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第3話

「なんだ。」


 扉を開けた先にはよだれ掛けのようなものをかけ、眉間に皺をよせた国王がいた。

 そして、長い机の上に置かれたキラキラと輝く美味しそうな食べ物たち。


 俺はついその場に立ちつくしてしまった。


「何のようだ。我の夕食の邪魔をしおって!」


「邪魔もクソもねーよっ!!!!なんだよあの晩飯!!」


「お前の夕食は持って行かせたはずだが?」


「ああ!届いたよ!パンとスープがな!」


「なんだ、不満か?」


「ああ、不満だよ!!」


「不満なら食べなければいいじゃないか。」


「はぁ!?」


 何言ってんだ!? こいつ!


「わかったよ。あんたに言った俺がバカだったよ。」


「わかったのならさっさと部屋に帰れ。お前に付き合っているほど我も暇ではないのでな。」


 俺はその言葉に返事をせず部屋を出た。


 バァン!


 何なんだよあいつ! 何様のつもりだよ! って、あいつ王様か!

 どういう教育をしたらああなるんだよ!?


 イライラしつつ自分の部屋に戻る道をたどる。

 

「あれ? 道、わかんねぇ・・・。」


 どうやら、迷ってしまったようだ。


「あれー、どこから来たっけな・・・。」


 適当にウロウロと歩きまわる。


「やべー。本格的に迷子だ・・・。」


 この歳になってまで迷子とは恥ずかしすぎる・・・。


「どうかなさいましたか?」


 この淡々と言葉をつむぐ感情の無い声は!!

 バッ と後ろを振り向く。

 やっぱり! 無表情なメイドさんだ!


「助けてください!」


「もしかして、迷子ですか?」


「はい!部屋に戻ろうとしているんですかど道がわからなくって・・・。」


「ご案内いたしましょうか?」


「お願いします!」


 と、頼んで道案内をしてもらうのはいいものの、このメイドさんあんまり喋らないからなんというか、気まずいんだよな・・・。


「あ、あの・・・。」


 勇気を出していざ! 沈黙を破る!!


「何でしょうか?」


「えっと、あなたは何でここで働いてるんですか?」


「・・・・・・・・・・。」

 やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!

 え、何? 俺、地雷踏んだ? 踏んじゃった?

 頭の中でパニックを起こしている最中、沈黙を破るようにメイドさんが口を開いた。


「ここ以外に、働く場所がないからです。」


「働く場所がないんですか?」


 職業難か?


「明日、城下町に行くとおっしゃっていらっしゃいましたが、あまり期待はなさらない方がいいですよ。」


「それってどういう・・・。」


「お部屋に着きました。」


 何というタイミング!!


「それでは、失礼いたします。ごゆっくりお休みくださいませ。」


 メイドさんはそれだけ言い残すとさっさと歩いて行ってしまった。


「なんだったんだろう? 気になるなー。ま、でも明日城下町に行くんだからいずれわかる事か。」


 部屋に戻り、パンを食べ、すっかり冷たくなったスープを飲んで、硬いベッドに横になると思いのほか疲れていたのか、あっというまに寝てしまった。



「んー。」


 窓から入ってくる直射日光で目をさます。


「ま、まぶしい・・・。」


 あれ? 俺の部屋、カーテンなかったっけ?


「って、ここどこだよ!」


 ガバッ と勢いよく起き上がりあたりを見渡す。


「あ、そっか、俺異世界トリップしたんだっけ。」


 そうだ そうだ。勇者になって国を救えって言われたんだ。

 てか、世界じゃなくて国なんだな。

 王様が最低なやつなんだっけ。


 そういやぁ今日、城下町じゃん!


「いま何時ぐらいなんだろう?」


 この部屋には時計すらつけられていなかった。


「まあ、いいか。あのメイドさんが迎えに来てくれるだろう。」


 そういえば俺、昨日風呂入ってないじゃん。汚なー。


 コンコン


「はいはい。誰ですかっと。」


 扉を開けるとそこには最近お馴染みとなったメイドさんがいた。

 手には朝ごはんらしきものがのったおぼん。


「朝食をお持ちいたしました。」


「ありがとうございます。」


 メイドさんの手からおぼんを受けとる。

 朝食も相変わらず質素だ。


「一時間ほどしたら迎えにまいりますので、準備をしておいていてください。」


「あ、はい。わかりました。」


「失礼いたしました。」


 メイドさんが一礼したあと部屋から出ていく。


「うーん。どうにかならないのか・・・。これ・・・。」


 本日の朝食のメニュー:パン.ジャム(らしきもの)以上


 今日も相変わらず酷い扱いだな。 まあいいか。そんなのいまさらだ。気にしたらダメだ。気にしたら負けだ。

 自分にそう言い聞かせて黙々と朝ごはんを食べる。

 朝ごはんを食べ終わり一息ついたころに相変わらず無表情のメイドさんがむかえに来てくれた。


「準備は出来ましたか?出来ているのであればそろそろ出発したいのですが」


「あ、はい。大丈夫です。」


「わかりました。では、行きましょう。」


 メイドさんと無言で歩くこと数分・・・。


「ここから歩いて役1時間ほどで城下町につきます。」


「え!?歩くんですか!?」


 てっきり馬車とかに乗るものだと・・・。


「はい。国王陛下が若い者は歩け。お前らに使う馬車はない。とおっしゃられたので。」


 あんのクソじじぃ~~~!!!!!

 なにが若い者は歩けだ。

 なにがお前らに使う馬車はないだ。

 あいつ、一応俺は勇者だぞ!!??


「そうですか・・・。」


 このメイドさんは何も悪くない。だから我慢しろ!今ここで怒りを爆発させるな!!


「では、行きましょう。」


 メイドさんが歩きだす。そのあとを俺がついていく。

 深呼吸を何度か繰り返すうちに怒りはおさまっていた。


「あの・・・。」


「なんでしょうか。」


「えっと、今の城下町って、どんな感じなんですか?」


「一言でいえば活気のない場所、ですね。」


「そうなんですか」


「はい。」


 活気の無い場所、かぁ。

 想像と全然ちがうんだな。

 俺の想像では城下町っていったらいろんな人が行き来してなんというか、にぎやかってイメージなんだよな。まぁ、つまりは活気のある町。ってイメージ。

 あ~あ。馬車乗ってみたかったな~。


 一人で城下町の状態をイメージしながら無言で歩いていると急にメイドさんが声をかけてきた。


「勇者さま。」


「何ですか?」


「城下町はもうすぐです。あと少し歩けば見えてくるでしょう。」


「おお!」


 ついに、城下町だ~~~~~~!!!!!!!!!!!

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