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小話38 お姉ちゃんの読み聞かせ~三つ子ver~(美鈴小学5年)

※ 本編の補足、本編に関係のない日常等々です。読まずとも問題ありません。

ただ、読んで貰えたら喜びます(笑)



タタタタタッ。

複数の足音が聞こえる。

その複数の足音と言えど、足音が鳴る瞬間は一緒なおかげで三つ子の弟の足音だと分かる。

とは言え、何で走り回ってるんだろう?

僕は自室のドアを開けて、そっと廊下を見ると三つ子は旭の部屋を覗いていた。

「…蓮、蘭、燐。旭は今日佳織母さんと出掛けてるよ?」

声をかけると、三つ子は驚きよりむしろとても嬉しそうな顔で僕に駆け寄ってきた。

「ほんと?なつめ兄ちゃっ」

「棗兄ちゃんっ」

「なつ兄ちゃんっ」

足下でぴよぴよと騒ぐ三つ子を苦笑しながら見ていると、三人の手に小さな箱がある事に気づいた。

「?、三人共それは何?」

「こうげきっ」

「ぼうぎょっ」

「かいふくーっ」

…………うん。三人共、元気が良く答えてくれた所悪いけど、お兄ちゃんには何が何だかさっぱり分からないよ。

「らん、れんっ。いまがチャンスだよっ」

「うんっ。おねえちゃんに『ほん』よんでもらおっ」

「おねえちゃん、たしか『ごはんたべるおへや』にいたよっ」

鈴に本を読んで貰う?

……ちょっと興味あるな。鈴がどう言う風に本を読むか。

「なつ兄ちゃんもくるっ?」

燐が誘ってくれたので。

「そうだね。行こうかな?」

そのお誘いに乗ることにした。

まだ頭の方が重い三つ子のよたよたとした階段降りを見守りつつ、階段を降りて僕達は揃ってリビングへと入った。

『おねえちゃんっ』

三人がドアを思い切りよく開けて、中へ元気よく入っていく。

すると、エプロンで手を拭きながらキッチンから出てくる鈴が、

「こら、蓮、蘭、燐。ドアは静かに開けなきゃダメでしょう?」

窘めるのを見ていると、つい笑みが浮かんでしまう。

「ふふっ。鈴。言ってる事がもう完全に母親だよ?」

ついでに突っ込みを入れると、鈴が僕を見て穏やかに微笑んだ。

「ママが注意しないから、私がするの。それにママだったら…元気があって良いで片づけそうだし…」

「あぁ、それは、まぁ、そうだね」

沈黙。

佳織母さんだったら本当にそう言いそうだ。なんならドアを壊しても直せばいいとケロッと片づけそうだ。

「それで?蓮、蘭、燐は私に何かご用?」

「ごほん、よんでっ」

ずいっと蓮が絵本を鈴に突き出した。

箱しか目に入ってなかったけど、本も持ってたのか。

えーっと…『三匹の子ブタ』…?

「ごほんっ」

蘭が絵本を鈴に突き出す。

……『マッチ売りの少女』…?

「よんでっ」

燐が絵本を突き出す。

……『赤ずきんちゃん』…?

三つの内二つが女の子用なんだけど…いいのかな?

「勿論。いいけど…ほんとにこの三冊でいいの?」

コクコクと三人は嬉し気に頷く。

「じゃあ、早速やろうか」

三人は更に嬉しそうに頷いて、テレビの前にあるテーブルの周りを陣取って座った。

ちょっと小さい頃の自分達を思い出して微笑ましくなる。

「鈴。僕も見て行っていい?」

「勿論良いよ~。あ、そうだ。冷蔵庫にプリンがあるよ?食べる?」

「いや。今はいいよ。三人だって僕が一人で食べてたら、食べたくなるだろうしね」

美鈴が分かったとにっこり微笑んで、空いていた一辺に鈴が座った。丁度テレビを背にする形で。真正面に蘭、鈴の右が燐、左が蓮だ。

んー…僕はじゃあ、蘭の後ろにあるソファに座って聞いてようかな?

