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小話45 美鈴の馬鹿矯正授業

※ 本編の補足、本編に関係のない日常等々です。読まずとも問題ありません。

ただ、読んで貰えたら喜びます(笑)




「ねぇ、美鈴ちゃん?本当に呼ぶの?」

僕はあんまり賛成したくない気持ちが強く、恐る恐る聞くと美鈴ちゃんは顔を上げて『うん』とハッキリ頷いた。

「でもね?あんまり男をこの学校に入れるのは…」

「解ってるよ~。でもね?私が何度も出るよりは良いと思うの」

「それは勿論そうだけど。それだけじゃないよね。って言うかそう言う問題じゃないよね?」

問題を変えられてる気がして僕はちょっと強めに抗議する。

すると美鈴ちゃんは横を向いてしまった。うぅ…最近美鈴ちゃんが抵抗する事を覚えてしまった。

ほっぺ膨らましてそっぽ向くんだから…これが、可愛いから質が悪い…。

「………よしっ。でーきたっ」

「何作ってたの?」

「カード」

カード?

確かに美鈴ちゃんの手元にはA4サイズの底が深めの箱がありその中には一杯のカードが詰まっていた。

一体何のカードをせっせと作っていたのか気になって、もっと詳しく見ようとした時、ガチャリとドアが開いた。

「王子ー。連れて来たよー」

夢子ちゃんが連れてきた馬鹿三人に僕は小さく溜息をついた。

来ちゃったものは仕方ない。

こいつらに釣られて僕の正体をばれないようにしないと…。

まぁ、元々顔は整っている方で夢子ちゃんのメイク技術で完全に女の子にしか見えないようにはなっているけれど。

馬鹿だからね。

何が起こるか分からないから警戒だけはしっかりとしておかないと。

「いらっしゃい、陸実くん、海里くん、空良くん」

微笑む美鈴ちゃんに顔を赤くする二人と眉を寄せる奴一人。

態々忙しい美鈴ちゃんが時間を割いてるってのに何?その顔。照れるのは美鈴ちゃんが可愛いから仕方ない。

「じゃあ、早速勉強しようか」

あらかじめ美鈴ちゃんは勉強を教えやすい場所、生徒会室で準備をしていた。

だってのにせっせと作っていたのはカード。

どう言う事だろうとずっと疑問に思ってたけど、今それが分かる訳だ。

「ついでだから、ユメも勉強しようね」

「うんっ!王子とならするっ!嫌いな勉強もするよっ!」

……夢子ちゃん、ぶれないね。

美鈴ちゃんは生徒会室にある会議用の長机を二つくっつけて向かい合うように椅子を二脚ずつ。そしてお誕生席に一つ椅子を置いていた。

お誕生席に美鈴ちゃんが座り、美鈴ちゃんの右手側に海里くんと空良くん、反対に夢子ちゃんと陸実くんが席についた。

僕は美鈴ちゃんの横に立っているつもりだった。でも…邪魔だよね?

うぅ~ん…この時の為に寄せた机で書類を片付けるついでに耳だけ傾ける事にしようかな?

足を動かそうとした時。

「じゃあ、席についた所でカードを渡すね」

うん?勉強じゃなかったの?

早速気になってしまうんだけど…。

足を戻して僕は美鈴ちゃんの後ろに立ってカードを覗き込む。

美鈴ちゃんが四枚のカードを取り出し四人に配った。

そのカード。馬鹿三人には『男』と書かれたカード。夢子ちゃんには『女』と書かれたカードが渡された。

「はい。これが基本カードね。で、こっちがスキル一覧表ね」

プリントが一枚ずつ配られる。何故か美鈴ちゃんは僕にまで配る。気になってたから有難く受け取るけど…。

えっと……あぁ、なる程。勉強内容を一つクリアする毎に装備を得られる訳だ。

国語は攻撃力重視のカード。剣とか杖とか、後は攻撃に関するスキル。必殺技とかだね。

数学は体力カード。要するにゲーム風に言うとHPのようだ。

英語は精神力カード。ゲーム風に言うとMP。

理科は防御力重視のカード。盾とか鎧とか、後は防御に関するスキル。バリアとかだね。

社会は治癒補助系重視のカード。薬とか回復アイテムとか、回復魔法とか精神異常系の魔法とか。

…って言うか美鈴ちゃん。寝る間も惜しんで何を作ってるの…?

