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異世界に転移させられたのですけど、なんだかんだでエッチな事してごめんなさい【R15版】  作者: 立花 黒
第三章

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第83話、モゴモギュ

 夕暮れ時——


 オークション会場からの帰り道、目星をつけていたリュックを取り扱っているお店に立ち寄った俺たちは、そこでクロさんと同じように大容量が入る大型リュックを購入、ホクホク顔で帰宅への道を再開させる。

 そして宿までもう少しと言ったところで——


 アズが不機嫌そうに辺りを見回した。


「あははっ、つけられてるわね」


 その言葉に心臓がドキリと高鳴る。

 そしてたしかに、ソウルリストを確認される独特の視線も感じる。


 これってもしかして、カルロスさんが言っていた金目当ての強盗! ?


 そこでクロさんが俯き、申し訳なさそうにしている事に気がつく。

 彼女の事だから『まさか本当に襲われるとは思ってもみなかったです、ごめんなさい』と言った心境で自身を責めているのかもしれない。


「気に病む事ないですよ! 」


「あっ、はい! ごめんなさい! 」


 それよりどうしよう?

 出来たら無用なトラブルは避けたい。

 取り敢えず相手が接触してくる前に、逃げられたら良いのだけど。


 すると一人、また一人と——


 明らかに俺たちに対して敵意の視線を向ける男たちが、獲物を手に持ち人混みの中や路地裏から現れ出てくる。

 そして追い詰められる形で壁際に追いやられた俺たちを、男たちは半円の形で取り囲むと一定の距離を保ち足を止めた。


 改めて周りを見回す。

 今いるここは大通りではないが、人通りも疎らでこそあるがそこそこ有る。

 そんな普通の通りだと言うのに、平然と俺たち三人を取り囲む男たちが全部で十数名。

 この異様な雰囲気を目の当たりにした通行人たちは、関わり合いにならないよう足早で通り過ぎたり遠目で成り行きを見ていたりする。


 そこでキヒヒヒッと甲高い笑い声が聞こえた。


 声がした方を見れば、不気味な印象の小男が取り囲む男たちの陰から姿を見せたところであった。

 フードを目深に被ったそいつは飛び出した前歯が印象的で、痩せ細った顔に灰色がかった肌のためとてもじゃないが健康そうには見えない。


 そしてソウルリストは『情報の錬金術師』であった。


「お嬢さん方、あのスライムの実をどこで手に入れたのか、ちょいと教えてくれませんかねぇ? 」


「なんであんたに教えないといけないわけ? バカなの? 」


 小男の問いにアズが即答、そしてせせら笑うと、ない胸を仰け反らせた。


 と言うかアズが話すと、高確率で事態がややこしい方向に行ってしまうのでは!?


「仮に拘束を外してくれたとしても、あんたには絶対に教えてあげなイングファファッ」


 言葉の刃を放出し続けているアズの口を、俺は咄嗟に背後から伸ばした両手で塞ぐ。


「アズ、ちょっと黙ってて! 」


 引き寄せ耳元でお願いしたのだけど、アズはまだ言い足りないようで、今度は後ろの俺に対して顔だけこちらに向けてモギョモギョ言い始める。


 へんな声になっておかしいけど、今はかまってあげられない。

 キッと小男の方へ視線を向ける。

 すると小男が舌の上で言葉を転がすようにして『拘束、超絶倫……』と呟いていた。


 あっ、いや?

 かなり変な方向に解釈されてるっぽい! ?

 きっ、軌道修正せねば!


「もしかしてあなたは、俺たちと交渉しよ——ちょっ、アズ!? 」


 細い体のアズだが、それでも全力で手足をジタバタしだしたため、話どころではなくなってしまう。


「モゴモゴ! モゴモギョ! 」


「アズ、ジタバタもしないで! 」


 それでも大人しくならないため、俺も全力で後ろから抱きしめ続ける。

 こうなれば根比べだ!


 そして数十秒後、アズが人形のようにだらりと動かなくなった。


 疲れたけど、はぁはぁ勝った!


 ……じゃなくて——


 視線をもう一度小男の方へ向けると、かなり冷ややかな目で見られていた。


 心の中で一度、ウオッホンと咳払いする。

 続きからだ!


