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小話29 自慢の子供達

※ 本編の補足、本編に関係のない日常等々です。読まずとも問題ありません。

ただ、読んで貰えたら喜びます(笑)



「白鳥先輩~っ!」

名前を呼ばれて振り返る。

こんなに疲れて帰宅しようとしている私の足を止めるとは…良い度胸だよな。

爆弾テロとか起こしてくれやがった父の後始末。

事件当日は佳織や母がいたから何とか帰れたものの…後処理をしなければならない私はここ数日職場で寝泊まりしている。

それがようやっと目処が付きこうして家路につこうとしているというのに…。

「風間…。徹夜明けの頭に響く。でかい声だすな。喋るな。口を縫い止めてしまえ」

「え~、酷いっすよ~っ!こんなに先輩への愛で溢れてるのに~っ!」

「だから、うるせぇって…」

ガンガンと頭を叩かれてる。まずはその声を上げるのをやめてくれ。

「そんな事より、先輩っ!今日はもう帰れるんっすよねっ!?一緒に一杯行きませんかっ!?」

「断るっ!」

お前なんかと飲みに行くくらいなら早く帰って佳織を抱き締めたいっ!

……………頭の中に美鈴の自重してねって言葉が届いた気がした……。

まぁ、その本音を置いとくとしても、それはそれとして、もう何日も職場に缶詰にされてたんだ。

今日はとっとと帰って家で待ってる子供達と飯を食いたい。

まだ時間は18時前だ。今から帰れば確実に晩飯に間に合う。

さっさと帰るぞっ!

足を一階入口に向かって早足気味に動かす。

「で、何処に食いに行きます?」

「……お前、人の話聞いてたか?それとも態とそう言って息の根止められたいのか?」

いつの間にか隣に並んだ後輩に呆れ半分、殺意半分で言うとそいつは驚いて目を見開いた。

「え?オレ何か悪い事言いましたっ!?」

無自覚かよっ!!

こっちは腹の中に溜まりにたまった溜息を盛大に吐き出しているというのに、風間はきょとん顔だ。

「悪いが風間。私はここ数日缶詰め状態でやっと家に帰れるんだ。今日は何処にも寄るつもりはないんだよ。今日くらいは家族の顔を見て飯を食いたい」

「あ、あー…成程ー。そんじゃ、オレを家に招待してくださいっ!」

「……お前、ほんっと人の話聞かねぇなっ!?私は、家族水入らずで飯を食いたいんだよっ!!」

「あ、大丈夫っすっ!オレ、水はいらないんでっ!!」

……なぁ、誰か、私に教えてくれ。なんでこんな馬鹿がSPに、警察になれたんだ…?

「大体、お前だって久しぶりの帰宅だろ?家族に会いたくないのか?」

「……………それが、何か知らないんすけど、奥さんが滅茶苦茶怒ってて…」

それが原因か。しかも奥さんが怒ってる?十中八九お前が悪い。見てもいないし内容も知らんが断言出来る。

「ただ息子と遊んでただけなんすよ~?そん時ちょこーっと物を破壊しちゃっただけで~」

「ちょこっと物を破壊、ね。何壊したんだ?」

「義父母の仏壇っすっ!!」

「お前、一片死んで来い」

あぁ、もう、こいつは無視だ無視。

足を早め入口に到着するとそこには課長がこちらへ向かって手を振りながら歩いてきた。

……また面倒なのに捕まった。これで早く帰る事は叶わなくなった。内心でがっくりと肩を落としつつ私は課長が来るのを待った。

「白鳥。今帰りか?」

「はい。やっと事故処理から解放されましたので」

「ははっ。お前も災難だったなぁ」

「えぇ、とっても災難です。今もこうして帰れるというのに足を止められてますから」

この位の嫌味は許されるだろう。

「まぁ、そう言うな。ほら、これやるから機嫌直せ」

「?」

渡されたものを受け取る。紙袋?中身は?覗くと有名ケーキ店のロゴと箱が見えた。

「手土産の一つでも持ち帰れば、家族の機嫌も直るだろう?」

「あ、ありがとう、ございます」

そんなのより早く帰りたいと言う気持ちの方が強いが、確かに手土産があれば、特にケーキがあれば美鈴が喜ぶだろう。

一人娘の喜ぶ姿が目に浮かび、知らず微笑んでしまう。

「にしても、お前の所の子供も凄いよなぁ。爆弾を全て解除してしまうんだから」

「えっ!?そうなんすかっ!?」

「なんだ、お前。知らなかったのか?あの事件の時、大人達がいたフロアとゲストの子供達がいた場所は誤作動を起こした防火シャッターによって仕切られていたんだ。だが、爆弾の殆どは子供達がいたフロアにあった。それを全て解除したのがこいつの子供らだ」

