豆腐
久しく通るこの道は、あの頃と何も変わらなかった。変わったのは私と隣で運転をする元彼の関係だけ。
「そう言えば、あそこのアイスクリーム食べる?」
何かを思い出したかのように元彼は言った。
「豆腐のアイスクリーム?」
私は、アイスが好きだからその記憶は覚えていた。
「そう、良く覚えていたね、食べる?」
「勿論食べる。おごってね」
私はズルイから奢らせようとした。
「はい、わかったよ」
良し、今日はこれだけでも来たかいがあったと心の中で思っていた。
そして、程なくして、国道沿いにある小さなアイスクリーム屋についたのだ。
私たちは豆腐のアイスクリームを二つ買い、小さなベンチに腰をかけた。
「やっぱり美味しいね、ここのアイス」
一口食べてから元彼はそう言った。
「チョー久しぶりに食べた。美味しい」
私は、自然と笑顔が出ているのも知らずにそう答えていた。
「俺もこれ、あの時以来」
頬を赤らめて元彼は、そんな事を言った。顔が赤いのが気になった私は、
「風邪引いてるの?」
「うん?もしかしたら少し引いているかも」
笑いながら元彼は、またアイスを口にした。
「私にはうつさないでよ!」
そう言って、私は少しだけ元彼から距離を置いた。
時間にして言えば、ホンの三十分位で私たちはこの思い出の地となっていた、小さなアイスクリーム屋を後にし、また車を走らしたのだ。