ソファに座り、鈴達の話声に集中する事にした。

「えーっと、じゃあ、皆装備と役職の確認ね?」

………ごめん、鈴。聞く事に集中するって言った言葉を直ぐに覆したくなったよ。

役職って何?装備って?

「おねえちゃん。この『おはなし』は、ぼくたちはじめてだよ」

「え?あ、そっかぁ。これを前やったのは旭だっけ?…旭、今日はいないから…ははーん?さては、蓮、蘭、燐。旭がいない間にこっそりレベル上げする気だな~?」

ギクッ!!

鈴のしたり顔に三つ子が驚き跳ね上がる。

……ねぇ、鈴?レベル上げって何の話?

「ふふっ。分かった。それじゃあ、メインシナリオはどれにするの?」

「これっ」

「メインシナリオを『三匹の子ブタ』にするのね?結構大変だよ~?」

「『れべるあげ』だもんっ!」

「たいへんでもやるのっ!」

「そっか。分かった。それで?装備はどうするの?」

うむむ…。

いつの間にか取り出した箱の中身を並べて三つ子が考え込んでいる。

箱の中にはカードが入っていた。

もしかして、鈴の手造り…?

そっと蘭の後ろから覗き込み、カードを見る限りだと。

紡錘つむ』『豪華なドレス』『寝込みを襲う侵入者』『天女の祝福』『天女の呪い』など色々ある。

……これを見る限りだと、多分…いばら姫に関する事だとは思うんだけど…『寝込みを襲う侵入者』のカードが気になり過ぎて困る。

「蘭。ちょっとそのカード見せて貰っても良い?」

「?、はい」

ポンッと手に置かれたカードをマジマジと見る。

色まで塗られてる。絵としては最高に綺麗な絵だけど…。

渡されたカードには王子がいばら姫にキスをするシーンが描かれていて、その裏を見ると、『装備カード 属性:闇 攻撃スキル:なし 防御スキル:誰もいないからやりたい放題(追加スキル:精神異常『睡眠』を回復) 逆スキル:なし』と書かれていた。

……やりたい放題って…。い、いや、間違いじゃない。間違いじゃないけど…くっ。

僕はそっと蘭にカードを返した。

だってこれ以上見てたら確実に声に出して笑ってしまう。…気になるは気になるんだけどね。

「装備決まった?」

三人は頷きカードを一枚自分の前に置いて、他のカードをテーブルの隅に寄せた。

「えーっと、蓮が『毒林檎』、蘭が『紡錘』、燐が『解呪薬』ね」

うん。三匹の子ブタに全く関係ない上に、装備品が皆おかしいよっ。

「じゃあ、今回のシナリオに従って、役職とアイテムを配布します」

鈴。エプロンのポケットに何を仕込んでるの?

あぁ、ちゃんとラミネートされてる…。芸が細かすぎる…。

蓮に長男と書かれた豚の男の子カードが、蘭に次男の豚の男の子カードが、燐に三男の男の子の豚のカードが渡された。

うわぁ…皆悪い顔してるなぁ…。

更に、蓮に『わら』、蘭に『木』、燐に『レンガ』のカードが渡された。

うんうん。三匹の子ブタにこれは必要なアイテムだよね。…………今僕無意識にアイテムが必要って言ってた…?

「じゃあ、ゲームスタートするよ~?」

『はーいっ』

鈴は三匹の子ブタの絵本を開いた。

「三匹の子ブタ、はじまりはじまり~。ある所に、養豚場から脱出に成功した三匹の子ブタがおりました。しかし、子ブタ達は四足歩行で逃げるしかないっ!ミッション開始っ!!『追っ手を振り切れっ!!』」

ミッションっ!?

ま、待って待って。養豚場に子ブタがいる所がやたらとリアルだけどそれはまぁいいよっ!?それより、ミッションって何っ!?

鈴がエプロンのポケットから四つ折りの紙を三枚取り出した。

「迷路だよ~。三枚くっつけてスタートからゴールまで行けたらミッションクリア。制限時間は十分。用意っ」

わたわたと三つ子が小箱からペンを取りだす。

「スタートっ!!」

ガサガサガサッ!

