表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元彼  作者: 紀本 真利亜
2/6

会話

 

 懐かしい曲が耳に流れてくる。


 付き合っていた頃に良く聞いていた曲。もう少しでサビという所で、曲は切れ、これもまた懐かしい声が聞こえてきた。

 

 「あ、もしもし、ごめんね、いきなり電話掛けて…」

 少し照れながら言う、あの時と同じ声。

 

 「どうしたの?急に。何かあったの?」

 あたかも興味の無い様に振舞う私の態度。本当は、「何ですか?!」って、気持ちだけどその気持ちは押し殺したのだ。捻くれ者のなのだ私は。そうでもなければ、きっと私にも今頃、新しい彼氏もいる筈だ。

 

 「いや、別にどうしてるのかなって、元気にしてんのかなって思って」

 この返事のシュミュレーションはしていた。さては、私と別れて後悔でもしてるのか、新しい彼女に振られて、元カノの私に寂しく電話掛けてきたのか、きっとその二つの内にどれかだろう、って、私は勝手に決め付けていた。

 

 「別に元気だけど、で、何?」

 元彼の腹の内を探ろうとした。

 「別に要は無いんだけど、近くに来たから久しぶりに会わないかなって、思って」

 あの時と変わらない素直な奴。

 私は少し間を空けて考えた。暇だから会っても良かったけど、ちょっと会うのも怖かった。少しだけ私の心の中をフラッシュバックしてみたのだ。そして、私の出した答えはこれだった。

 

 「今、ジャージーで、素ッピンだから無理!」

 

 「ぷっ、」

 確かに笑った元彼。

 「別に、ジャージーで素ッピンでもいいよ。そんなの何回も見た事あるから」

 

 そりゃ、何回も見た事もあるかも知れないけど、今はそういう問題じゃないでしょ! って、心の中で思ったのだ。反撃する間も無く元彼は、己の素直な気持ちで言うのだ。

 

 「会うのはどうしても無理?」

 どこか切なく、力のない様に聞こえた。

 

 その問いかけに私は、また少し間を空けて、

 「なら少しだけならいいよ…」

 

 三年間、私と一緒に暮らしていた元彼。たまにだけ私に見せていた元彼の弱い所が私は好きだった。だからその問いかけた言葉に、私の心は無性に会いたくなってしまったのだ。

 久しぶりとか関係無しに、共に過ごした三年間。そして別れてからの三年間。同じ三年間でも、気持ちの中では、身の有った三年間の方が強いから、たった三年間会わなかっただけで元彼を他人には出来ない自分がいた。

 

 そして、何よりも、何となくだけど、今の元彼が私を必要としていると思ったのだ。

 

 

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