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大好きな幼馴染のボクっ娘は、神気で魔物を薙ぎ払う!【健全版】  作者: 立花 黒
第一章

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第5話、バングル

 それにここはどこだ?

 狭い洞窟内のようで、四方を壁に阻まれている。そう、出入り口がないのである。


 とそこで眩暈がした。そのためよろけてしまうのだが、咄嗟に片膝をついてやり過ごそうとする。そして映像が見えた。まるで早送りで見えるその映像は、俺が洞窟内で戦っているようだ。また馬鹿でかい巨木が長くて太いツタで攻撃して来ているようだけど——

 そこで映像が途切れ、眩暈も完全におさまった。

 なんだったんだ今のは?


『ユウト、ユウト! 』


 真琴の声だ!

 空間が振動しているような形で声が聞こえる。


「真琴、近くにいるの? 俺はここだよ! 」


『良かった、無事みたいだね。ユウト、ボクはまださっきの空間にいるよ! でも任せて、直ぐにそっちに飛ぶ準備をするから』


 さっきの空間? つまり俺が飛ばされたって事?


「飛ぶって、結構時間はかかりそう? 」


『さっきと同じくらいだから、十分もあればそっちに行けると思う』


 そか、それなら少しの辛抱だ。


「それより俺がいる場所ってどこなの? なんでここにいるわけ? 」


『そこがどこなのか、女神も詳しくは分からないみたい。ただ狭間の世界である事は間違いないね』


「……狭間の世界」


『そう、時間軸が安定していなくて、過去の世界や未来の世界かもしれないし、ここであってここじゃないかもしれない』


「あー、とにかく普通の世界じゃないって事だね」


『ある意味諦めが早くて助かるよ』


「真琴が理解していて焦ってないのなら、俺が心配する必要はなさそうだからね」


『そういう事か、流石だね! 』


「貶したり褒めたり、どっちなんだよ」


『テヘペロ。と言うかこんな話の後で言いづらいのだけど、なんでユウトだけが飛ばされているのかは不明なんだよね』


「えっ、そうなの? 」


 てっきり女神の嫌がらせかと思ってしまっていた。


『兎に角今からそっちに向かうから、また後でね』


「分かった、無理せず気を付けて来てね」


『はーい』


 そこで真琴との通信が途絶えた。

 しかし不思議な空間だ。

 ここって明かりがないのに、周囲がハッキリと見えている。


 真琴が来てくれるまで何か暇潰しはないかと見ていると、凸凹の岩場に何か違和感を感じる。


 あれ? 何もないと思っていたんだけど、棒が落ちてる。

 なんの気もなしに、その棒を拾い上げてみると——


 ここが変な空間だからか、落ちている棒もグネグネして何か変だ。

 そしてグネグネになっていると思っていた棒が、先端を鋭利なものに変化させる!


 えっ、な、なんなんだ!?


 そしてその棒は、突然俺の右手を踏み台のようにして飛び上がってきた!


 これっ、俺の首を狙っている!?


 俺は咄嗟に、そいつと首の間に左手を出した。

 そして俺の手に突き刺さったと思われた棒は——


 思わず閉じてしまっていた目をそろりと開いてみる。

 するとなぜか、先ほどの鋭利な棒は俺の左手首に巻きついていた。


 何だったんだ今のは!?

 それになんで巻きついているんだ?


 現在俺の手首に巻きつき、木製のバングルみたいになって動かないそれを、指で突っついてみるが何も起こらない。


『オカシイ……』


 えっ?

 声がした?


 真琴の時のように空間が振動している感じじゃないので真琴じゃない。

 周りを見回すが誰もいない。

 でもたしかに声がした、よね?


『オカシイ……』


 やっぱりした!


 ここは異世界である!

 もしかして、……話しているのはこのバングルだとでも言うのだろうか!?


「もしもし、もしもし? 」


 なにも起こらなかったら恥ずかしいので、念のため小声で呼びかけてみた。

 ちなみにまた飛びかかってきたら怖いので、腕は顔から離している。

 すると——


『……ナニ? 』


 やっぱりこのバングルだ!

 このバングルが喋っているよ!

 真琴と違いテレパシーみたいな感じ?

 頭の中に声が響いてるみたいな感じである。


 それとなんかさっきから、おかしい(・・・・)って言っているよね?

 そこで直球勝負、聞いてみる!


「なにがおかしいわけ? 」


『強制契ヤクシテ、血ヲヌキ取ロウトシタラ、弾カレタ』


 えっ、なにこのバングル?

 いまめっさ怖い事をさらりと言ってない!?