こんなの作るより僕としてはちゃんと寝て欲しいんだけど…。

「この間のテスト結果を見る限りだと今皆に配布出来るカードはこんな感じね」

そう言って美鈴ちゃんは陸実くんに『体力+100』と書いたカードを、海里くんには『精神+50』と書いたカード、空良くんには『竹刀』と書かれた竹刀のイラスト付きカード、夢子ちゃんには『木の盾』と書かれた木で出来た盾のイラスト付きのカードが渡された。

「そして、今日のメインシナリオはこれっ」

デデンとまるで音が聞こえてきそうなノリで美鈴ちゃんが目の前に出したのは『白雪姫』の絵本…?

あ、あー…分かった。これ美鈴ちゃんが旭達にやってた読み聞かせだ。しかもちょっとアレンジされてる。

「白雪姫の物語は当然知ってるよね?」

美鈴ちゃんの言葉に海里くんと夢子ちゃんは頷く。陸実くんと空良くんはピシリと固まった。

「…二人共絵本って馬鹿にして読んでなかったんでしょう?例えば、絵本を読んで貰うなんて女みたいな事出来ない、とか、興味ないから他の事して遊んでた、とか」

じろりと美鈴ちゃんが二人を睨むと、二人はうっとダメージを負う。

「そもそも絵本に限らず、本って言うのは様々な知識を頭に入れてくれるの。例えそれが漫画であろうと雑誌であろうと。文字を読むことに意味があるのよ。そこにはどんな知識が眠っているか分からないの。勿論ゲームだって同じ。そのゲームを作っている人間の知識の集大成がゲームなの。それを遊ぶって事はその人の知識を分けて貰っているって事なのよ」

「……なるほど…」

夢子ちゃんが真剣に聞いて頷いている。

他三人はぽかんとしている…通じてない…?

安定の馬鹿だね。

「では早速読むからね~。……油断してたら直ぐに負けちゃうよ?皆はちゃんとその能力を考えて動くように」

今度は夢子ちゃんもポカンだ。美鈴ちゃん説明が足りないと思うんだ…。

けど美鈴ちゃんの事だからそこまで計算ずくだね。きっと。

「じゃあ始まり始まり~。てってれれれー♪むかーしむかし、ある所にちょっと精神的にあれなお姫様がおりました。『うふふ。今日も私は美しいわ~♪どうしましょうっ♪』お城の皆はドン引きです。なんなら血の繋がった実の父である王ですらドン引きです」

うん?美鈴ちゃん、白雪姫じゃなかったの…?

「そんな王様は娘の脳味噌を心配するあまり心労で寝込んでしまいました。心優しい王妃様は王に成り代わり実の娘を矯正しようと立ち上がるのですっ!!」

美鈴ちゃん?その拳は何?ぐっと握ってテンションが高過ぎる…。

「ミッション開始っ!!『魔法の鏡を探せっ!』」

ごそごそと美鈴ちゃんが箱からまたプリントを四枚取り出す。そしてそれを四人に配った。

「今から制限時間三分の間に、その中に隠れている四字熟語を三つ探し出してね~」

『えぇっ!?』

「よーい、スタートっ!!」

三人が勉強の為に持って来ていた筆記用具を急いで鞄から引っ張り出して、プリントに取り掛かる。

どんな感じなんだろう?

気になる…覗いてもいいかな?

「優ちゃん、気になるの?」

「え?あ、うん。実はかなり」

「そっか。じゃあ、優ちゃんにもあげる」

微笑みながらプリントを渡される。どんなだろう?ちょっとわくわくして見ると、そのプリント一面に沢山の感じが書かれていた。

規則性はない。けど…確かに四字熟語は隠れている。沢山ある。五里霧中、一期一会、心機一転、無我夢中、弱肉強食…ははっ、引っ掻けの定番の焼肉定食がある。

これは結構簡単じゃないかな?

