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第12話

 ペロペロ


「ん~」


 ペロペロ


「もう、何なんだよ!」


 俺は寝袋に入った状態で上半身を勢いよく上げる。

 上半身を起こした俺の視界に入ったのは白のふわふわした物体だった。


「キュー?」


 物体はそう鳴くとゆっくりと顔(らしき物)を上げる。

 それと同時にピョコンと白いふわふわとした耳が立つ。

 黒のつぶらな瞳にふわふわの耳、そう、その物体は、まぎれもなくラウだった。


(ラウについて分かったことが一つ……無駄にかわいい!)


 そのラウはと言うと俺の膝の上でキューキューと言っている。


「一体どうしたんだ、お前」


 そう言って俺はラウを抱き上げる。


「っ!」


 抱き上げたラウのお腹は白いふわふわ毛は血で赤くべっとりとしていた。

 ラウの傷は何かにひっかかれたような傷だった。


「リーファ、リーファっ!」


 俺は寝ているリーファを叫び起こす。


「ユーキ、うるさい、なに……?」


 リーファは目を擦りながら上半身を起こした。


「ラウが怪我してるんだ! お前の魔法なら治せるだろ!?」


 俺は、普段見ることない血と、初めて見る痛々しい大きな傷に対して焦っていた。


「私の、魔法、は、治すことは、できない」


「えぇぇ! じゃあ、どうすれば!?」


「ユーキ、落ち着いて、かばんの、中に、治療、セットが、入ってる」


「それだ!」


 俺は傷ついたラウをリーファに預けてかばんをあさっていた。


(治療セット、治療セット! どこにあるんだよ!)


「あ、あった!」


 俺は治療セットのふたを開ける。

 治療セットの中には紙が一枚入っていた。


『ユーキ様、リーファ様


簡単な治療の仕方の説明を書いておきます。

どうぞお使いください。

まず、傷口を綺麗な水で洗ってください。そのあとに消毒液を染み込ませた包帯をまいて、その上からさらに綺麗な包帯で巻いてください。

巻き終えたら、ヒールと唱えてください。微力ながら消毒液に私の魔力を込めています。少しは治りが早くなると思います。

ご検討をお祈りいたします。


ルーベルト』


(ルーベルトさんっ! やっぱあんた凄いよ!)


 そんな事を思いながら俺は片手に治療セットを持ってリーファのもとにいった。


「リーファ、治療セットあったぞ!」


 リーファはコクンと頷くとラウをそっと寝袋の上に寝かした。


 俺は説明書に書いてあった通り、包帯を消毒液に浸した。


「しみると思うけど、我慢してくれよ」


 俺はラウに包帯を巻き付ける。


「キューっ キューっ」


 ラウが痛そうに短い手足をじたばたと動かす。


 俺はさっさと次の包帯を巻つけ「ヒール」と唱えた。

 すると、傷口のあたりが淡く光った。


「おお……」


 光は数秒後には消えてしまった。

 ラウはもう暴れなくなり、今は寝ている。



「リーファ、どうする?」


「なに、が?」


「ラウが治るまで待つか、置いていくか」


 俺的には待っていたいけれどさっさと次の町に行きたいのも本音だ。

 あと、手当てをしたりしているうちにすっかりこのラウに愛着がわいてしまっていた。


「私は、待ちたい」


 リーファがポツリと呟くように言う。


「そうだな。じゃあ待つか」


 リーファは俺の返事を聞くとスッと立ち上がった。


「どうしたんだ? リーファ」


「食べ物、とって、くる。ユーキは、待ってて」


 リーファはそれだけ言うとかばんを持ってくまを頭に乗っけて森の中に入っていった。


「さて、俺は何をするかな……」


 ラウは熟睡中で起きる気配ゼロ起こすのはかわいそうだし……


 暇潰しに俺はとりあえず剣を握って振ってみた。

 リーファに負け、5・6歳時の子と同じくらいと言われた。さすがにこれじゃダメだと思った。


「よっ、おとと」


 一度振ってはバランスを崩し、一度振ってはバランスを崩しを繰り返すうちに、飽きた……


「うん、俺には剣は向いてない! 他の事を考えよう!」


 俺はさっさと諦めて料理を始めた。

 と言っても昨日の晩ごはんの肉を野菜(昨日一緒に採った)に巻いて食べるというごく簡単なものだが。

 俺が黙々とそれを食べているとリーファが森から帰ってきた。


「おかえり、リーファ何を持ってるんだ?」


 俺がそう聞くとリーファは手に持っている物を敷物の上に並べ始めた。


「これ、全部1人でとってきたのか……?」


 リーファは無言でコクリと頷いた。

 リーファがとってきたのはラウの肉、野菜、何かの木の実だ。


「ユーキ、お腹、空いた」


「ああ、わかった今準備するよ」


 俺はかばんの中からフライパンのとってのないバージョンと、宿屋のおじさんに貰った火器を使って肉を焼いた。

 その焼いた肉を俺が食べたのと同じように野菜を巻いてリーファに渡した。


 リーファはそれを受けとると黙々と食べた。

 俺はリーファが食べている間にフライパンを少量の水で洗っていた。

 リーファがそれを全て食べ終わるのとほぼ同時に洗い終わった。


「リーファ、旨かったか?」


「うん」


 そう言うとリーファはくまと遊びだした。

 リーファがくまと遊びだしてから数十分、寝ていたラウが目を覚ました。


「キュー、キュー」


「お、大分良くなったみたいだな!」


 ラウは元気に歩き回っていた。

 リーファは自分がとってきた野菜や木の実をラウに食べさせていた。


「ラウの為にとってきたのか?」


「うん」



 そして、約30分ほどかけてラウが野菜や木の実を全て食べ終える。


「よし、じゃあ行くか」


「……うん」


 リーファは少し不満そうに頷く。

 俺たちは荷物をかばんに押し込み、ラウをその場に置いて行こうとした。

 しかし、ラウが「キュー、キュー」て言って鳴きながら俺たちの後を着いてくる。


「ユーキ」


 リーファが俺の袖を軽く引っ張る。


「ぐっ」


(そりゃあ、俺だって連れて行きたいさっ、でも食料がっ)


 後ろからはラウが「キュー、キュー」と横からはリーファが「ユーキ」と言ってくる。


「くっ、あーもう! わかったよ! 連れて行けばいいんだろ!」


 俺はラウを抱き上げる


「ユーキ!」


「キュー♪」


「ああ、もう! 可愛いなあ! ラウ!」


「ユーキ、この子の、名前」


「ああ、そうだな何にしようか?」


「ラウラ、がいい」


「ラウラ? 意味とかあるのか?」


「ラを、足してみた、だけ」


「そ、そうか」


(まあ、名前の付け方なんてそんなもんだよな……)


「まあ、よろしくな、ラウラ」


「キュー♪」


 これで、新しい旅の仲間(?)が増えた!

 俺はラウラの癒しで頑張ってみせる!


「それじゃあ、次の町に行くか!」

「うん」


「キューっ!」

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