あれは確かに私も驚いた。佳織も最初美鈴の下へ走ろうとしていたくらいだ。

けれどどうやらこれは佳織も美鈴も前世で知っていた知識らしく、一瞬焦っていたもののその後は冷静に対処していた。

「すっごいっすね…。白鳥先輩も規格外のお人だし。規格外からは規格外が産まれるんすねぇ~」

「そうそう。馬鹿から馬鹿が産まれるってのと同じだな」

「あははっ!そうっすねぇっ!」

…お前の事だ、お前の。でかかった言葉を飲みこむ。

「どっかで勘で動いてたのかと思ったんだがな~。あの爆弾調べてみたら、一つだけ二本コードを切った場所があったんだよ」

あぁ、美鈴が最後分からなくてもうどうしようもなくて二つ同時に切ったって言うあれか?

「あれで確信したね。お前の子らは確実に爆弾の解除方法が分かって動いてたんだなって」

「?、それはどう言う意味ですか?」

「その爆弾だけは『起爆コードが二本』あったんだ。どちらか一方だけを切っても駄目だったんだよ」

はっ!?

驚きに言葉が出なかった。課長の言葉が本当だとしたら、美鈴は凄く運が良かった事になる。もし一方だけしか切っていなかったら…。考えただけで怖くなる。

「先輩、先輩っ」

「あ、あぁ、なんだ?」

ついつい驚きに飛ばして意識を手元に戻して、聞き返すと。

「先輩の娘さんって確かオレのとこの息子と同い年っすよね?」

「ん?あー、確かそうだな。今小1だろう?」

「そうっす。…マジかー…。同い年なのにこうも違うんすねー…」

私の可愛くて賢い子供達をお前のガキと一緒にしないでくれるか?

と出掛けた言葉を必死に呑み込む。

「ま、お前んとこの馬鹿な息子には無理な芸当だっ!」

ハッハッハッ。

課長が風間の肩に腕を回して笑っている。そして、

「失礼っすねっ!家の息子はゲイじゃないっすよっ!」

見当違いの所で怒っている。風間、お前はまず日本語を学べ。…いや、違う。学んで来た筈なんだ。一体何処で落としてきた?

「風間ー…お前、しっかりしろよ?来月一杯で白鳥はいなくなるんだからな」

「えぇっ!?」

「おい…。ちゃんと朝礼で言っただろうが。来月で白鳥はここを辞めるって」

「うえぇっ!?」

目をまっ開いて私に抱き着いてくる。おいっ、私に男に抱き着かれて喜ぶ趣味はないっ!

「なんでなんすかっ!?白鳥先輩っ!どうしてなんすかっ!?オレを嫁に貰ってくれる話はどうなってるっすかっ!?」

「そんな話した覚えはないっ!!そもそもお前が課に配属になった時に私は既に既婚者だっ!!」

……いや、そうじゃない。そうじゃないだろう、しっかりしなくては…。

「実家を継ぐんだ。本当は継ぐつもりもなかったんだがな。跡取りの娘が成長するまでの代理だ」

「そ、そんな…。そんな小さな会社よりSPの方が稼げるっすよっ!ねっ、課長っ!!」

「お前は…。新聞もニュースも今回の事件が起きた理由も知らないのか…。いいか、風間。良く聞け。そして私が言った言葉を繰り返して脳内に叩き込め。白鳥はあの『白鳥財閥』の総帥の息子だ」

「シラトリザイバツのソウスイのむすこ…しらとりざいばつのそうすいの息子…白鳥ざいばつのそうすいの息子…白鳥財閥の総帥の息子っ!?」

認識すんのにどんだけ時間かかってんだっ!?

「すっげ金持ちじゃないっすかっ!?え?白鳥先輩、こんな金魚の糞みたいな給料の職場で何してんすか?」

「純粋に馬鹿丸出しな目でこっちを見るな。私は本来相続権を放棄してたんだよ。ただ色々あってな。母さんと娘の為に総帥代理をする事になったんだ」

「そうなるとここで働く余裕はなくなる。だから辞める。そう言う事だ。分かったか?風間」

「はいっ!分かりましたっ!そんで、先輩はいつ辞めるんすかっ?そもそも何で辞めるんすかっ!?オレとの愛の話はっ!?」

全ッ然分かってねぇなっ!!

私はゆっくりと課長の方へ視線を向けると、溜息と哀愁の視線を返された。

「………白鳥。こいつは私が責任持って仕事漬けにしといてやるから、もう帰れ」

「……感謝します。課長」

「あぁーっ!!白鳥せんぱーいっ!!」

何やら叫んでるがもう知らんっ!!

とっとと帰って佳織の顔見て癒されようっ!!

帰ったら子供達にケーキを渡して喜ぶ顔を見て、家族団欒を堪能して、とことん佳織に甘えようと心に決めて車に乗りこんだ。

ちょこちょこキャラのフラグ…

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