記憶2-1 ルート分岐 御曹司組
※ ifストーリーのルート分岐の一話です。下手なネタバレ、キャラに興味が無い人達は読み飛ばしオッケーです。尚、こちらは最初を少し乗せたお試し版ですので、全編が気になる方はアルファポリスさんの方へどうぞ(⌒∇⌒)
無限ー御曹司編ー
「…となるから、ここは白鳥と業務提携を結びたいんだが」
「うんうん。お断りですっ!」
「お、おまえ…」
お茶会と言う名の重役会議中。
ホテルの会議室を借りて、私と樹先輩、それから猪塚先輩と優兎くんの四人で、もう一度言いますが会議中です。
「俺が相手だから取りあえず断ってるんじゃないだろうな?」
「美鈴ちゃんがそんな事する訳ないでしょう。樹先輩の企画書穴だらけですよ。むしろ樹先輩こそ、相手が美鈴ちゃんなら少し融通利いてくれると思ってるんじゃないですか?」
「うっ…そんな事は…」
「樹先輩。相変わらず企画書作るの下手くそですよね~。上に立つからって立場に甘んじてたからそうなるんですよ」
…うん。優兎くんの毒舌絶好調。
中学卒業してからこっち、そのレベルがどんどん上がっている気がする。
誰に似たんだろう………私か?
「あ、そうだ。美鈴ちゃん。今日、ここに向かってる途中で美味しそうなクレープ屋さんがあったから買って来たんだ。後で食べようね?」
「食べるっ!ありがとう、優兎くん。お礼に私がお茶淹れるね」
「うん。ありがとう」
「白鳥さんっ!ぼ、僕もご相伴に預かりたいんだけどっ!」
「あ、すみません。猪塚先輩。美鈴ちゃんの為にもご遠慮下さい」
「ず、ズりぃぞぉ、花島ぁ…しくしくしく」
猪塚先輩、相変わらずちょいちょい言葉がきつくなるなぁ。目つきも相変わらずだから結構怖いよね。
「お前ら。真面目に話し合えっての。美鈴も。何処が悪いのかはっきり言えよ。じゃないと解らん」
「え?はっきり言っていいんですか?」
え?言っちゃうよ?赤裸々に全てぶちまけちゃうよ?
「……オブラートを希望する」
挙手して言う樹先輩。潔いんだか、情けないんだか。
まぁ、これが樹先輩か。
それじゃあ、オブラートに包んで…。
「まず、この人員。こんな人数でこんな改革とか馬鹿としか言いようがないですね。次に」
「待て待て待てっ!全然オブラートに包んでないだろっ」
「えっ!?もっと包むのっ?じゃあもう言う事ないんだけどっ?」
わいわいがやがやと騒いでの会議。
これももう日常となってきたなぁ~。
正直私達大学に行ってる時間よりこうして会議している時間の方が多いと思うの。
まぁ、何気に皆真面目で有能だから決める所はバシッと決めてるんだけどね。
さて、そろそろ皆が騒ぎ疲れて、会議に集中し始める頃かな。
椅子に深く座り直して、いざ、会議っ。
コンコン。ガチャッ。
「申し訳ありません。遅れましたわっ」
「美鈴ちゃん、お待たせーっ」
桃と華菜ちゃんがドアを開けて飛び込んできた。
「二人共、大学の講義お疲れ様」
「大丈夫だよ。まだ樹先輩の戯言だけで本題は全然進んでないから」
私と優兎くんがにっこりと笑いながら言うと、二人は安心したと息をつく。
「おい、花島。戯言ってなんだ、戯言って」
「そんな事より、優兎さん。その、私のダーリンは…」
「え?あぁ、あそこにいるよ。桃ちゃん来るまで出来る限り綺麗に見える角度を探すそうだよ」
……全員の視線が会議室の窓の方へと移動した。
「こうか…いや、違うな。ここを、こうっ!」
…ねぇー。巳華院くんってこんなんだっけー?
「いや、やっぱり、こうでこうでこうっ!」
巳華院くんってこんなんだったけーっ!?
