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小話21  美鈴の日本語講座

※ 本編の補足、本編に関係のない日常等々です。読まずとも問題ありません。

ただ、読んで貰えたら喜びます(笑)



来た…。ついに来たっ!

白鳥先輩が授業から抜けられず、僕と白鳥さんの二人きりがようやく来たっ!

「それじゃあ、始めましょうか。猪塚先輩」

『うんうんっ!』

図書室の一角に向き合って座る。

……つい何時のも癖で向き合って座っちゃったけど…隣に座れば良かったんじゃ…?

座ってからじゃもう遅いしっ!

しくしくしく…。心の中で逃したチャンスに盛大に泣いておこう。

「問題集、作って来たんでこれをやりましょう。とは言っても、先輩は多分、敬語と普段の言葉を覚え間違ってるだけでしょうから必要ないかも知れませんが」

うん?

目の前に差し出された問題集と書かれたプリントの束。

「ちゃんと文章を読みこんで、問題に答えてくれたら解ける筈ですよ~」

白鳥さんがにこっと微笑んだ。

そうだ。折角白鳥さんが時間を割いてくれたんだ。

ちゃんとやらなきゃ失礼だ。よしっ!

「それじゃあ時間計りますよー」

『え?時間?』

「少しでも遅れたら、問題追加ですよー。追加の問題は難しくなりますよー」

『え?え?』

「ではー、よーい、スタートっ!」

ピッ。

どっからストップウォッチがっ!?

いや、そんな事より急がなきゃっ!!

僕は鉛筆を手に取り、白鳥さんが作ってくれた問題に取り掛かる。

ガリガリと書いて、次の問題を解いて。

必死になって解いてる最中、そう言えば白鳥さんは何をしてるんだろうと視線だけを上にあげると、そこには同じく問題を解いている姿があった。

ふと僕の視線に気付いたのか白鳥さんが顔を上げる。

『どうかしました?』

イタリア語でどうした?何か分からない問題でもあったか?と聞いてくる白鳥さんに慌てて首を振り問題に戻る。

また問題を解いて、それでもやっぱり気になって白鳥さんに視線を向けると、小首を傾げてくる。

………可愛いな。

触っちゃ、駄目、かな…?


『駄目に決まってるだろ。何をふざけた事を言ってるんだ?猪塚』


『はいっ!すみませんっ!』

思わず立ち上がって頭を下げる。

「せ、先輩?どうかしたんですか?いきなり立ち上がって…?」

『え…?』

頭を上げてきょろきょろ周りを確認する。

あれ?白鳥先輩がいない?

今声がしたのに……幻聴?

『い、今、白鳥先輩の声が…?』

『棗お兄ちゃん?え?いませんよ?』

気のせい、だった…?

なんだ…良かった…。

ほっとして椅子にとんっと腰を落とす。

『ふふっ。おかしな先輩、ふふふっ』

笑われた。でもいっか。白鳥さん可愛いし。笑うと増々可愛いし。

『そ、そうかな…?』

『はい。ふふ。先輩っぽい。ふふふっ』

僕っぽい?

どう言う意味だろう?僕は普段どちらかと言えば怖いイメージで通ってるはず。

なのに、おかしな行動が僕っぽいってのはどう言う事?

分からず首を傾げて答えを求めるけど、白鳥さんはただ首を振って微笑むだけだった。

うむむ?

取りあえず問題に戻ろう。

かりかりかり…。

鉛筆が机を叩く音だけが響く。

……さっきの白鳥さんの笑い顔。可愛かったなぁ…。

もう一度、見れないかな…。

せめて…その可愛い手に触りたい…。

そっと手を伸ばしかけて。


『猪塚…?』


ビクゥッ!!

ま、また幻聴っ!?

声がっ!

…いや、きっと気の所為だ。これも気の所為だよっ!だって白鳥さんが反応してないっ!

そっと手を伸ばして、白鳥さんの手に触れようとした、その時。


「何をしているのかな?猪塚君?」


驚きに全身を跳ねさせた。

ギギギッと錆びついたロボットの様に声のした方を見ると、そこには白鳥先輩がいた。

今日、来れないって言ってたのに…。

「あれ?葵お兄ちゃん?どうしたの?」

「やぁ、鈴ちゃん。棗に頼まれてね。どうしても抜けられない授業があるから代わりに鈴ちゃんと一緒にいてあげてくれって」

白鳥先輩がにこにこと白鳥さんに微笑んでいる。

その微笑みがいつもと違うような…?

そもそも今、僕の事を猪塚君って言ってたような…?

「棗お兄ちゃん…。葵お兄ちゃんも優しい…。大好きっ!」

あぁっ!?白鳥さんが、先輩に抱き着いてるっ!!羨ましいっ!!

「僕も鈴ちゃんが大好きだよ。…さ、てと」

しかもそれを素直に受け入れて抱きしめてるっ!!ズルいっ!!

更に横の席に座るなんてっ!!うぅぅ…。

「鈴ちゃん。僕も一応参考書持って来たんだ。ちょっと覚えたい言語があって」

「フランス語?」

「そう。鈴ちゃんなら解ると思って。教えてくれる?」

「勿論、良いよっ」

白鳥先輩、イタリア語も覚えてフランス語も覚えるのっ!?

嘘だろ…。

驚いて口をぽっかり開けていると。

「…全く。まだ気付いてないのかい?僕は棗の双子の兄だよ。さっき鈴ちゃんも葵と呼んでいただろう」

「えっ!?双子っ!?」

まさかの返答が返って来てつい反射的に答えてしまった。

「…それすらも知らなかったのか」

呆れられた視線を向けられる。

その時、ピーッとストップウォッチが音を鳴らした。

「はい、終了ー。先輩、出来たー?」

「え?え?」

机の上の問題集を白鳥さんが持って行く。正直半分も出来てない。

それを見て白鳥さんがにっこりと微笑む。

「猪塚先輩。はいっ!追加ーっ!」

ドサドサドサッ!

目の前に山の様に積まれる問題集。

「…えーっと…」

これは一体…?

「さっき言ったじゃないですか。少しでも遅れたら追加するって。量は倍々で増えますよー」

「ええっ!?」

これの倍になるのっ!?

白鳥さん、にこやかに鬼だよっ!?

「はい。次行きますよ。制限時間はさっきと同じ。よーい、スタートーっ」

「うええっ!?」

慌てて目の前の問題集に取り掛かる。

「…馬鹿だねぇ。鈴ちゃんの見た目に騙されるからそうなるんだよ…」

白鳥葵先輩の言葉は、目の前の問題集に必死な僕には届かなかった…。

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