プリントから顔を上げて、四人の様子をこっそり窺う。

…あーあ、見事に焼肉定食に四人が四人共引っかかってる。夢子ちゃん、せめてそこは引っかからないで欲しかったよ…って、あ、気付いて消した。良かった良かった。

そこから三分が経過して、終了。

「はーい、終了ーっ!回収するよー」

美鈴ちゃんがプリントを回収して、結果を見てカードを四人に配る。

配られたカードを見ると、夢子ちゃんと空良くんには『王妃の杖』、海里くんには『普通の杖』、陸実くんには『なんだ、この杖』のカードが配られた。

「ちょっ!オレのこのカード何だよっ!!攻撃力マイナス2とかっ!ダメージ受けてんじゃんっ!」

「あれだけ書いてあったのに一つも四字熟語を見つけ出せなかった陸実くんが悪いっ。それからちゃんと言っておくけど、焼肉定食は四字熟語じゃないからっ」

「うぐっ……くっそぉー…」

流石美鈴ちゃんだなぁ…。多分ゲームをやる上で陸実くんは攻撃力を一番求める。突進型っぽいし。でも、それを入手するには彼の苦手な国語を勉強しないといけない。上手く出来てるよね…。

「ミッション終了。王妃様はお城の中を自室に向かって歩いています。そこで白雪姫と遭遇っ!!デレデレデンっ!!ダンジョンに突入しましたっ!!そして同時にミッション発動っ!!『白雪姫を振り切れっ!!』王妃様が自室に入り魔法の鏡を手にするまで白雪姫は襲撃をかけてきますっ!それを振り切って逃げましょうっ!持っているカードを使い逃げ切れっ!!」

「も、持ってるカードって言ったってっ!」

「王妃の杖の能力って、どうなってるのっ?」

「『敵の動きを一時的に止める』って書いてあるっ」

「じゃあ、それを使ってっ」

わたわたと焦り始める四人をよそに美鈴ちゃんが四つ折りの大きめな紙を取り出し、広げた。

そこにはすごろくのようにマス目が書かれている。すごろくと違うのはマス目に内容が書かれておらず数字しか書いてないってことかな?

美鈴ちゃんはその紙を広げ終えると、今度は駒を二つだす。その駒はカードが小さなポップスタンドに立っているというシンプルな出来だ。駒を良く確認すると王妃『HP30』白雪姫『HP50』と綺麗な王妃と白雪姫のイラストと一緒に書かれている。

手作りの王妃様の駒がすごろくの真ん中に。スタートの場所に白雪姫の駒が置かれ、準備完了と美鈴ちゃんが夢子ちゃんにサイコロを渡した。

「はいはい。考えながら進まないとあっという間に追い付かれちゃうからね~」

そう言って美鈴ちゃんは夢子ちゃんにサイコロを振る様に促すと、夢子ちゃんにタイミングを合わせて自分も一緒に転がした。

夢子ちゃんのサイコロは1~3サイコロ。美鈴ちゃんのは通常のサイコロだ。確かにこれは直ぐに追い付いてしまう。

何回かふっていると案の定追い付かれた。

「白雪姫に追い付かれたっ!!戦闘開始っ!!」

「うぇっ!?ど、どうしようっ!?」

「どうしようって先制攻撃しかないだろっ!攻撃カード『なんだ、この杖』を使うぜっ!」

…馬鹿なのかな?いや、ごめん。疑問形じゃなかったね。馬鹿だ、コイツ。

さっき自分でダメージ喰らうって言ってたくせに。

「攻撃カード『なんだ、この杖』の通常攻撃発動っ!!王妃に2のダメージっ!」

「あぁっ!?しまったっ!?」

「…陸のバカ…。えっと、攻撃カード『王妃の杖』のスキル、『私は自室で用があるのです、そこをどきなさいっ!!』……使う……」

「攻撃カード『王妃の杖』のスキル、『私は自室で用があるのです、そこをどきなさいっ!!』を発動っ!!一回休みの状態異常が白雪姫に向けられるっ!!だが白雪姫が反撃スキル発動っ!!」

