第118話、セッ◯スをするわよ②
チロチロされて次第に気持ちが高揚して触られる事が気持ち良くなってくるけど、呼吸をする事に集中して快楽を感じていないと思い込むことによって気持ちよくなるのを我慢する。
ユウトにはこれまで、恥ずかしい姿を何度も晒してしまっている。それは私が私を許さない。だから私は耐えて、誇り高いところを見せつけないといけない。私は他とは違う特別な存在、だからユウトにとっても特別な存在でなくては……いけない?
それはつまり、……私は特別な存在になりたい!?
……この気持ち、たぶんそう、なんだろう。
しかしこの私が他者にこれほどまで固執し、依存するような考えを持ってしまうなんて。
それは恐らく、私の直感がそう感じ取っているからなんだろう。ヴィクトリアは最後まで教えてくれなかったけど、ユウトは私と同じで特別な存在なのだろうと。
ふふぁっ、決めたわ!
私は真琴やヴィクトリアよりもユウトにとって特別な存在になる。そのためにも、挽回しなくては。
ただSなユウトと、彼に協力するため現れたバングルの攻めは凄まじかった。我慢する私を短時間で開発して淫乱な女へと変えてしまったのだ。
しかしそれでもユウトの弱点を見つけた私は、彼と対等にありたいため勝負を挑む。
それから多くの時が流れたのだけど——
勝負の結果は私の惨敗。でも私は悔しさを微塵も感じていなかった。それどころか、私は快感で身体が思うように動かないのに、愛おしくて自然と脚をユウトの腰に絡めてしまう。
……でも他者から求められる事が、こんなにも気持ち良い、心地よいものだったなんて。
快感で頭と身体がしびれて何度も真っ白になる中、何度目かの真っ白な世界でそれが起こる。世界の下部に色がつき始めたのだ。これは——色彩豊かなお花畑。
そう、今の私の瞳には、頭上で眩い光をサンサンと放つ恒星の下、大地にはそよ風に吹かれるお花畑が見えていた。
これはいったい?
そこでお花畑の中央、黒を基調とした豪奢で大きなパラソルが立てられている事に気がつく。そのパラソルの下には同色でアンティークなテーブル一つと椅子が二脚あり、椅子の片方には黒のドレス姿で足を組んで腰掛けるどこか私に似た、でも大人びた銀髪の女性の姿があった。
彼女は優雅な立ち振る舞いで花たちを愛でている最中のようだけど——
私に似たあの女性は、以前の私。
そうか、これは私の中に眠る以前の私の記憶。
ここ数億年の間見る事がなかった物を、よもやこんな形で見るとは。
そこで心臓が飛び出そうなくらいドキリとしてしまう。
……あっ、あれは!
以前の私の傍らに、身なりの良い、それでいてスマートな黒衣で佇む者がいた。その者は椅子が空いているにも関わらず、そこには座らないどころか、以前の私に対して背を向けてしまっている。そう彼は私には見向きもせず、飛んでくる小鳥たちの羽休めの場として己の身体を提供しているのだ。
小鳥たちは彼の頭や肩、そして伸ばされた腕や指で羽休めをしたり自由に遊んでいる。
私は今まで昔の記憶を思い出すたび、必ずと言って良いほど私のすぐ近くにいるあいつを、とても失礼な存在だと感じていた。
だって以前のあの私が特別に気にかけてあげてたりしているのに、あいつは私に嬉しそうな表情一つ見せる事なくいつも自然体でいる。
……思い出した。
あの頃の私は、あいつがそばにいるようになってからの私は、生を受けてから初めて感じる様々な感情に驚き、喜び、とても心踊り浮かれていた。
それらの感情は彼からもたらされる物であり、彼が居たからこそであったのに。それが当たり前だと思ってしまっていた以前の私は、悲しいかな判断を誤る。
突然いなくなってしまったあいつを追おうとはせず、しかし今さら探すことが出来ずに、その遠ざかる感覚に胸が苦しくなりその場から動けなくなっていった。
あいつは唯一の存在であり、昔の私が手に入れたかった望み。
そこで夢から覚めると、呼吸が乱れまくっている私の頭を、ユウトが優しく撫で撫でしてくれていた。
そうだったんだ。他者からではなくこのユウトだからこそ、私は素直に受け入れていたんだ。
そして私はこの時のために生まれ変わっていたんだ。以前の私が求めて求めて、でも手に入れられなかったユウトの愛をこの身にたくさん刻みつけ、心と心の深いところで触れ合わせ感じ合うために。
そこでユウトの吐息が耳元で聞こえ始めたとき、またゾクゾクッとした快感が全身を駆け巡る。
「一応聞くけど勝負、まだ続けるよね? 」
「はぁはぁはぁはぁっ、もちろんよ。はぁはぁそれより、ユウト」
「ん? 」
「——その、だいちゅき」
「……え? 」
いっ、一番大切なところで噛んでしまった!
恥ずかしさと情けなさで顔は耳まで真っ赤に染まり、瞳には大粒の涙が浮かんできてしまう。
私はそんな情けない顔を横にそむけながら両手を広げて隠そうとしたのだけど、意地悪なユウトに両手首を掴まれベッドに押し付けられてしまう。
そして羞恥に耐える顔を見られた状態で私は、心なしか更に激しくなったユウトにより何度も何度も愛されるのであった。




