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小話36 お姉ちゃんのお仕事(美鈴小学4年)

※ 本編の補足、本編に関係のない日常等々です。読まずとも問題ありません。

ただ、読んで貰えたら喜びます(笑)



階段の下。

旭が本を持ってうろうろしている。

家の階段は結構な高さがあるから旭一人だとまだ登れない。

多分美鈴に読んで貰いたくて、でも一階に美鈴がいなくてせめて階段下で美鈴が来るのを待っていたんだろう。

「旭。そんな所でどうした?」

理由は解ってる。が念の為に階段を降りながら尋ねると、

「おねえちゃんに『ほん』読んでもらうのー」

予想通りの答えが返ってきた。

旭は美鈴に懐いてる。きっと佳織母さん以上に懐いているし何なら美鈴を母親と見ていてもおかしくない。

そう言えば度々美鈴が旭と一緒に本を読んでいる時があったな…。

どんな風に読み聞かせしてるんだ?

ちょっと興味が沸く。

「旭。美鈴なら部屋にいるだろうから、連れてってやろうか?」

言うと、旭の目が光輝いた。

階段を降り切って旭を抱っこすると、そのまま階段を逆戻り。

「それ何の本だ?」

「ももたろうっ!」

「桃太郎か。そんな本家にあったか…?」

美鈴が買ったんだろうか?それとも佳織母さんが嫁入りの時に一緒に持って来た?

首を傾げつつ階段を登り切って、真っ直ぐ美鈴の部屋へ向かう。

「あのね、ときにぃちゃっ。きょうこそはっ、だんじょん、くりあするんだよっ!」

むふんっ!

胸を張って旭が言う。…が、すまない、旭。兄ちゃんには何の事だかさっぱり分からないぞ?

そのまま美鈴の部屋の前に立ち、ノックをすると、はーいって声と同時にドアが開いた。

「あれ?鴇お兄ちゃんに旭?どうしたの?」

「おねえちゃん、ごほんよんでっ!」

ずいっと差し出された…本と謎の一式。

「いいよ~。前回どこまでいったんだっけ~?」

旭を床に降ろすと美鈴が旭の頭を撫でながら問いかける。

「おばあさんが、『かわ』に『せんたく』しにいくための『せんたくいた』をげっとしたよっ!」

…………ん?

ちょっと待て?桃太郎だよな?

…………やばい。何かすっげー気になる…。

「美鈴。俺もちょっと聞いてっていいか?」

「え?うんっ、いいよ~っ」

許可をとって美鈴と旭が小さなテーブルの側にちょこんと座っているのを横目に俺は美鈴のベッドの上に寝転がってその光景を眺める事にした。

……待て待て待て。何だ?その小道具一式は?

厚紙に美鈴が絵を描いたのか?カードみたいにきっちり切り揃えられてる所がまた芸が細かい。

「おねえちゃん。きょうはね、おばあちゃんに『くさりかま』そうび、しようとおもうっ」

「鎖鎌かぁ。いいの~?旭。あれ森属性の武器だよ~」

「うんっ。これでいくっ!」

「分かった。じゃあ読むね」

……突っ込み所満載過ぎてどうしたらいいか分からん。…が、続きが気になるのも事実だから続きを聞く事にする。

「むか~しむかし。ある所におじいさん(Lv・17)とおばあさん(Lv・54)がおりました」

ジジババにレベルがあんのかよっ!?しかも爺さん弱ぇなっ!!

「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。てれてれてれ~♪『おばあさんがダンジョンへ入りました』………おばあさんが川へ続く道を歩いていると、そこへワイルドベアーが立ち塞がったっ!でけでけでんっ!!『バトル開始ですっ!』おばあさんの行動を選択してください」

「んむー……んむー……『たたかう』からの『ろーずちぇーん』をはつどうっ!」

「おばあさんの攻撃っ!スキル『ローズチェーン』発動っ!!ワイルドベアー150のダメージっ!残り50っ!」

「んむー……んむむー…」

「おおっとっ、おばあさんが悩んでいる間にワイルドベアーの攻撃っ!必殺技『ワイルドな爪』っ!!」

「わっ!た、たいへんっ!ぼうぎょすきる『洗濯ブロック』はつどうっ!」

「おばあさん、防御スキル『洗濯ブロック』を発動っ!ワイルドベアーの攻撃を防いだっ!」

「たたみかけるっ!こんどは『ですさいず』はつどうっ!」

「おばあさん、攻撃スキル『デスサイズ』発動っ!ワイルドベアー100のダメージ。てってれー。おばあさんはワイルドベアーを倒しました。経験値25獲得。アイテム『亀ジェット』を入手しました」

「やったーっ!かめじぇっとだーっ!」

…………桃太郎、何処行った……?

そっと美鈴が旭にメカで出来た亀(ジェット噴射付き)の絵が描かれたカードを渡した。

それを嬉しそうに受け取り、自分の手元に置く。

「『亀ジェット』を使いますか?」

「つかうっ!」

「おばあさんは『亀ジェット』を使った。竜宮城へ向かう事も出来る亀ジェットを使い、おばあさんは川への道のりをショートカット。おばあさんは川へ辿り着いた。ここでミッション発動。『ミッション1:流れくる巨大な桃をゲットせよっ!』洗濯をしていると川の上流から巨大な桃が流れてきたっ!手元にある装備から一つ選択してください」

旭が手元にあるカードを見て真剣に悩んでいる。

因みにどんな道具があるんだ?

『伝説の刀モモタロソード』『友の釣り竿』『洗濯板』『鎖鎌』『爺さんのふんどし』『投網』……ふんどし?あ、あぁ、そうか。洗濯に来てるんだ。ふんどしがあって当然だ。なんで俺今「何でふんどしなんて持ってんだよっ」て突っ込みを入れそうになったんだ?

……毒されてきてる…。

「えーっと……とあみ、かなぁ…?でも…ここは、くさりがまにするっ!」

「『鎖鎌』を装備でいいの?」

「うんっ。いいっ」

「セーブはしますか?」

セーブ機能まであるのかよ。

「しないっ!」

しないのか。旭、お前チャレンジャーだな。

「では、そのまま進みます」

「うんっ」

「おばあさんは鎖鎌を桃へ向かって投げつけた。鎖が桃へ巻き付き…」

「うんうんっ」

「なんとっ!鎌が桃へ突き刺さったっ!!『ぎゃああああああっ!!』桃の中から断末魔が聞こえ…。その後、おばあさんの行方を知るものは誰もいなかった…。ゲームオーバー。でれでれでん…♪」

「ええええっ!?なんでーっ!?どうしてーっ!?」

……一気にホラーになった。しかも桃太郎が刺された…。美鈴、確か桃の中には赤ん坊がいるはずじゃ…?断末魔って…。

「ほらー。だからセーブしなきゃ駄目なんだよ、旭ー」

「だ、だってー…いけるとおもったんだもん…」

「次はちゃんとセーブしようね」

「うんっ」

何て言えば良い?

突っ込みたい事は一杯ある。けどまず俺が確認したいのは…。

「なぁ、美鈴?」

「なぁに?鴇お兄ちゃん」

「これお前が作ったのか?」

「うん」

「……これは、桃太郎か?」

「うん」

「……そうか、なら何も言わない」

「うん?」

言わないっつーか、言えないが正しい。

それから暫く二人の桃太郎を眺めていたけれど、おばあさんが桃を救えたのはおばあさんのレベルが100とカンストになった時だった…。

途中、じれったくて旭を後ろからフォローしてしまったのは仕方ない事だと思う。


美鈴、お姉ちゃん業、頑張ってます!(笑)

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