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第6話

 その少女はずんずんとこちらに歩を進めてくる。

 そして、俺の前にくると


「あなたが、今回の、魔王退治に、喚ばれた、勇者?」


 俺の前に歩み寄ってきた少女はたどたどしい言葉使いで聞いてくる。


「え、ああ、そうだけど…」


「それじゃあ、早く、行こ」


「ま、待て!リーファ!」


 国王が必死に叫ぶ。

 リーファとはこの少女の名前だろう。


「うるさい」


 少女は国王に向かって呟くと右手を横にふる。

 それと同時に国王が見えない力に押され、壁に激突する。


「こ、国王さまああぁぁぁ!!」


 周りにいた騎士たちが慌てた様子で国王の元に駆け寄る。

 国王は壁に激突した衝撃で気絶していた。

「お前、なにしてんだよ!? わかってる!? あれ、一応国王! わかる!? 国王!!」


「だって、うるさかったんだもん」


「うるさかったって…」


 この子に常識は通用しないらしい。


「リーファ様! 国王陛下に何をなさるのですか!」


「リーファ様あああ!?」


 こいつが様付けで呼ばれるって!

 一体何者!?


「勇者様、部屋を移動いたしましょう」


「え、でも…」


「大丈夫です。ご安心ください」


 安心って、一体何に安心すれば…


 まじめそうな男に連れられ、細やかな細工のほどこされた部屋に入る。


 俺の部屋とは大違いだな・・・

 文句つけてやりたい・・・


「おまたせいたしました。」

 リアさんじゃないメイドさんがティーカップをテーブルの上に置く。


「あ、ありがとうございます」


 メイドさんはニコッと笑い、お辞儀してくれた。


 おお、このメイドさんは表情豊かだな。

 でも、このメイドさんもリアさんなみに細いな。

 食べているんだろうか?


「もう下がってよいぞ」


「かしこまりました。失礼いたします」


 表情豊かなメイドさんが一例して出てゆく。


「それでは、本題にはいりましょうか」


「お願いします」


「今、あなたのお隣に座っていらっしゃる方は、この国一番の魔導師でございます」


「こいつが!?」


 俺がバッと横に座っているやつを見ると誇らしげにピースを掲げていた。

 それに少し、少~しイラッときたのは秘密だ。


 ここで1つ、俺の横で誇らしげにピースを掲げているやつの見た目の説明をしておこう。

 黒の腰あたりまであるツインテールに薄く紫がかった黒の目。

 膝ほどの長さの黒をベースとしたフリッフリの服を着ている。

 これは、世に言うゴスロリというものだと思う。

 頭に小さい帽子とくまのぬいぐるみをのっけて、斜めがけのカバンを肩からさげている。

 無表情、なんだろうがリアさんに比べたら表情があるし、短い間だがリアさんと会話を交わした俺に言わせてみれば全然表情がある。

 こんなもんだろう。


 わかりにくい説明でわるかったな!!


「で、その国一番の魔導師サマがここに?」


「リーファ様には、あなたと一緒に魔王退治に行ってもらいます」


「はぁぁぁぁぁ!?」


「実は、リーファ様は赤ん坊の頃に捨てられていたのです」


「は?」


 俺がちらっと横を見るとそいつはのんきに寝ていた。


「こいつが・・・?」


「はい。リーファ様は魔力が人一倍強かったのです。それで母親の手に負えなかったのでしょう。城の前に捨てられていたのです。この国の他の魔導師たちが、この子は強くなれる! と言って魔法を覚えさせ、鍛えたのです」


 こいつにそんな過去が・・・。


「それで、今では国一番の魔導師ですが、今の国王が強い力を持ったリーファ様を恐れ、地下に閉じ込めたのです」


「あいつは暴れなかったのか?」


「地下では魔封じの術をかけて閉じ込めていたのです」


「それなのになんで急に外に?」


 今まで閉じ込めていたのに急に外にだすって、なんのために?

 てゆーか、国王!! 相変わらずクズだな!


「言ってはなんですけど…」


 俺の目の前にいる男が口ごもる。


「国王陛下は、リーファ様を国から追いやりたかったのと、勇者様が弱そうだったから、だと思います」


 目の前の男は申し訳なさそうな顔をして、視線を外す。


 そんなことより俺はさりげなく傷付いていた。


「よ、弱そうって…」


 確かにまともに戦える自信ない。剣も振れない。勇者に不向きかもしれないけどさ!

 弱そうはないよ!

 もやしっこってよく言われてたけどさ! 一応学校の体育で柔道とかやったんだよ! 体育は小学校から高校まで成績2だったけど!


 てか、こう考えると俺ほど勇者とかに向いてない人ってそうそういないんじゃない? って思えてきた…。


 俺は膝を抱えて膝に顔を埋めた


「だ、大丈夫ですよ! 勇者様も強くなれますよ! リーファ様いますし!」


 慰めになってないよ!?

 傷口に塩塗ってるよ!?


 もうやだ…。帰りたい…。

 帰ってゲームしたいよー

 ああ、パソコン…。

 俺の相棒。


「ん~」


 俺たちが騒いでいたせいでリーファは目を覚ましたらしい。


「ああ、リーファ様起こしてしまいましたか」


「大丈夫」

 少女は小さくうなずく。


「あの人は?」


 俺の目の前の人に向かって聞く。

 あの人とは誰だろう…?


「ああ、国王陛下は只今医療室でございます」


 なるほど、あの人は国王のことなのか

 てか、あの人で伝わるって凄いな。


「わたし、あの人、嫌い」


「そうおっしゃらずに…」


 目の前の男はなだめるように言う。


「わたしが、あの人、倒す。それから、魔王倒す」


「国王陛下を倒してしまわれるとこの国から国王が居なくなってしまいます」


 目の前の男は困ったように言う。

 そりゃそうだ。いくらクズで馬鹿で最低最悪な国王でも居なくなったら困るだろう。一応国王なんだから。

 俺としては倒してもらった方が自分が倒す手間が省けて万々歳だが。(倒せるかどうかは別にして。)


「わたし、倒してくる」


 リーファはそう言ってすたすたと歩いてゆく。

 歩く速度が早い気がするのは魔法を使っているからだろうか?


「お、お待ちください! リーファ様!」


 俺の目の前にいた男が慌てて立ち上がりリーファを追いかけようとする。


「すいません、勇者様、少々お待ちください」


 男は慌ててリーファを追いかけて行く。

 俺は、好奇心9割、不安1割で、好奇心が圧勝し、お待ちくださいと言われたにも関わらず部屋を出て、さっき部屋を出ていった男を追いかけて行った。

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