第43話、アイテムゲット
しかしどうしよう。
俺と真琴、そしてアズにヴィクトリアさんにルルカを加えた俺たちは、現在イドの街へ戻っている最中である。
鮮やかな色彩の花に彩られた街道を進みながら、これからの生活について考えていた。
結局ダンジョンでの報酬はゴブリンの瞳と呼ばれる鉱石一つ。
しかもルルカと真琴の三人で山分けをするわけで、そのため一人の取り分はスズメの涙ほどになってしまう。
しかし逆に出費の方はこれから多くなる事が容易に想像出来る。
それは新たに行動する事になったアズとヴィクトリアさんの食事や宿も確保しなくてはならないからだ。
いや、ヴィクトリアさんは女神さまだから、食事とか宿は不要かな?
とその時、なんとなしに視線を送るとヴィクトリアさんと目が合った。
するとヴィクトリアさんが、眼鏡のブリッジ部分を中指で少しだけ押し上げながら俯き気味になる。
「雰囲気を味わいたいので、出来ればご一緒したいです」
それってご飯も食べるし、寝床もヴィクトリアさん分を用意しないといけないって事、ですよね?
眼鏡のレンズ越しにヴィクトリアさんと見つめ合うこと暫し。
実際はそんな事ないんだろうけど、なぜかウルウルと純真無垢な瞳で見つめられているような気がしてしまい、それに耐えきらず思わず目を逸らしてしまう。
……えぇい!
こうなったら恥や外聞なんて知ったことか!
これからすぐに、お金を借りてでも洗濯屋でも何でもやってお金を稼いでやる!
そんな決意を胸に歩いていると、横っ腹を肘でツンツンされた。
真琴だ。
そしてその表情はどこか誇らしげである。
「先立つ物は必要だからね」
そうして眼の前に出された真琴の手には、六角形で拳と同じくらいのサイズで真っ赤に染まる石の塊が握られていた。
思わず足を止め眼を細める。
宝石? ただ見るからに高価そうである!
「それ、どうしたの!? 」
「闘ってる最中に、魂の旋律者が消滅した付近に落ちてたのを回収してたんだ」
それを見たルルカが、思わずっていった感じで声を漏らす。
「……クッ、クイーンオブルビー!? 」
「それって、いくらぐらいするの!? 」
「たしか安くて三百万とか……」
「でっ、でかした真琴! 」
すると誇らしげな表情になった真琴が、アズを見下ろす形で視線を移す。
たぶん、アズに対して勝ち誇っているのだろう。
しかしアズは鼻で笑ってみせる。
そしてショートスカートであるパニエの中に手を突っ込むと、ゴソゴソしたのち引き抜く。
その手には何かが握りしめられていた。
「あんたたちがゴブリンの瞳とか言う石を拾ってるのを見てたからね。私を縫い付けていた奴を消滅させた時、ゴブリン擬きの一つが落としたから私も回収してたの」
そうして手の平を広げて見せてくれる。
それは拳大のサイズで饅頭のように丸みを帯びた石で、大部分である漆黒の石の中から、金色や赤みを帯びた半透明な石が飛び出した、とにかく見た事もない鉱石であった。
「もしかして、磁石琥珀!? これもかなりの高値で取引されています! 」
ノートをペラペラとめくりながら叫ぶルルカ。
凄いぞ、二人共! ……と言うか、これで何度目だろう?
真琴とアズが恒例となりつつある睨み合う形になるのは。
そこで声がかかる。
「ユウト様、私もただでご飯を頂くわけにはいきませんので、どうかこれをお納め下さい」
申し出たのはヴィクトリアさんだ。
その両の手の平には、いつの間にか大豆サイズの金が今にも零れ落ちそうな程山盛りに乗っていた。
そうテレビとかでしか見た事がないため確証はないけど、恐らく純金——
「これは星が一つの役割を果たした時に残す物質であり、私が好む鉱石の一つでもあります」
この世界には金貨や金の大判があるわけだし——
「ルルカ、金ってやっぱり——!? 」
「はっ、はい、先の二つには劣りますけど、それでも一粒五千ルガは軽くするかと」
それがこんなに沢山!
「これで足りなければまだまだ出せますが」
女神様には四次元ポケットが備わっていた!?
「そっ、それよりヴィクトリアさん、それらはどこで!? 」
するとヴィクトリアさんはいつもの涼しい顔でゆっくりと話し始める。
「私が管理する場所の一つから、ただいま掬ってきました」
「いっ、今!? それにその行動は、いろんな意味でオッケーなんですか? 」
「この程度なら大丈夫です」
はっ、ははっ。
なんか分かんないけど、これだけあればお金の心配、当分しなくてよさそうになっちゃいました。
「ユウト、ユウト」
放心状態になっていた俺に、真琴が小声で話しかけてきた。
「この宝石なんだけどさ、換金したらルルカにも分けようと思うんだけど、どう思う? 」
その真琴の言葉でルルカの喜ぶ姿が目に浮かぶ。
「そっ、そうだね、いいと思うよ! ルルカは知らないだろうけど、分ける事は俺たちが最初に決めてた事だからね」
そうなると換金しないとな。
でも余ったお金はかなりの重量になりそうだから、ヴィクトリアさんの四次元ポケットに入れて貰えると助かるんだけどなー。
あとルルカは良い子だから、なかなか受け取らないかもしれないな。
「真琴、街を出発する時に渡そうか。押し付ける感じでさ」
「それがいいかもね」
真琴は俺にだけ分かるように微笑んだ後、何かを思い出したかのような表情になる。
「そうそうそれとさ、隠し通せるか分からないけど、ボクらが迷宮核を破壊した事はしらばっくれようと思うんだ」
そう言えばルルカがダンジョンへ向かう道すがら、迷宮核の破壊は禁止されていると教えてくれていた。
「そうだね、隠し通せるならそのほうがいいだろうね」
普通だとすぐばれてしまうかもだけど、真琴がいればなんとかなるかもと思ってしまう自分もいたりする。
なるようになるか。
……でもこの世界には魔法があるわけだし、嘘を調べる魔法があってもなんらおかしくはない。
そんなのがあれば追手をまかないといけなくなるわけで——
そんなこんなで密かにドキドキしながら、俺はみんなと一緒に街へと向かう歩みを再開させるのであった。




