぐったりとしているように見えました。


 今日もきのうもおとといも、毎日毎日雨が降ります。


「どうして?」


 女の子はお母さんに聞いてみました。


「なんでかなー。神様が泣いているのかな?」


 どんよりと垂れ込めた雲を見ながら、お母さんはそう言いました。


 そうなんだ、神様も泣くんだ。神様になにがあったのだろう。お友だちとケンカをしたのかな。飼っていたペットがいなくなったのかな。それとも転んでケガをしたのかな。わたしみたいにお父さんやお母さんにおこられちゃったのかな。


 神様ってどんな所に住んでいるんだろう。神様のお家って大きいのかな、行ってみたいな。会ってみたいな、そして泣いている神様の頭をよしよしってなでてあげるの。大丈夫だよって言ってあげるの。


 だって、わたしが泣くといつもお父さんがしてくれること。よしよしってしてから抱っこしてギュッてしてくれるの。そしたらねあったかくて、気持ちよくって、嬉しい気持ちになるんだよ。


 わたしも神様をギュウッて抱きしめてあげて、温かくしてあげて、気持ちよくしてあげたいな。そしたら涙も引っ込んで、きっと笑ってくれるはずだもん。そしたら雨も上がるよね。


 でもお空の上ってどうしたら行けるんだろう。女の子はうんうんうなり考えました。


「そうだ! 一番たかい木に登ればいい!」



 二階の窓から外を見て背の高い木を探してみます。


 ピカッ、ゴロゴロゴロ。


 稲光いなびかりが空から木の近くまで降りてくるのが見えました。あれに当たったら痛そうだな。女の子は、ぶるぶるとふるえました。


 長い長いハシゴをお空にかけたらどうかな? でもそんなに長いハシゴなんて見た事も無いし。うーんと考えて部屋の中を見回しました。


「あっ、そうだ!」


 部屋のすみに積み上げられたぬいぐるみをかき分け、タイヤの付いたオモチャ箱をゴロゴロと移動させ、かべに立てかけてあった物をズルズルと引っぱって、部屋の真ん中まで動かしました。そしてその上でピョンピョンととびはねました。


 トランポリンだったらお空までとんで行けるかもし知れない。そう思ってとんでみるけれど、お空どころか、お部屋の天井までもとどきませんでした。


「これも、ダメだ……」




 うーん、うーん、女の子はなやみました。


「お空をにらんでどうしたの?」


 ほおづえをついて空を見上げる女の子にお母さんがたずねました。


「どうしたらお空の上に行けるのかな?」


 お母さんはおどろいて女の子を見ましたが、ふざけた様子はありません。


「どうしてお空の上に行きたいの?」


 お母さんは女の子がなぜそんな事を言うのかが気になり、そうたずねてみました。


 女の子は泣いている神様をなぐさめて笑顔にしてあげたいのだと言いました。どうやらお母さんの言ったことを真に受けたようです。でも、今さら「うそ」だなんて言えません。


 空に行きたい理由は分かりましたが、お母さんにも空に行く方法は分かりませんでした。お母さんも女の子といっしょになって考えました。


「うーん、そうね……。夢の中なら会えるかも知れないわよ」


「ゆめの中?」


「そうよ。神様はお空よりももっと遠い場所にいて、皆の事を見ているのよ。だから眠る前にたくさんお願いしたら、願い事が叶うかも知れないわね」


 お母さんはそう言いました。



 お空の上に行かないで、お家から一歩も外に出ないで、神様に会えるのかな? と女の子は首をかしげました。でも自分では空への行き方が分からないので、それを試してみる事にしました。




 お願いします、神様に会いたいです。神様に会わせて下さい。神様の所へ行かせて下さい。


 女の子はベッドの中で、胸の前で手を組み、目を閉じて一心にお願いしました。お願いしながらいつの間にか眠ってしまいました。












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