「…え?…反撃…?」

「白雪姫の反撃カード『え?今誰か何か言ったかしら?』を発動っ!!王妃の杖のスキル効果を相殺っ!!」

成程。確かに白雪姫は人の話を全く聞かないお姫様だよね。駄目だって事ばっかりしてるし。開けちゃダメだって言われたドアを開けて魔女を引き込むしね。

「相殺されちゃったじゃない、空っ!えっとえっと、私のカードは使えないんだよね、だって空と同じだし。なら海のカードはっ?」

「うぅーん。あんまり意味ないと思うけど、使うだけ使ってみる?攻撃カード『普通の杖』を使う」

「攻撃カード『普通の杖』を発動っ!!白雪姫に攻撃っ!!白雪姫5のダメージっ!!」

「おぉっ!?やるなっ!!海っ!!ダメージいってるじゃねーかっ!!」

「じゃあ私も、攻撃カード『王妃の杖』で通常攻撃っ!!」

「攻撃カード『王妃の杖』で通常攻撃発動っ!!白雪姫に攻撃っ!!白雪姫10のダメージっ!!白雪姫の攻撃っ!!『お母様っ!私綺麗っ!?綺麗っ!?』が発動っ!!」

…白雪姫の言ってる事が口裂け女と同じなんだけど…。

「敵全体に25のダメージっ!」

「うそだろーっ!?」

「追撃スキル発動っ!!白雪姫の攻撃っ!!『私絶対に追い出されませんからっ!!』発動っ!!敵単体に10のダメージっ!!」

あ、王妃のHPがなくなった。

「王妃様は倒されました。その後、白雪姫のいかれっぷりに王様は精神疲労の末、体を悪くし引退。白雪姫は女王として国のトップに君臨。しかし、そのいかれっぷりを国民が恐怖し反乱が起こる。こんな女王を生み出した前王もろとも処刑されました…。ゲームオーバー…でれでれでん」

早過ぎるでしょ、ゲームオーバーが。やり方ならいくらでもあっただろうに。

例えば美鈴ちゃんの番が来る前に『王妃の杖』の能力を重ね掛けしてみるとか。反撃って大抵のゲームは確率で出るものだし。それとか多分陸実くんのカードも実は良い手だよね。白雪姫にあのカードをあげてしまえば自滅してくれたかもしれない。

「おまっ!ずるいぞっ!!自分が勝つようにゲームを作ってるだろっ!!」

「まさか。むしろ常に自分が負ける様に作ってるよ。ね?優ちゃん」

「うん。そうだね。ちゃんと考えればどうとでも倒す手段あると思うよ?それに何よりもちゃんと勉強してさえいればもっといいアイテム入手出来たしね。さっきやった四字熟語探せばかなり出て来たよ。それを全部書いてさえいれば美鈴ちゃんの事だからもっともっと良いカード用意してたと思うし」

「うっ…」

「とりあえず逆らうってその悪い癖なくしたらいいと思うな」

僕が笑顔で言うと陸実くんは顔を逸らした。でも、悔しいんだろう。

「も、もう一回だっ!今度こそ倒すっ!」

「待って待ってっ、陸っ。その前に少し勉強しようっ。で、僕達の基礎レベルあげようよっ」

「………賛成……」

「王子どうしたら、王妃様のHP増やせるのっ!?」

「それはね~」

……もう完全に美鈴ちゃんの手の上で転がされてるなぁ。

先が気になる気もするけど、僕は今度こそ空いてる席で生徒会の書類をする事に決めたのだった。

………ちょっと参加してみたい気もしたのは内緒ってことで。


ふおぉぉぉぉっ!!( `ー´)ノ

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