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1章 モノローグ1
Side 将斗
真夜中だというのにここは硝煙と血の匂いに支配されていた。
砦は所々壊れ、兵士であった物が多数転がり、追撃をする騎士達が駆け抜けてゆく。
その中央近く、物見の塔の跡と思われる残骸の上にはデスサイズを肩に掛け、両手で膝を抱えて月を見上げる人と、主人を護るようにして伏せている巨大な狼が一匹。
長めのその髪は無造作に後ろで結われ、頬に付いている血の色さえも彼のその中性的な顔立ちを際立たせていた。
「…俺は…何時から人を殺すことに躊躇いを感じなくなったのだろう…」
主人の独り言にピクリと狼は反応したが、すぐに周囲への警戒へと意識を向ける。
彼はそっと狼の頭をなでながらそこに居ない少女を思う。
「楓、お前に会いたい…。会いたいよ…」
呟きは風に乗って消えていった。
空には満月が青白く輝いていた。
主人公 由良 将斗登場です。基本ヘタレ君ですので温かく見守っていただけると嬉しいです。
ルビの振り方など一部修正いたしました。
誤字脱字など、ございましたらご連絡いただければ幸いです。