「もしかして、俺たちと交渉しようとしているのですか? 」


 すると小男は、横に倒した人差し指で鼻を擦る。


「へへっ、そいつは違いますねぇ。一方的にそちらさんが話すだけですので」


 ようは今から荒っぽい事をすると言うのか。


「あははっ、ならギッタギタにしてあげるわ。私のソウルリストを見た事を後悔しながら逝きなさい! 」


 アズが俺の手首を掴み下にズラしていた。

 疲れたフリして俺の手が緩む一瞬の隙を窺っていたのか!?


 でもアズが戦うとなると、この人たちの命の危険が危ぶまれ、またアズ本人も無鉄砲なためもしかしたら大怪我をするかもしれない!

 俺ではこの人たちを制圧なんて絶対にできないし——


 どうする?

 俺が出来ることは回復のみ。

 それならそれで、戦闘が始まれば死者が出ないよう、双方に回復魔法を連発するしかないのか?


「と言うかお嬢ちゃん、どこかで会ったことがあるような、ねぇような? 」


「知るわけないでしょ? あんたなんか! 」


 即座に斬り捨てるアズ。


「おめぇらはどうです? 」


 小男に話を振られた男の一人はサッパリといった感じで小首を傾げ、次に振られた大柄な男はぶんぶん首を横に振る。


「それなら小耳に挟む程度の情報で知ってたか、なにかの勘違いですかねぇ? 」


 あれ?

 もしかしてこの男たち、黒の魔女と恐れられるアズの事を知らないのか! ?

 仮にも男たちの一人は、ソウルリストに『情報』の文字が浮かび上がるほどの人なのに。


 と言うことは、……少なくともここら周辺の土地の人間ではないって事?


「まぁどうでもいいですか。予定通り自ら話したくなるよう、ちーとばかし痛めつけてやりましょうかね」


「お嬢様、ここは私がやります」


 一歩前に出たのはクロさんであった。

 リュックをその場に置き、武器も持たずにファイティングポーズをとっている。


「ちょっとクロ、もしかして私の獲物を横取りする気? 」


「いえ、これらの雑魚相手に、お嬢様のお手を煩わせる事もないかと思いまして」


 するとアズは腕組みをし一呼吸置く。


「それもそうだけど、でも——」


「お嬢様周辺のゴミ掃除は、お嬢様専属メイドである、このクロの役目であります! ですから、綺麗に片付くまでゆっくり休まれていて下さい」


「クロ、あんた中々言うようになったわね。わかった、任せたわよ! 」


「はい! 」


 たしかにクロさんは強い。

 酒場では飛んでくる複数のフォークを華麗に躱していたし、ダンジョンでは人形を瞬殺していた。


 しかし今回は複数の敵。

 真琴やアズみたいに攻撃力がないと、あっという間に囲まれてしまう。


 しかも素手。

 武器があれば一瞬で行動不能に出来るかもしれないけど、素手でだと——

 一発のパンチやキックで相手を一発KOするのは至難の技である。


 また人は興奮状態になると、痛みを感じづらくなったりいつも以上の力を発揮する生き物だ。

 そんな相手が十数人。

 下手な攻撃では転がす事が出来たとしても、それだといくらでも起き上がってきてしまう。

 しかも激昂した状態で。


 俺は静かに回復魔法を唱え始め、白濁球を作り上げていく。


 そこでゆらゆら揺れるクロさんが、もう一歩前に出た。


「ダンジョンではなるべく戦闘をしないのが私の流儀です。そして人が敵であるならば、相手が諦めるまで逃げるのですが——」


 クロさんが素手のまま構えをとる。


「これは私が蒔いた種、刈り取らさせて頂きます!」


 すると男たちから上がる声。


「おいおい、ヤルつもりらしいぜ」


「俺らのことボロクソ言ってたし、手加減はしてやらんぞ」


「しかしこのアマのソウルリスト、『牙姫の従者』とか、どんだけ使用人なんだよ」


 そう、クロさんのソウルリストが『迷宮核を弄ぶ者』から『牙姫の従者』に変更されていた。


「行きます! 」


 誰よりも早く、クロさんが動く。

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― 新着の感想 ―
良かったね、クロさん…。不名誉な称号が取り払われて…。そら忠誠心も爆上がりだわ。 マコトの妹さんはヴィクトリアさんを弱体化させる為にクロさんの運命に干渉したそうだが、きっとこのことが巡り廻ってフウカ…
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