1章-02
今回は少しだけ長めです。
Side楓
朝の身支度を済ませてキッチンに降り立つと、手際良くハムエッグを3つ焼きベーグルに挟む。
2つを皿にのせてテーブルに、残りの一つは紙ナプキンに包んだ。
マグにコーヒーと温めたミルクを注ぎ、昨日のうちに冷蔵庫に入れておいたサラダを出すと、リビングで新聞を読んでいる父親に声をかけた。
「お父様、朝ごはんの準備整いました」
時津神社の宮司である父の朝は早く、今日も朝のお勤めは既に済み、朝ご飯を食べに自宅に戻って来ている。
教育方針として親子での食事は譲れないそうだ。
ゆっくりと朝ご飯を食べてから、トートバッグにお弁当と先ほどのベーグルサンドを詰め、学生鞄を持って玄関の姿見で身支度を確認。
鏡に映るのは『緑の黒髪』と言うくらい綺麗なストレートな腰まである髪に鳶色の光によっては赤く見える二重の瞳 日本人形?と思えるくらい整った顔立ち。(友人談)
グレーのチェックのプリーツスカートに紺のブレザー、ブラウスに臙脂色のリボンタイ。
黒のニーソックスに黒のローファーという制服姿の少女。
「うん、OK。行ってきます」
「行ってらっしゃい、今日は神楽舞の通し稽古をするから早前に帰っておいで。気を付けてな」
「はい」
時間はまだ7:30
楓の家から学校まではバスで30分の距離だから余裕の登校と言える。
ただし楓の家の近くのバス停からは学校までのバスは30分に1本しかない。
乗り遅れたら遅刻してしまうかもしれないので彼女はいつもこの時間のバスを使っている。
バスに先に乗っていたクラスメイトと挨拶を交わして昨日のテレビ番組やこの間のテストの話しなどで盛り上がる。
私立蒼風学院、将斗と楓が通うこの学校は中学高校大学の一貫教育で、このあたりでも有数の名門校である。
大手財閥が出資して建てられたこの学院では特に体育系と工学系に力を入れており、県内外問わず学生が集まる。
敷地内には県外からの生徒用に寮や生協なども完備しているが、ちょっと問題もあったりする。
職員用の住宅等も合わせると小規模のベッドタウンほどの規模の施設の規模だった為にS県竹葉市の奥、奥竹葉山を丸ごと敷地としている、つまり僻地にあるということ。
ちなみに学校付近にある奥竹葉スカイラインはその攻略の難しさからライダーのメッカである。
その峠道を学生を満載した市営バスがゆったりと走っていく。
ちょうど紅葉の時期に差し掛かる頃なので、山々が色づき始めてそんな風景を見ながらの通学が楓は好きだ。
学院行きのバスは市内各所から出ており、学校前に造られたロータリーにはすでに数台のバスから降りた学生たちで一杯になっていた。
西洋風の巨大な門をくぐると左手に中等部、真中奥に高等部、右手に大学、門を入ってすぐには多目的講堂と陸上競技場等の運動施設が立ち並ぶ一大学院都市が広がる。
門には警備会社の人が常駐していて、学生証や職員証のICチップが無いと警報がすぐ作動する仕組みになっている。さすが私立というかセキュリティには結構なお金をかけている。
高等部の建物は3階建てで全部で4棟、一番左が職員室や保健室がありその横に1年棟2年棟3年棟となっている。
楓は3年生だから一番右端の校舎に入り、3階一番奥の3-Aの教室に向かった。
「楓おはよ~」
「おはよう」
笑顔でクラスメイトに挨拶をしながら机に鞄を置くとトートバッグを抱えた。
「今日も将斗君にお弁当?いいなぁ妬けちゃうな~♪」
「ちょ、そんなんじゃないよ?」
「ハイハイ、早く行っておいで~♫」
「だからそんなんじゃないってばぁ」
女子からは揄われ、男子からは「やっぱり楓さんは…」とか「あんな後輩には負けない!」とかぶつぶつと念仏の様な声を投げつけられる。
それらをさらりと受け流しながら校舎中ほどにある渡り廊下を小走りで渡ればすぐ目の前は将斗の2-Cの教室。
そっと教室の扉を開けると、ひょこっと顔を出して中を覗く。数名の生徒が談笑していて、その中の眼鏡を掛けた男の子が楓に気が付いた。確か将斗と同じサークルの榊君だったかな?
そんな私に気が付いた榊君がペコリと頭を下げながら
「時津先輩おはようございます。将斗ならまだ来てませんよ~」
「え?珍しいわね、将斗君がまだ来てないなんて」
「昨日遅くまでガレージでバイク弄ってましたから、さすがに寝不足じゃないっすかね?
俺なんてサークル棟で寝たから間に合ってますけどね、あはは」
「榊君は寮生なんだからちゃんと寮のベッドで寝ないとだめよ。じゃぁこれ将斗君に渡してくれる?よろしくね」
榊君にトートバックを渡して廊下に出ると、にっこり微笑んで楓は教室へと戻って行った。
将斗と楓の通う学校についてのお話でした。
其れともう一人の主人公榊君登場です。
誤字脱字、ご意見等頂けると幸いです。
なお、次回の更新が滞ります、1週間以内に更新できればとは思っています。
ご容赦ください。
稚作ではありますがここまで読んでくださったことを感謝します。