私の知ってる巳華院くんとは違い過ぎて、視線が彷徨うーっ!
会議の間中ああやってマッスルポーズを探してるんだものーっ!!
「ダーリンっ!素敵ですわっ!」
「ッ!?、あぁ、ハニーっ!漸く僕の所へ戻って来てくれたんだねっ!」
「ダーリンっ!お待たせして申し訳ありませんでしたっ!」
「いいんだよ、ハニーっ!さぁ、その可愛らしい瞳で僕の筋肉を見て、焼きつけてくれっ!」
「勿論ですわっ!ダーリンっ!!」
「巳華院くんってこんなんだっけーっ!?」
思わず叫んじゃうよね。これ、仕方ないよねっ!?
「美鈴ちゃん。諦めって大事だよ」
「…うん。僕もそう思う」
「俺も」
皆して頷かないでよ。でも、こう、ね?前世では桃だって儚い病弱のキャラだったのよ?それが、さ…それがさぁっ…しくしくしく…。
「……おいっ。いい加減会議に戻るぞっ!」
「樹先輩…。そう言う所だけ私は尊敬します」
会話を戻してくれる大事な突っ込み要員。こう言う時は感謝しかない。
言われた皆は席に着く。
華菜ちゃんと実は一緒に来ていた逢坂くんは壁際に椅子を置いて私達の会議を傍聴する形をとっている。何故かと言うと二人はまだ役職についていない普通の大学生だから。勉強の為に来ている様なものだからね。
「さて。じゃあ、本題に入りましょうか。猪塚先輩、説明をお願い出来ますか。後、華菜ちゃん。悪いんだけど皆にそこの書類配ってくれるかな」
二人は頷いて行動に移る。
手元に来た書類を見て、私はペンを持ち問題点を丸付けしていく。
こう見るとあんまり喜ばしい状況ではないな。と言うかむしろ、全体的にヤバめだ。白鳥財閥以外だけど。
「まずハッキングをした会社は、『SPICA』と言います」
「スピカ…聞いた事ないな」
「…確か創設者が、日本人の海外企業じゃなかったっけ?」
「うん。でもそんなに大きな企業じゃ無かったよね?一応、うちのコンツェルンの提携企業だったはず」
「優兎くんの所の傘下、って感じではなかったよね?」
「…あそこはあくまでも提携を望んできていたからね。何度か倒産の危機はあったみたいだけど、何故かいつも挽回して来たんだ。…お祖母様が前に、挽回の仕方がおかしいと首を捻っていたんだけど、中々正体を掴めないって言っていた」
「……猪塚の所はどうなんだ?」
「こっちも正体を探ってはいるのですが、何故か何も情報が出て来ないんですよ」
情報が出て来ない、か。
白鳥だって、技術者のレベルは高い方だけど、樹や猪塚、FIだって負けてはいないはずだ。
「…正直、うちの企業も自分達の情報を守る事は出来ても、相手を探りだす事に手を回せなくなってる」
「白鳥の技術でも、か」
「…私達も違う観点で揺さぶりをかけてみようと思ったのですが」
「SPICAと言う企業は、どうにも表向きは健全な姿しか見せておらず、その健全な姿勢は他の企業の手本となる程らしく、私の両親達も講演会を自ら進んで見に行ってたりもする」
「そうなんだ…」
さて、どうしたものか。
コンコンとペンで机を叩く。
「…ねぇ、猪塚先輩。先輩の所でハッキングされた時に奪われた情報はなんだったの?新商品のかの情報?」
「…それが、従業員の個人情報でした」
「個人情報?それは有能な技術者とかのか?」
「いえ。それが、配った書類にも書いてますが、技術者とかではないんです。位とかも関係なさそうで」
私達は自然と書類に視線が戻る。
数枚捲ると確かにそこに奪われた従業員の情報が書かれている。
確かに、アルバイトから役職持ちまで幅広く記されていた。
「何か共通点でもあるの?」
「そう思って探ってみたのですが、これと言って大きな共通点はないんです」
「確かに皆生まれた場所も、経歴も、年も、性別も全てバラバラだな」
「……この人達に会って話とかは?」
「しました。ですが、特に変わった感じは…」