三つ子が開いた紙を見て、僕は素直に驚いた。

そこにはすっごく細かい迷路が書かれていたから。

鈴……作ったの?これ…。

「こっちっ?」

「ちがうよ、そっちはいきどまりっ」

「じゃあ、こっちならっ」

三つ子が真剣だ。…かく言う僕もちょっとその迷路が気になって上から覗き込む様に脳内で迷路を解いてみる。

…これ何通りかあるな…。成程。途中ゲット出来るアイテムを変えて行ける様にしてるのか…。

僕が通ったルートは『火縄銃』をゲット出来るルートらしい。

鈴の様子を見て見ると、三つ子がどんなルートでクリアするかをじっと見つめている。

そうこうしている間に三つ子はクリアした。

「おねえちゃん、くりあしたっ!」

「おめでとうっ!子ブタ、ミッションクリアっ!!アイテム『ローストチキン』をゲットしましたっ!!」

ぶくっ!く、くくくっ…三匹の子ブタで、燻された鶏肉ゲットしてどうするんだ、三つ子。

カードが手渡されて喜ぶ三つ子。

ちょっと楽しくなって来た。

「子ブタ達は何とか追ってから逃れ、魔女の館へ到着しました。そこで子ブタ達は二本足で歩行できる能力を手に入れた。これから子ブタ達の二足歩行豚生が始まりますっ!」

二足歩行豚生…人生の豚版かな?

「テレレレーン。三匹の子ブタは居住区へと移動し、自力で家を建てる事にしました。ですが、人間達は見慣れないその姿に恐怖し迫害を受けてしまいます…」

「棗兄ちゃん、はくがいってなに?」

「うぅーん…分かりやすく言えば、いじめられるって事かな?」

「ええーっ!?そんなのひどいよーっ!!」

「悲しいね…。でも三匹の子ブタは負けませんでしたっ!居住区がダメでも他で暮らす場所を作ろうっ!」

「おーっ!」

「でけでけでんっ!!三匹の子ブタはダンジョン『自分達だけの居住区への道』に入りましたっ!!」

うんっ!?ダンジョンっ!?

「三匹の子ブタは走ります。走って走りまくって、敵を発見しましたっ!敵は『狼』ですっ!戦闘しますかっ!?」

「もちろん、す」

「ちょっとまって。れん。いままでおねえちゃんは『せんとう』をするときに、こうやってきいてきたことなかったよ?」

「そーいえば…。もしかして、せんとうかいひできるかも?」

「ううん。もしかしたら『せっとく』できるかもっ!?」

説得?そんな機能まで…。

「せんとうしないっ。せっとくするっ!」

「戦闘を拒否っ!狼を説得したっ!「実は、さっき人間の居住区行ってきたんだけどさー。ちょっと二足歩行し慣れてるからってこっち見下してくんだぜ?あり得なくね?」「うわー。それマジ?お前ら俺にとっては食料だけど、マジ同情するわ。あー…居住区探してんだろ?落ち着くまで俺が用心棒やってやるよ」狼が仲間になったっ!てってれーっ!!」

え?ちょ、待って待って。狼仲間にしたら誰がこの話の敵になるのっ!?

「パーティ子豚はどんどん進み、居住区へ到達したっ!ダンジョンクリアっ!!」

「やったーっ!!」

「経験値592獲得っ!」

「やったぁっ!やくしょくレベルが1から12になったっ!」

……レベルまであるのか…。

「プレイヤー経験値1500獲得っ!!」

「わーいっ!ぼくたちのレベルが93になったっ!」

プレイヤーレベルまで…。

「セーブしますか?」

『するっ!』

三人が元気よく答えた。セーブ機能まで…。美鈴は満足気に笑うと、修正テープとマジックペンを取り出し、手早くプレイヤーカードのレベルを書きなおしていた。

ちょっと時間があるようなのでその隙に気になる事を聞いてみた。

「…ねぇ、蘭?」

「?」

「旭のプレイヤーレベルは?」

「239だよっ」

………やりこみ過ぎだろう…。

いや、楽しそうだけれども。

「ゲームを続けますか?」

『はいっ!』

「ダンジョンを抜けたパーティ子豚の面々。暫くは狼込みで毎日幸せに暮らしていました。勿論、お家も建てました。長男は藁の家を。次男は木の家を。三男はレンガの家を。しかし、そんなある日…。でけでけでんっ!!ミッション『迫りくる少女から逃げろっ!!』が開始っ!!」

迫りくる少女?そんなのいたかな?この話に。

所で鈴?そのエプロンのポケットの仕組み僕に教えてくれないかな?

