行先
ゴールデンウィークも終わった平日の道路は空いていた。車は昔良く通っていた道に出て、早くも無く遅くも無く走り出す。
「ねぇ、何処にいくの?」
このまま行くと、街から離れる道なので私は聞いてみた。
「覚えている?あそこの公園」
「公園?」
「そう、湧き水が出てる公園」
私は、初めてデートした場所だとわかったのだが、あえて惚けてみせた。
「あったっけ?そんな公園?」
「あれ?忘れちゃったの?随分前のことだから仕方ないか」
少しだけテンションの下がった元彼が、少しだけ可哀想になったので思い出したフリをした。
「もしかして、びしょ濡れになりながらペットボトルに沢山水を入れた所?!」
「そうそう!そこに行くの」
ちょっと顔の赤い元彼が笑みを見せた。
「何しにいくの?また水でも持ってかえるの?」
「まあ、暇だしそんなところかな」
「結構距離あるよね?マジ行くの?」
ちょっと嫌な顔を私はして見せた。
「今日は道空いているからすぐに着くよ、時間は大丈夫?」
「時間は別に大丈夫だけど、行くなら先に言えよ」
私は、ジャージーなのだ。そんな所に行くのなら、ちゃんと着替えてきたのに。と、心の中で思ったのだ。
「てゆーか、私ジャージー姿何だけど」
「ははっ、大丈夫。今日はきっと誰もいないし、ジャージー似合っているよ」
相変わらずな能天気ぶりは、未だ健在だった事に今私は思い出した。
「何で今更そんな所に行くんだよ、はぁ」
思わず溜め息が出た私なんかは無視して、元彼は私の心をホッとさせる笑みを浮かべて、また歌いだした。
とりあえず、行き先は思い出の初デートの場所だった事が、やっと判明したのだ。