『ドウシヨウ』


「えっ? というか、困っているの? 」


『血ノ契ヤク発動シタカラ、エネルギーカナリ使ッタ。

 コノママダト、カタチ維持出来ナクナッテ砂ニナル』


 でもそれ、自業自得でしょ。


『血ヲ下サイ』


「丁寧語になった! って、でもやれないものはやれないよ。あと他の人のもあげれないからね」


『他ノ人ノハ吸エナイ。契約者ノ命ガ尽キルマデ』


 また怖い発言きた!

 と言うか、既に俺が契約者!?


「なるほど。ただ俺の命を狙おうったって、簡単にはあげないからね! 」


『コノママデハ、ソレモ出来ナイ。ダカラ血ヲ下サイ』


 なんだろう、なんかこの不思議生命体、さっきからとんでもない事言っているんだけど、おかしな事に可哀想に思えてきてたりするんですけど。


「血の代わりになるものはなにかないの? 例えば綺麗な水とか? 」


『綺麗ナ水? ヨク分カラナイケド、契約者ノ体液シカ代用デキナイ』


 突然な夜な展開。

 溜まっていることは溜まっていますけど、なにが悲しくてこの喋るバングルのために出さないといけないわけ?

 それに仮に今から隠れて頑張って出そうとしている時に、この調子で話しかけられたら一気にしおれそうなんですけど。


『オネガイ』


 ……しょうがないな。


「俺を攻撃しないと誓うなら、血を少しだけあげなくもないけど? 」


『少シ吸ッタラ、我慢出来ナクナッテオネダリスルカモシレナイケド、誓イマス。下サイ』


 そんな事貰ってから言えばいいのに、……こいつ結構正直者だな。


 じゃ、指を少しだけ切って血をあげてみようかな。

 ベ・イヴベェで回復すればいいだけだしね。


 仮に血を抜きすぎても、女神曰くベ・イヴベェが血液の代わりをって——


 あれ?

 つまりベ・イヴベェでも良いのでは?


 白濁球を一つ作り上げてみる。


「ねぇねぇ、血の前にこれを飲んでみてくれないかな? 」


『不味カッタラ、顔ニ吐キカケルヨ? 』


 なんか立場おかしいよね?

 あなた、砂になりかけているんですよね?

 ……でもこの子、面白いかも。


「それでいいよ」


『分カッタ。……動ケナイカラ近ヅケテ』


 言われるままに白濁球の中に、俺の腕ごとバングルを入れてみる。

 すると暫く何も起こらなかったのだけど、突然白濁球がしぼみ出し一瞬で無くなってしまった。


「えと、美味しかった? 」


『ナニコレ? 凄クイイ。オカワリ下サイ』


 意外に好評であった。

 そこでもう一つ作ってみると、今度はバングルから緑色のツタのようなモノが伸びて白濁球に突き刺さる。

 そしてそのツタの先端が蛇の口のように開くと、また一瞬で吸い取ってしまった。


『御主人様、コレマダマダ出セルノ? 』


「あぁ、魔力が続く限りは」


 と言うか、御主人様呼ばわりされてます。


『チョウダイ、チョウダイ』


「そんなに美味しいわけ? 」


『オイシイ』


 そこで好奇心がくすぐられる。

 俺の血と比べてみたら、どっちが美味しいって言うのかなと?


「ねぇねぇ、俺の血も飲んでみる? 」


『イイノ? 』


「ああ」


 早速落ちてた鋭利な石で指を切り、血が滲む人差し指を差し出してみる。


「噛みつかないでね」


『ワカッタ』


 今度はツタの先端の口から、蛇のような舌が出て来て俺の血をチロッと舐めとる。

 そして俺の血は、そのままぺッと地面に吐き捨てられた。


「お、お前! どう言う事なんだよ! 仮にも最初、俺の血を欲しがってましたよね? 」


『ソレハ過去ノ話。ソシテ、選バレナカッタダケノ話』


 なんて生意気な言い回しなんだ!


 ……ん、待てよ?

 そこで疑問がふつふつと湧いて出てくる。


「そう言えばさ、カタコトとはいえ、えらく上手く言葉を話すよね? どうして? 」


『ソレハ影響受ケテルカラ』


「なんの? 」


『迷宮核二詰マッテイル記憶ノ』


 迷宮核?


「迷宮核ってなに?」


『迷宮核ハ迷宮核。色々生ミ出サレル中デ、稀ニ特別ガ生マレル』


 よく分からないな。

 まぁ、この子は特別だから言葉も話せる、と言う事なのかな?

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― 新着の感想 ―
おいおいユウト君よぉ。「体液」で夜のことを想像するとか頭の中がピンク過ぎやしやせんかぁ? 唾液とか鼻水とか涙とか他に色々と有るんだが~? 恋人が出来て舞い上がっているとは言え、そんなR18なことを実…
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