第9話
生水で腹を壊した俺は一旦休んで(またとか言うな!)腹を暖めたら治った。
無駄に頑丈だな、俺!
いや、腹を壊したんだから頑丈ではないか
「リーファ」
「…………」
「おーい、リーファ」
リーファは俺が腹を壊したのは俺に生水を渡した自分のせいだって思ってうつむいて口をきいてくれなくなってしまった。
(別にリーファのせいじゃないんだけどな)
「そういやリーファ、お前の鞄っていっつも何が入ってるんだ?」
「…………」
「リーファー」
「…………」
「はあ」
今さっきからずっとこの調子だ。
無視されるっていうのも結構くるな……。
「……見て、みる?」
やっと口きいてくれた!
「見せてくれるのか?」
「うん」
「お昼ご飯、食べるときに、見せて、あげる」
「そうだなー。腹減ってきたし、お昼ご飯にするか」
「うん」
「どこで食べるかなー」
「あそこがいい」
リーファが指さしたのは大きな木のある場所だった。
「そうだな、あそこにするか」
「うん」
俺たちは木の下に移動してかごを開ける。(ルーベルトさんがお昼にどうぞって持たせてくれた)
中身はサンドイッチ(のようなもの)だった。
「いただきます」
俺はきちんと手を合わせる。
リーファはそれを奇妙そうにじーっと見ていた。
「えーっとだな、これは俺の国の習慣(?)でだな、動物たちの命を奪って食べるから動物に感謝するというか、まあ、そんな感じだ!」
「そう、なんだ」
リーファはサンドイッチの入ったかごを再びじーっと見つめると俺と同じように手を合わせて「いただきます」と言った。
(う~ん、うまい! さすが王宮のコックさんの料理!)
俺がサンドイッチを利きとしてほうばっているとリーファが話しかけてきた。
「ユーキ」
「なんだ?」
「鞄の、中身」
「ああ、見せてくれるって約束だったな」
(出来れば食べ終わった後がよかったんだが……)
リーファはこく、と1つ頷くと鞄を広げた。
その鞄のなかみはと言うと
「た、短剣?」
鞄からでてきたのは、短剣と厚い本。
「護身用……」
「そ、そうか……この本は?」
「これは、魔法書」
「魔法書?」
「私が、覚えるときに使った」
「ふ~ん」
正直リーファに短剣を使う機会は訪れそうにないな。
絶対短剣を使う前に魔法使ってるよ。
「それじゃあ、いつもリーファの頭に乗ってるくまは?」
「この子は、くま」
「くま!?」
「くま」
名前がそのまんますぎるっ!
「くま、挨拶」
リーファが頭の上ねくまをとんとん、と叩いて言うと今さっきまでリーファの頭の上にいたくまが急に立ち上がりリーファの前に立ち、頭をペコリとさげた。
「くまが、動いたあぁぁ!?」
「私が、くまを貰ったときに、魔法を、かけた」
あいた口がふさがらない……。
リーファがいくら天才だからってこんなことまでできるのか!?
いや、確かにかわいいけどさ!
男子高校生がくまを見てかわいいって思うのは自分でもどうかと思うけどさ!
「くまは、私の友達」
「くまが友達?」
リーファはこくん、と頷くと自分の目の前にいるくまと遊び始めた。
遊ぶ内容がまさかのじゃんけん……。
この世界にじゃんけんってあるんだー
てか、くまってグーしか出せないじゃん……。
リーファはパーを出して連戦連勝。なんか、少し誇らしげだ。それに対してくまはここらなしか悔しそうだ。
いや、あたりまえだろう。
というツッコミは飲み込んだ。
今はこの状態を微笑ましく眺めているとしよう。
微、笑ましく……
「何やってるんだよお前ら!!」
何があったのか、くまは片手に短剣を(どうやって持ってるんだ……)リーファは魔法を使って大乱闘。
もちろん、俺は止めに入った。
怪我したけど。
くまの持ってる短剣で薄皮切られてリーファの魔法直で受けて。
さんざんだよ……!!
「で! 何が原因なんだ?」
「だって、くまが……」
くまの方をみると、リーファの方に片腕をのばして「リーファが……」とでも言いたそうな雰囲気だ。
「まあいいさ、それよりだ! 何で喧嘩に参加してない俺が一番怪我してるんだよ!」
「それは、途中で急に入ってくる、ユーキが悪い」
くまはそれに同意するかのように首を上下に振っている。
「おまえらな~っ」
俺は二人(一人と一体?)に拳骨をくらわせて、今回は一旦終わった。
後々聞いた話しだが、喧嘩の理由はじゃんけんであとだししたとか……。
あいつらのじゃんけんであとだしってあるのか?
今回の件で一番重大な被害を受けたのは俺の食べかけのサンドイッチだ!
後で大事に食べようって思ってたのに……! (泣)
リーファはリーファでちゃっかり自分のサンドイッチは崩れないよう避難させてるし!
もう二度と喧嘩はしないでほしい。俺の為にも。
くそっ、俺のサンドイッチっ!!