表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転移させられたのですけど、なんだかんだでエッチな事してごめんなさい【R15版】  作者: 立花 黒
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/121

第70話、切断

 あのいくつもの雷玉も、恐らくスペクターが呼び出したのだろう。

 スペクターの周りに出現した電気の塊、サンダーボールに対し、アズは一瞥だけすると先程と変わらず青白い人型の亡霊、ムーンレイカーたちを笑いながら切り刻む。


 しかしスペクターの方はアズを完全に敵視しているようで、高い位置まで急浮上したサンダーボールの一つが、アズへと向け高速移動を開始した。

 アズはその上方から急速接近するサンダーボールを、上体だけを反らし躱すとムーンレイカーの一人を真っ二つにする。


「い"っ」


 しかしその直後、アズが小さく声を漏らした。

 あれは感電!?

 通り過ぎたサンダーボールがアズ近くの地面に落ちてバウンドした瞬間、電流が足元を這うようにして全方位に散るように見えた。

 つまりアズはその電流を身に受けてしまったようだ。


 急いで拳大の白濁球を数個アズへ向け飛ばす。

 その間電力を失いビリヤードボール程の球体に戻っていたサンダーボールは、地面をバウンドしたあとも空中旋回を行ない、電流がいくつも走る度に大きさを元のモノへと戻していっている。

 そして俺の白濁球を棒立ちでその身に受けたアズはと言うと、俯いたままで口をパカっと弓なりに開くといつもの笑い声を上げた後に続ける。


「八つ裂きにしてあげる」


 アズは忙しなく不気味な長い腕を使い動きまわるスペクターの方へ、ゆるりとした足取りで進み出す。

 そして歩速を早めていく中、迫るムーンレイカーを乱暴に斬りつけ進んでいく。すると新手のサンダーボールの一つがまた斜め上方から降ってきた。

 アズは身を捻り躱す。

 しかし通り過ぎた電流の塊が弧を描きながら地面に向け急速落下、最短ルートへと進む道に補正された!

 その直後、ジジッという音と共に地面を走る電流。


 危ない!


 しかしアズはと言うとこの青白い煙が渦巻く空間で、両脚を綺麗に折りたたみ宙を舞っていた。

 サンダーボールが落ちた瞬間は完全にアズの死角であったが、落ちるタイミングを見計らってジャンプしていたのだ。

 しかしジャンプをしているアズの元に、別のサンダーボールが迫る!

 そこでアズの真横を黒い物が横切った。

 咄嗟に作り発射させたアズの闇ツララだ。

 そしてその闇ツララとサンダーボールが空中で激突。

 強い放電発光と多くの火花を発生させながらサンダーボールとそれを射抜いた闇ツララが双方砕け散る中、アズは地上に降り立つとそのまま駆ける。

 そんなアズに群がろうとするムーンレイカーであったが、それらをその場に置き去りにして加速、疾走していく。


 更にそこへ残りのサンダーボールがアズに殺到するも、そこからはその全てを闇ツララで撃ち落としていく。

 そして闇ツララの激突で起きた多くの放電発光の間を縫って進むアズが、高い位置で海老反り状態になっているスペクターに向け一気に飛び上がった。

 させまいと足代わりにしていた腕を、下から突き上げるようにして伸ばすスペクター。


 アズはそれを一閃。

 切り落とされるスペクターの腕。


 そしてそのままスペクター本体に斬りかかろうとしたところで、スペクターの陰に潜んでいた最後の一つであるサンダーボール、ソウルリストが見えた電流の塊が、アズの左側面から急速接近。


 それを闇ツララで撃ち落とすと思われたアズだったが、そこで彼女は蜘蛛の巣状の盾を構えた。


 なぜ?

 もしかして魔力切れ!?


 そしてアズの身体をドンっと震わすほどの勢いで迫ったサンダーボールは盾により防がれたのだけど、盾に粘性があるのか、はたまたサンダーボールの電流によるものなのか、蜘蛛の巣状の盾に張り付いてしまっていた。

 そしてその張り付いた状態で光を強めるサンダーボール!

 しかし蜘蛛の巣は電流を通していないようで、放電を繰り返すたびに盾を中心に薄い膜みたいな半円がアズの周りに発生して守っている。

 しかしアズはその衝撃をまともに受けているようで、完全に空中で体勢を崩してしまっていた。

 そうしてスペクター本体への攻撃を中断させられたアズが一度降り立つと、盾を見やる。


「相性最悪ね」


 彼女はそう愚痴ると、放電を断続的に繰り返しているサンダーボールを結果引っ付けてしまっている腕を、二の腕付近で迷わず一閃!?


 ななっ、なんと斬り落としてしまった!


