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大好きな幼馴染のボクっ娘は、神気で魔物を薙ぎ払う!【健全版】  作者: 立花 黒
第一章

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第6話、異世界へGO

『ネェネェ』


 人の言葉を話すバングルが話しかけて来た。


「ん、なに? 」


『血ノ契ヤクノ最終段階、認証ヲスルカラ、モウ一回アレヲ出シテ』


 えーと、多分危険はないよね?

 白濁球は俺が作り出さない限り吸えないわけだから、過分に摂取される事もないだろうし。


「わかった、ちょっと待ってね」


 再度白濁球を作り上げてみると、今度は手首ほどの太さで半透明で薄っすらピンク色のツタが、木製のバングルから伸び白濁球に突き刺さる。

 そしてそのピンクのツタは中央から外側に向かって二チャッっと口を開くと、掃除機のようにして一瞬で白濁液を吸い込んでしまった。


「えっと、他のとは違うみたいだけど、そのピンクな奴はなんなの? 」


『特別ナ、秘部トモ言エル器官。アマリ見ナイデ』


 そう言うとピンクなツタは、一気に縮んでいき最後にはバングルの中へと消えてしまった。


 そっ、そうなんだ。

 なんか噛みつかれたらすんごく痛そうだし、あんま見せなくて良いからね。


「ユウト、さっきから回復魔法使ってるみたいだけど、どうしたの? 」


 そこで背後から真琴の声がした。

 真琴が来てくれた!


「なんか流れで、喋るアイテムを装備する事になったんだけど——」


「……喋るアイテムか」


 真琴が腕組みをした状態で顎に手を当てると、そっと呟いた。

 そして静かに顔を上げる。


「ラノベだと、最後の戦いまで頑張ってくれるほどのレアアイテムなんだけど——、ちなみにそのアイテムは、どんな事が出来るの? 」


「えーと、話す事と、あとはなんなのかな? 」


「食ベル、ダケ」


「うわっ、ユウト! 本当にバングルが喋ったよ! 」


「うん、凄い違和感だよね」


「どこから声が出てるのかな? 」


 そこで真琴が俺の左手に巻きついているバングルに顔を接近させる。


『シュリュッ』


 するとバングルから飛び出た極細のツタ二本が、あろう事か真琴の鼻の中に突っ込まれた。


「いぐっ! 」


 そのため完全に不意をつかれた真琴が声をあげた。


「なっ、お前、いきなりどうしたんだよ!? 」


 慌てて腕を引っ張り真琴の鼻からツタを引き抜く。


 すると真琴の分泌液で濡れているツタの先端部分が、大きく真一文字に裂けた。

 そして話し始める。


「穴ガアッタラ入レテシマウ。ソレハ仕方ナイ。ソウ言ウフウ二作ラレタノダカラ」


「ユウト、そのバングル危険だよ! 色んな意味で超危険だよ! 」


 涙目の真琴が後退りながら、俺の腕を指差しての猛抗議である。


 ん?

 色んな意味で?


 目の前にはうねうね動く細いツタ。

 そこである言葉が脳裏をよぎる。


 ツタプレイ。


 いや、それは流石にダメだ。

 それやっちゃったら、絶対にダメだ!


「ユウト? 」


「わあわぁ、なんでもないよ! 変な事はなにも考えてないからね! 」


 すると真琴のジト目。

 しまった、今の発言は逆に取られてもおかしくない、大失言である!

 話題をそらさないと!


