財布
「まだその指輪してんの?」
元彼の左中指の指輪が目に入った。私と付き合っていた時からチョクチョクしていた指輪。随分とお気に入りなんだと今日改めて思った。
「これしか持ってないから、財布はお前に買ってくれたのまだ使っているよ」
「マジで?!」
さっきアイスクリーム買ってもらった時、全然気づかなかったからビックリした。
「さっさと変えなよ」
「別に良いじゃん、気に入ってるんだから」
付き合って最初に誕生日にプレゼントした財布。かれこれ、何年前か頭の中で計算をしてみた。
「八年前??」
「もうそれ位経つの?時が経つのは早いね」
のんきにそんな事を言った、意外と物を大事にする元彼。
「お前にも買ってあげたでしょ、財布」
「もう使ってないよ、今は違うの使っている」
「あ、そっか」
少しだけ寂しげな横顔を元彼はしていた。少しだけ微妙な間が出来てしまった。こんな時に限って車のBGMは、昔HITしていた失恋ソングが流れてきた。空気位読んで欲しいものだ。話題を変える為に質問をしてみた。
「彼女は今日仕事?」
「はぁ?女なんていないよ、いたらお前とは逢っていないよ」
「いないの?!何で?」
「何でって言われてもいないから仕方無いでしょ」
「さては、捨てられたんでしょ?」
「はいはい」
元彼は、二言の返事で返した。それを聞いて私は、やっぱり寂しくなって私に連絡してきたんだと思ったのだ。私の読みは流石だなと心の中で自分を褒めた。
失恋ソング、失恋ソングの連発を終えた頃、信号手前にあった道路の青看板に、目的地である公園の名前が出てきた。
私と元彼の思い出の地である公園はもうすぐである。