モグラの草の根運動
あそこでドリルを使って地面を掘っている。僕はあそこへはいかない。めちゃくちゃにされるから。2、3匹まさに今粉々にされている。
さあ、僕はどこへ行こう。ショッピングモールへ行って、空腹を満たそう。
あそこにサンドイッチが売っている。ハムと卵にしよう。
さて、どこで食べよう。決まってるじゃないか、地下で食べよう。僕はモグラだ。
君は知らないだろうが、地下にもショッピングモールがある。そこは、いつもモグラたちでいっぱいだ。賑わいはなかなかのものだ。盛況で、活気がある。
おいおいよこせ、こっちのもん
さあさあたべな、うまいぞさあさあ
サンドイッチを食べたら、あのドリルでやられた仲間を助けに行こうか。人間は道路工事だと言って、モグラを叩く。もちろん、モグラだってやられっぱなしじゃないさ。仕返しに、穴を掘るんだ。でも、命までは奪わない。小さな穴を掘って、つまずく程度のものだ。
お腹いっぱい。助けに行こうと思ったけど、あのドリルの奴らはもう死んでしまっただろう。しかし犠牲者が増えてはいけない。工事に巻き込まれないように、近くへ行って、見張っていよう。
あ、1人迷い込んできた。
「おーい、こっちだ! 上に行ってはいけないよ、人間たちが工事している!」
モグラは懸命に声を出した。
「ん?」
「気付いた! そっちは危ないよ!」
「なんだって?」
「そっちはダメ。人間たちが工事している」
「そうなのか。わかった。ありがとう」
「一人かい?」
「うん。さっきまで叔父さんと一緒だったけど」
「若いんだね」
「高校生さ」
「へぇ。見た目より大人に見えるね」
「よく言われるよ」
「さあ、あっちは危ない。気をつけてね」
「ありがとう。じゃ」
「うん」
しばらくして、今度は勢いよく来た。
「おーい、止まれー!」
モグラはいつもより大きな声で注意した。
「ん?」
「そうそう。こっちだよ。止まってくれ」
「やあ。どうしたんだい」
「上の方で人間たちが工事しているんだ」
「もう何匹かやられてしまったから、見張ってるんだ」
「それは有難いね。僕も行かなくて良かった」
「ありがとう」
「うん」
「ショッピングモールへ行くのかい?」
「よくわかったね。子どもにご飯を作らなきゃいけないから、買い出しに来たんだ」
「へぇ。いくつなんだい」
「もう5歳さ。早いね、子どもの成長は」
「一緒に来たらよかったのに」
「なあに、お母さんと家にいたいって言うんだ。じゃ。またね。ありがとう」
「うん。またね」
今度は2人やってきた。
「おーい! そっちはダメだよー!」
「ん?」
「今あそこで人間たちが工事してるんだ」
「教えてくれてありがとう。今日は娘の運動会があって、家族で応援しに行くんだ」
「へぇ、そりゃいいね。気をつけてね」
「ありがとう」
「行ってらっしゃい」
「じゃあね」
「うん」
ドリルの音が大きくなってきた。一体どこまで掘るつもりだろう。人間の文明というのは、モグラの事など考えていないみたいだ。もうすでに何匹か犠牲になっている。この目で見たから間違いない。
事故を防ぐにはどうしたらいいか。その都度その都度、声かけしていくしかないのかもしれない。モグラはそんな思いに至り、少しの間、頭を垂れました。
招かれざる客がまた来ました。
「おーい、上はダメだぞー!」
モグラは声かけをやめませんでした。
世界が良くなることを信じて。