どうしてそんなに次々と物が出てくるんだい?

鈴が取り出したのは鈴の両手よりは大きい箱。

それをずいっとまずは蓮の前に置いた。

「中に、わらと書かれたビー玉が10個入ってます。全て探し出したらクリア。制限時間は3分です。アイテムは一つだけ使用可能です。アイテムを使いますか?尚、次男三男と相談は出来ません」

「うむむー…」

蓮が真剣に悩んでいる。そんなに悩むことだろうか?

「アイテムつかうっ!『どくりんご』つかうっ!」

「アイテムの使用を受け付けました。アイテム使用っ!長男が毒林檎を取り出して、放り投げるっ!「おっ、いいもん持ってんじゃねーかっ」と狼が完食っ!狼毒にて死亡っ!!」

「えええええーっ!?」

「では、ミッション、スタートっ!!」

「ええええええええーーーっ!?」

急いで箱の蓋を開けて中をみて、蓮は更に目を丸くした。何事かと一緒になって覗くと、ビー玉には全て文字が書かれていて。『わい』だったり『われ』だったりと惑わす言葉が書かれている。箱一杯に詰まっているビー玉から10個を探し出すのは結構至難の技だ。

蓮が一つ、二つと見つけて行くが…残念。蓮。それ『わら』じゃなくて『わし』って書いてるよ…。

「3、…2、…1…、終了っ!!ミッション失敗っ!!マッチ売りの少女と赤ずきんちゃんが追い付いてしまったっ!!マッチ売りの少女は持っていたマッチに火をともし、藁の家へ投げたっ!!火が燃え盛る長男が藁の家から飛び出した所を赤ずきんちゃんが狩人から奪い取った武器で攻撃っ!戦闘開始っ!!」

「ええええっ!?えっとえっとっ!」

「赤ずきんちゃんからの攻撃っ!攻撃スキル『お祖母さんに渡すはずだったワイン』が発動っ!!」

「えっ?えっ?」

「続いて、マッチ売りの少女からの攻撃っ!!攻撃スキル『火の点ったマッチ』が発動っ!!二人の攻撃スキルが融合っ!!協力スキル『火炎瓶』が発動っ!!」

「うえっ!?すきる『しちにんのこびと』はつどうっ!!」

「状態異常スキル、『七人の小人』発動っ!白雪姫を守る七人の小人が二人の少女の足を抑えたっ!!少女の動きが『のんびり』になったっ!!」

多分、以前に白雪姫の話でもやったのかな?

アイテムが引き継がれてる…。

どうしよう。四人共真剣なんだろうけど面白すぎる…。

「そ、それから、『とうそう』すきる、はつどうっ!」

「逃走スキル発動。長男は逃げ出した。てれてれてん…。長男は次男の所へ逃げた。再ミッションっ!『迫りくる少女から逃げろっ!』発動っ!!」

…ストーリー的にはあってるよね…。

「はい。ルールは同じだよ~。ただし、二人になった分だけ箱が大きくなって、ビー玉も増えるよ~」

さっきよりも大きい箱をどっから取り出したのかででんと置いて、蓮と蘭の間に置いた。

「制限時間は3分。次男はアイテムを使用しますか?」

「するっ!あいてむ『つむ』はつどうっ!」

あ、馬鹿っ。カードの下の方に逆スキルって書いてただろうにっ。通常スキルの説明の下にミッションによっては逆スキルが発動って。多分このミッションは…。

「アイテム『紡錘』発動っ!!逆スキル発動っ!!糸が絡まり逆効果っ!!」

「ええっ!?」

「はい、蘭。手出して~」

両手を紐でぐるぐる巻きにされてしまったようだ。

「蓮は『わら』、蘭は『木』を探してね。では、ミッションスタートっ!!」

両手ぐるぐる巻き状態でこのミッションは辛い。案の定二人がかりでもミッションは失敗。そしてそのまま戦闘に入り…。

「赤ずきんちゃんからの攻撃っ!攻撃スキル『お祖母さんに渡すはずだったワイン』が発動っ!!」

あ、攻撃パターンは同じなんだね。これは鈴の優しさかな?