「……ねぇ、美鈴ちゃん。ちょっと良いかな?」
今まで会議の内容を紙に書き込んでいた華菜ちゃんが挙手をしたので、私は頷いて言葉を待つ。
「共通点、と言っていいのか解らないけど、この人とこの人。見覚えがあるの」
「見覚え?」
「うん。えっとちょっと待ってね」
華菜ちゃんがノートパソコンを開いて手早く操作する。
そして、それを私の前まで持って来た。
「……『●月×日、死亡と思われていた有名俳優の帰還。奇跡は起きた』…ってこの記事、いつの?大分古いみたいだけど」
「今から50年前の記事だよ」
「50年前っ!?」
「それからこっちの記事。『▲月×日、家屋全焼の中、無事だったのは一人だけ。今尚意識不明』…この記事も古いね」
「今から150年前の記事だよ」
「150年っ!?」
「…どっちもその書類に載ってる顔写真と似てない?」
見比べてみると、確かにそっくりだ。瓜二つ以上に似ている。
「ちょっと、俺にも見せろ」
「華菜ちゃん。これプロジェクターに」
「解った」
華菜ちゃんと逢坂くんが二人で手早くプロジェクターに接続し、スクリーンに映し出してくれる。
それを見て、樹先輩も猪塚先輩も優兎くんも息を飲んだ。
だよね。…ちょっと似過ぎだよね。本人と言っても良い程に。
「…おかしいだろ。年齢も姿形もそのままなんて…」
「孫とか血族の線はないんですか?」
「…あったとしても、ここまで似るか?」
「双子だってこんなに似る事はないぞ」
「なら記事の方が合成だった可能性は?」
「なくはないと思うけど、でもそれを合成して誰に得があるの?有名俳優は得があるかもだけど、もう一人は?」
…段々気味が悪くなって来た。
これ下手すると、ヤバい情報がモリッと現れるんじゃ…。
「…どうする美鈴」
「…一先ず華菜ちゃんにはこの猪塚先輩のくれた書類に載っている人物を全て洗いだして貰おう」
「うんっ。解った」
「そして私達は、従業員を守らなきゃいけない。信用出来る人間だけを、自分の所ではなく、他の所へ派遣しよう」
「と言うと?」
優兎くんが小首を傾げる。
…うん。相変わらず可愛いな。……っといけない説明説明。
「私達が自分の所でどうにか対処しようとした所で、社内にいる人間がどう『SPICA』の人間と関わっているか解らない。なら、全く関係のない所に派遣して情報を回収し、尚且つ防御プログラムを組み立てて貰う」
「成程」
「とは言っても、猪塚先輩の所みたいに既に情報を抜き取られてる所もあるから、その人達を受け入れるのも勇気がいるし……うん。決めた。白鳥からはお兄ちゃん達を派遣するね」
『えっ!?』
「その代わり、皆は暫く白鳥財閥に来てね」
にっこり。
「……えっと…」
「……せめて、俺の所はせめて葵で…」
「棗先輩に殺され…」
「皆来て欲しい人が決まってるみたいだから、優兎くんの所には鴇お兄ちゃんを派遣するね」
にこにこ。
笑って反対を阻止。
「一先ず解散ね。それぞれ準備もあるだろうし。私もお兄ちゃん達に知らせる必要もあるしね。…でも、お兄ちゃん達の事だから…」
「……おい、その間、止めろ」
「ふみみ~♪」
「完全に誤魔化してるだろっ!おい、美鈴っ!」
「さー解散かいさーん」
明るく言うと、ドアがノックされて直ぐにガチャリと開いた。
現れたのは、金色、金色、赤。赤…正しくは蘇芳色。
「さぁ、行こうか。龍也」
「へ?葵?」
「大体の話は聞いてたから。猪塚、とっとと動いて」
「せ、先輩…?」
「優兎。行くぞ」
「行くのはいいけど、日帰り出来るかなぁ」
お兄ちゃん達控えてくれてたんだね~。
樹先輩は葵お兄ちゃんに襟首掴まれて、猪塚先輩は棗お兄ちゃんに蹴られて、優兎くんは鴇お兄ちゃんと並んで会議室を出て行った。
「美鈴ちゃん。お茶でも入れようか?」
「ありがとー」
うぅ~ん。
解らない事が多いけど、これってゲームの設定と関係あるのかな?