 そしてそれからは一瞬であった。

 再度飛び上がるアズ。

 続いて縦方向に煌めく剣筋。


 背中から生える片手一本でバランスを取るのが一杯一杯になっていたスペクターは、その一閃で本体である胴体部分から真っ二つに切断。

 着地するアズの後ろで、二つに分かれたスペクターが一際大きな破裂音を立て黒い粒子となると、空間に渦巻く青白い煙と共にムーンレイカー、そしてアズの斬り落とした腕に引っ付いてしまっていたサンダーボールも同時に霧散していく。

 それに伴い渦巻く煙も薄くなっていき、景色が戦う前の部屋へと戻っていった。


 俺は、真琴をその場に寝かせると急いでアズの元へと駆ける!


「アズ、腕の治療しないと! 」


 走りながら叫ぶと、アズはゴルフのグリーンカップに入ったゴルフボールを拾うかのように無造作に自身の腕を拾い上げる。


「ああこれ? 魔力が回復したら自分で引っ付けるからいいわよ」


「何言ってんの、いいから貸して! 」


 アズから腕をもぎ取るとアズの肩口に引っ付けようとする。

 しかし彼女はさらに俺から腕を取ろうと掴みかかってきたため、そこで綱引きが始まった。


「ちょっと返しなさいよね! それは、私のよ! 」


「そっ、それは出来ない! 」


「ぇええ!? なっ、なんでよ? 」


「俺がそうしたいからだ! 」


「なんなのよあんた? 前から薄々思ってたんだけど、バカなの? 」


「バカで結構、とにかく回復をさせるんだ! 」


 そこで綱引きに勝利した俺は、ジタバタするアズの背後に回り込み羽交い締めにしながら腕を引っ付けようと試みる。

 するとアズが急に大人しくなった。


「バカなら、私のしもべになる? 」


「ドサクサに言ってもならない! 」


「もう、なんなのよ! 」


「俺もわからない! ただ一つ言えることは、俺がそうしたいだけなんだ! 」


 するとアズが身体を弛緩させる。


「……本当、あんたといると調子狂うのよね」


 そこで大人しくなったアズに回復を開始したのだけど、いつまたバタバタしだすか分からないので、背後から回した右腕と自身の身体で挟み込んでいる。

 しかしそれが不服なのか、ピンクに染まる頬が少しだけ膨らんでいるのが見えた。


「……あんたにこれ以上貸しを作りたくないのよ」


 その消え入りそうな声を俺は聞き逃さない。


「そんな事、気にする事じゃない! 」


 するとアズが、背中にいる俺の方へ顔を傾ける。


「……これからも、たくさん迷惑かけるかもしれないけど、あんたはいいの? 」


「あぁ、俺は迷惑だと思わないし、これからもずっとそうしたいと思っている」


「……ずっとそうしたい」


 アズが俺の言葉をおうむ返しで呟くと、不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。

 うーん、だから遠慮とかそういうの、本当に気にしなくていいのになー。


「よし、これで大丈夫なはず」


 するとアズはそそくさと俺から離れていった。

 とあれ?

 そういえばどうなんだろう?


 俺はスペクターの姿がどう見ても狂気の魔道士ぽかったからダンジョンボスだと思い込んでたわけなんだけど、実際はどうだったのだろう?

 今更だけど、どうしたらさっきのアレがダンジョンボスだとわかるのだろうか?


 とそこで、アズがクロさんやヴィクトリアさんたちのところへフラフラ歩いているのが目に入る。


「ダークネスさん、背後を取られたのに攻撃しませんでしたね」


「ちょっ、ヴィクトリア! それは、たまたま忘れてただけに決まってるでしょ! 」


 何かを話してるみたいだけど、今はそれどころじゃない。

 いや、クロさんに聞けばボス関連にまつわる何かしらの情報を知っているかも。

 そうだ、それにゲームの判定をしている以上、ヴィクトリアさんに聞いても教えてくれるだろうし。


 とそこで、青白い煙が完全に消えた床に、一筋の光の道が出来ていることに気付く。

 これって?


「スペクターがダンジョンボスでしたね! 」


 クロさんだ。スペクターが消滅した付近の床から伸びる光の筋を見ながらに言った。


「あの、これがスペクターがボスだった証拠になるのですか? 」


「はい、全てのダンジョンではないですけど、敵を倒して光の筋が現れたら、間違いなくその敵がダンジョンボスであるという事になります」


「へぇー。ちなみにこの光の筋は、一体なんなのですか? 」


「それは道しるべです。迷宮核へと続く道をいっときの間だけ、照らしてくれます」


「いっときってどれくらいなんですか? 」


「場所によって様々みたいなんですけど、だいたい三十分から一時間くらいで消えちゃいます」


 それはゆっくりしていられない。

 でも便利な設定である。

 この光に従って進めばこのダンジョンを攻略、そして恵の恩恵が周辺の大地にもたらされるわけだ。


 改めて光の筋を確認する。

 でもこの光、俺たちが来た階段の方へ伸びているよね?

 もしかしてある程度戻ってから新たな道を進むとかじゃないだろうね?


 そこで耳がその音を捉える。


 ひたひたと、濡れた素足で階段を下りて来ているような音がしているのを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