『御主人様、眠クナッタ。オヤスミ』


「ん? あぁ、お休み。そうそう真琴、これからどうしよう? すぐにここから出れるの? 」


「それなら大丈夫だよ、女神に座標を聞いてきたから」


「そしたら宜しく! 」


「よし、そしたら掴まってね」



 ◆



 そこはなだらかな起伏がある原野だった。


 高い木はここからは見えない。

 また足下に生えている草はくるぶし程の高さしかなく、それらが見渡す限り広がっているため、まるで緑の絨毯が敷き詰められているような光景である。


 どうやら、転移は無事成功したみたいだ。


 そこで柔らかな風が吹き、俺の髪を揺らした。

 その風は遠ざかるようにして足下の草をサラサラ音を立て揺らし続けて行くため、どこをどのようにして吹いているのかがわかった。


「あれ、髪の毛の色が元の色に戻ってるね」


 隣で同じく風に吹かれていた真琴が、唯一見えるハゲ山から視線を外しこちらへ振り返って言った。

 言われて親指と人差し指で前髪を摘み目の前へ引っ張ってくると、染めてたはずの髪の毛が真っ白に戻っていた。


「ほんとだ、いつの間に」


「そう言えば—— 」


 真琴が何かを思い出したようで、ポンッと手を叩いた後に話を続ける。


「さっきは暗くて見えづらかったんだけど、その時から白かったような気がするかも」


 という事は、肉体が復活した時に、上手い事全てが復元したわけではないって事なのかな?

 兎に角この世界でも目立つようなら、また黒く染めたいな。


「でもボクは、今の外見のキミも愛らしくて好きだよ」


 その真琴のハニカミながらの気遣いの言葉で、俺がまだ小さかった頃の記憶が蘇ってくる。



 俺には小さな頃、一つのあだ名があった。

 そのあだ名とは『ダークエルフ』。

 勿論俺の耳は上の方が尖ってたりはしない普通のものなんだけど、褐色の肌に真っ白な髪が、ちょうどテレビで放映されていたファンタジーアニメに出てくるライバルキャラである、ダークエルフと一緒であったのだ。


 子供は容赦を知らない。

 外見の特徴に似ている部分があるだけで、俺の事をアニメと同じ悪者と決め付けた。

 またアニメを再現するため木の枝を剣と見立てて叩いてきたり、魔法だと言って砂を投げつけられもした。


 それを機に母親から髪と眉毛を黒く染めてもらい、まつげに黒のマスカラを薄く塗るようになるのだけど、初めて黒く染めた俺はそれだけではイジメの体験を払拭できず、外に出るのを拒んでいた。


 そんな内に篭ろうとしていた俺を、幼い頃の真琴が引っ張り出してくれた。

 真琴は俺をみんなの前に連れて行くと、アニメの主人公の仲間である別キャラに似てると言ったのを皮切りに、他の子達にも主人公側のキャラを割り振りし、全員の役が決まるとみんなを引き連れ裏山へ探索に出かけたのだ。


 真琴は行動力があり人気者だ。

 同じキャラが複数人いたりしたけど、誰も反対する事なくワイワイみんなで遊んだ。


 そうして俺は、その日からダークエルフと言われなくなった。


 そしてあの時、家へ迎えに来てくれたあの日、真琴はそっぽを向いて白髪のキミも好きなんだけどね、って言ってくれていた。


「ありがと」


 昔の思い出となってしまった事柄に対して、今更だけど伝えていなかった感謝の気持ちを込め言葉で伝えると、真琴は黙ったままニッコリと微笑んだ。


 そこで再度風が吹いた。

 澄んだ空気と共に、草の青臭い香りも微かに届く。

 なんだか久々に外で深呼吸をした気がする。


「日本と違って、空気が美味しいなー」


 俺が住むところは他の地域の人たちから修羅の国と呼ばれる都市なんだけど、そこは中国大陸から飛来するPM2.5や黄砂が常時舞い、さらにこの街の産業を支えている大きな会社の工場が稼働しているため、ほとんどの季節は外出時にマスクが欠かせないぐらい大気が淀んでいる。


 台風や風の強い日の後には5、6キロぐらい離れたとこに見える山が緑色である事が分かるのだが、大半を占める普通の日は近くの山ですら白く靄がかかり、風が吹かない日が続いてしまうと太陽光も遮られ、霧の中に太陽が微かに見えるのが裸眼で確認できる程空気が汚れてしまう。


 それに比べてこの世界では遠くに見える山の色もハッキリと見える。

 澄んだ空気に綺麗な青空。

 深呼吸をするだけでこの世界に来たかいがあるように思えてしまう。

 そこで一緒になって遠くを眺めていた真琴が、大きな伸びの後にこちらを見る。


「さてと、そろそろ街を目指して歩くとしますか」


 俺たちはここから一番近くにあると言う街に行くため、この世界の女神に教えて貰っていた目印である、一つだけ見える山を目指して歩みを始めた。

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