「えっと、えっとっ!」

「続いて、マッチ売りの少女からの攻撃っ!!攻撃スキル『火の点ったマッチ』が発動っ!!二人の攻撃スキルが融合っ!!協力スキル『火炎瓶』が発動っ!!」

「あいてむ『てんにょののろい』はつどうっ!!」

「アイテム『天女の呪い』発動っ!!しかし、既に状態異常がかかっている為、弾かれたっ!!」

「ふええっ!?と、『とうそう』すきる、はつどうっ!!」

これもまぁ、ストーリー通り、かな?敵は違うけど。

「逃走スキル発動。てれてれてん…。長男と次男は三男の所へ逃走。再ミッションっ!『迫りくる少女から逃げろっ!』発動っ!!」

やることは一緒らしい。更に大きな箱が三人の中心に置かれた。

「最後のチャンスだよ~。蓮は『わら』、蘭は『木』、燐は『レンガ』を探してね。燐はアイテムを使用しますか?」

「するっ!『かいじゅやく』つかうっ!」

「アイテム『解呪薬』使用しましたっ!二人の少女の呪いを解除っ!」

…まぁ、そうなるよね。折角呪いかけて足を遅らせたのに、親切に解除しちゃんだから…。

「二人の少女が急接近っ!!制限時間減少っ!!制限時間2分っ!!」

「ええええっ!?」

「ミッションスタートっ!!」

これは…ミッションクリア無理だね。

案の定、ミッションはクリア出来ず。

「火炎瓶が家の中に投げられる。そしてガチャリとドアに外から鍵がかけられた…。『養豚場から逃げるからこうなるのよ』『大人しく私達に売られてれば良かったものを』少女二人の笑い声が、外から聞こえた気がした…。ゲームオーバー…でれでれでん…」

……鈴。お兄ちゃん一言言ってもいいかな?

ちょっとその結末は色々トラウマになると思うんだ…。

「おにくになっちゃった…」

「おいしくいただかれちゃった…」

「ローストポークになっちゃった…」

しょんぼりしてるけど、ごめん。言ってる言葉がすっごく面白い…。

「だから、この三冊の組み合わせでいいの?って聞いたでしょう?本の組み合わせも大事なんだからね?」

『は~い…』

そんな深刻に返事しなくても…って言うか。あー…もう無理だよ。ごめん、鈴。

「あははっ!」

「ふみっ!?」

「あはははははっ、ご、ごめんっ。も、もうっ、むりっ」

笑いが止まらない。

僕大分頑張ったと思う。これだけ我慢したんだからっ。

僕は堪らなくなって鈴の側に歩み寄って抱きしめて床にごろんと転がった。

笑いが全然止まらない。

鈴が腕の中で、ハテナマークを浮かべている。それが可愛いけれど、面白くて笑ってしまう。

僕の笑いは続きをやりたくて、三つ子が鈴を奪還するまで収まる事はなかった。


その日の夜。

「あ、棗もみたんだ。鈴ちゃんの読み聞かせ。あれ、面白いよね、鴇兄さん」

「あれを読み聞かせと言って良い物か分からないけどな」

「鴇兄さんも知ってたんだ?」

「あぁ。一度やったこともある」

「へぇ。……今度僕もやらせてもらおうかな?」

「なら、今度は皆でやらせてもらおうよ」

僕達はひっそりとリビングで美鈴の読み聞かせに参加しようと画策したのだった…。


いや、読み聞かせだから。

ご本読んでのあれだから。

TRPG?いやいや、違いますよ。違いますとも。

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