第8話
「zzz~zzz~」
コンコン、コンコン
「zzz~zzz~」
コンコンコンコンコンコン
「zzz~zzz~」
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンっ!
「うわっ、なんだなんだ、何事だ!?」
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンっ!
「扉が壊れる!」
俺は扉まで駆け寄って扉開ける。
ゴンっ!!
「いってえぇぇっっ!!」
扉を開けた先にはリーファが立っていた。
扉をノックしようとした瞬間俺が扉を開けたらしく、勢いよくリーファの拳が俺にあたった。
「おはよう」
「おはよう、リーファ」
俺は涙目になりながら答える。
「何かようか?」
「ルーベルトが、呼んでる」
「ああ、分かった」
俺が部屋から出るとリーファも俺の横を歩く。
「リーファも呼ばれてるのか?」
「うん」
「そっか」
「ユーキ」
「なんだ?」
「臭い……」
そりゃあ、風呂入ってないけどさ!
俺だってそろそろヤバイよな……。とか思ってたよ!
でもそんなストレートに言わなくてもいいじゃん!
「ユーキ?」
「わかってる、わかってるんだ……っ!」
「早く、いこ」
「ああ」
そして、歩き出す。
心に傷を負ったまま……。
ルーベルトのいる部屋の扉を開ける。
「あ、勇者様……」
「風呂貸してくださいっ!!」
ルーベルトさんは快く風呂を貸してくれた。
侍女を付けるて言い出したので全力で遠慮させてもらった。
まぁ、ということで只今入浴中。
「はあぁ~」
(やっぱり久々の風呂は気持ちいいなあ~)
久々の風呂をじっくりと長時間味わった。
「お待たせしました~」
俺は風呂に入っている間に洗われて綺麗になった自分の服を着て、貸してもらったタオル(多分)を首にかけた状態だ。
「いえ、大丈夫ですよ。ところで、お話があるのですが」
「なんですか?」
「勇者様がこちらの世界に連れてこられた理由を覚えていらっしゃいますか?」
「え~と、確か魔王を倒すため、だったっけ? あと、俺のこと勇者じゃなくて優生って呼んでもらえますか?」
勇者ってなんかいまいちしっくりこないんだよなー。
「わかりました。 そうです。ユーキ様が連れてこられた理由は魔王退治です」
「俺、なんにもしてないですよね」
「ですね。リーファ様も準備万端のようなので、そろそろ出発を、と考えているのですが」
「了解しましたー。いつ出発するんですか?」
「今すぐです」
…………はい?
ということで俺は今、大荷物を抱えて山道を歩いています。
「ユーキ、大丈夫?」
「だ、大丈夫、じゃ、ない……」
俺はいつも家でゴロゴロしてたからな、体力がないんだよ!
「休む?」
「休む!」
近くの木陰に入り休憩する。
「はー、疲れた……」
「まだ、ほとんど歩いてない」
「そう、言われても」
普段学校の登下校と体育ぐらいでしか動くことがないから体力がないだけなんだ! (泣)
「ちょっと、待ってて」
「え?」
リーファは一言それだけ言うと森の中に入っていった。
(何しに行ったんだ?)
俺は待ってる間、ルーベルトさんに渡された大荷物を漁っていた。
大荷物の中身はと言うと、まず寝袋、カンパンのような食べ物、防具、短剣だった。
剣と言ったらルーベルトさんから出発前に渡された。
今その剣は木に立て掛けている。
歩いている間は腰に吊っている。歩きにくいことこの上ない。
そして、重い……。
こんなものを吊って歩くから余計に体力を消費するんだ!
断じて俺が貧弱だからではない! 断じて違う! 本当だってば!
「ユーキ」
「ああ、リーファ、お帰り」
「ん」
リーファが渡してきたのは水だった。
「ありがとう、リーファ」
「別に、いい」
俺はリーファの持ってきた水を一気に飲んだ。
リーファの持ってきた水は凄く冷たかった。
「はあぁ~、うまい……」
「ユーキ、大丈夫?」
「大丈夫だってば」
「本当に?」
「本当、本当」
女子にここまで心配される俺って……。
もういい! しるもんかっ!
開き直ったほうが勝ちだ!
「よし! 休憩して、元気になったことだし、出発するか!」
「うん」
このあと、俺はリーファが持ってきた水で腹を壊した。
生水は怖いね!
誤字・脱字報告ありがとうございました!