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第13話


「ええっ!?」


「申し訳ありません、規則なので」


「また、戻るのか……」



 いったい何があったのかというと、寝袋などを片付けた俺達はラウラを抱き上げ意気揚々と橋へと向かった。

 しかし、橋を通るにはあの村の村長の通行許可書がいるそうだ。

 で、話しの冒頭へと戻る訳だ。


 という訳で、たった今俺達は宿屋のおじさんがいた村の村長の元に向かっている最中だ。


「なんか、一向に進んでないが……こんな調子でいいのか?」


「多分、大丈夫」


「そうか~?」


 こんな事をしている間に魔王に世界を滅ぼされそうだ……。


「キュー?」


 ラウラが顔をしかめている俺を心配するように首をかしげる。


「お前、本っ当にかわいいなぁーっ!」


 俺はラウラを力いっぱい抱き締める。


「ユーキ、ラウラが、苦しそう」


「お、おぉ、すまん」


「キューっ」


 ラウラが怒ったように鳴くが、ただ可愛いだけだ。


「はぁ~、ラウラは俺の癒しだ」


「ユーキ、気持ち悪い」


「き、気持ち悪いって……!」


 まだ出会って短いがリーファは大分喋るようになったと思う。

 喋るようになったと同時に容赦も無くなったがな。 俺は「もうちょっと優しくしてくれたっていいじゃん…」などぶつぶつと言いながらラウラを抱えて村に向かって歩いた。


「旅人様っ、村を、村をお助けくださいっ!」


 俺達が向かっていた先から走ってきた老人が俺の服を掴んで言う。


「えっと…、どちら様ですか?」


 コミュニケーション能力の低い俺には話が全く理解できない。


「私はこの先の村で村長をやっている者ですっ、村が盗賊に襲われてっ、お願いしますっ助けてください!」


 その時俺の頭に瞬時に浮かんだのは『逃走』の一言だ。

 ゴブリンにすら勝てない俺が盗賊なんかに勝てるはずがない。

 それこそ奇跡が起こらない限りありえない。

 誰だって自分が可愛いものだ。

 そう考えた俺が断ろうと口を開いた瞬間


「もし、盗賊を、倒せたら、橋の許可書くれる?」


 リーファが先に質問を投げ掛けていた。


「勿論です!些細ですがお礼もさせていただきます!」


「じゃあ、やる」


「ほ、本当ですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!」


 村長はリーファの手を握って何度も上下に振っていた。


 いや、いまとなっては通告許可書などどうでもいい。

 いま一番大事なのは俺に死亡フラグが立ってしまったことだ。


「り、リーファさん?」


 俺は動揺を隠しきれずにどもる。


「ユーキ、行こう」

 リーファはそう言って俺の腕を掴みずんずんて歩き出す。


「ちょ、ちょ、リーファ! 俺死ぬって! 確実に俺死んじゃうって! まだ死にたくないよ俺!?」


「大丈夫」


 騒ぐ俺にリーファは一言そう言うだけ。

 なんと冷たい同行者なんだろう。俺の生死がかかっているというのに……。


「大丈夫な要素が見当たらないぞ! 不安要素しか見当たらないぞ!?」


 リーファは心底うっとうしそうに「はぁ」とため息をつく。


「ユーキは、勇者だから、村の人も救わなくちゃ、駄目」


「そんな事言われてもなぁ、俺は闘えないんだよ!」


「なんとかなる」


 リーファはそう言うと歩く速度を上げ、駆け足になる。

 リーファに腕を捕まれている俺もつられて駆け足になる。


 もうすでに村は見えている。

 村が近づくにつれ、俺の命のタイムリミットも近づいてくる。


「ああぁぁぁ! まだ死にたくな「ユーキ、うるさい」


 俺の心からの叫びはリーファに遮られた。


「ううう」


 このまま死んでも化けて出る自身があるよ!

 未練たらたらだよ!

 やりかけのゲームに読みかけのラノベ、予約している来月発売の新作ゲーム!

 死ぬに死にきれねぇよ!!


 俺の抵抗も虚しく盗賊のいるという村は目前まで迫っていた。

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