会議が終わってイチャイチャしている桃と巳華院くんを眺めつつぼんやりと考える。
高校卒業して乙女ゲームが終わったと思ってたのに、実は開始だったと知った。
とは言え、私は誰を選ぶことも出来なかった。
ママも、「そうよねぇ」と納得?はしている。
そもそも男性恐怖症の私が、男性を選ぶとかハードル高過ぎて見えないんだけど…。
……でも立場的にはそうもいかないんだよね…。
白鳥を率いる者として、例えこの立場を譲るにしても、私が総帥だったって事に違いはない。
その立場は取り扱いが難しいと思う。
なんて、考えてたら大学に入学して二か月は経過していた。
(…今の所全く変化はないんだけどね…)
平和な毎日が続いている。
今日だって会議があったとしても、結局はいつものメンバーから数人抜けた程度で日々としては変わりない。
「美鈴ちゃん。お待たせーっ」
「ありがとう、華菜ちゃん」
華菜ちゃんからお茶を貰って一口含んで、噴き出す。
「激まずっ!?えっ!?これなにっ!?これ何っ!?」
「あー、やっぱり不味かったかー。見よう見まねでお茶って作れるかと思ったんだけどなー」
「えっ!?ちょっと待ってっ!?華菜ちゃん、私で実験したっ!?」
「愛の試練だよっ!美鈴ちゃんっ!」
「マジかーっ。なら飲むしかないっ!」
「待てっ!落ち着け白鳥っ!華菜の為に命を張るなっ!」
こんな風にわいわい騒いだ毎日が終わりを迎えたのは、数日後の事だった。
相変わらず白鳥財閥のビルの最上階の社長室で仕事をしていると、
「手紙?」
「うん。同じ大学の人から渡されたの」
「何だ?いつも通りラブレターか何かか?」
と樹先輩に言われたけれど、こんな茶封筒にラブレター入れる?
むしろ果たし状と言われた方がしっくりくるけど…。
なんだろう?
茶封筒の中からその紙を取り出してザッと内容を読みこむ。
樹先輩、猪塚先輩、優兎くんも同じく社長室でノーパソを持ち込んで仕事をしていたんだけど、一時中断して私の言葉を待っている。
「……『白鳥の椅子を譲れ。さもなければ、お前の秘密を世界に発信させる』ですって…」
「脅迫文じゃねぇか」
「白鳥の椅子…我が家で使っている椅子で良いのかな?うぅん…用途を教えてくれないと最適な椅子が…」
「美鈴ちゃん、そこじゃないと思うの」
「ふみ?じゃあ、私の秘密?…私の秘密って何かな?思い当たる節がまるでないんだけど」
前世の事以外…と言いたい所だけどこれだってママも知ってるし、お兄ちゃん達だって知ってるっぽいし、それを世間に言った所で誰も信じないんじゃない?
「……全く思い付かないんだけど…」
「だよねぇ。何なら樹先輩の方が叩けば埃でそうだよね」
「ねぇよ。その埃ごとお前らが叩き出しただろうが」
「確かに。…ふみ~?どうする?この脅迫文」
「燃やしちゃう?」
「逆探知かけてみる?」
「どうやって?」
んー…どうしてくれようねー…おりおり…。
「そもそも大学から来たって事は大学生の誰かって事か?」
そこだけには限らないと思うけどー…おりおり…。
「悪戯かもしれないですよ」
その説が高いかなー…おりおり…。
「美鈴ちゃんはどう思うの?」
「出来たー。紙飛行機ーっ」
ていっ。
おおー、いい滑空スタイルである。羽の部分もう少し角度つけたら良かったかなぁ?
「……美鈴ちゃんの中ではどうでも良いみたいです」
「いや。優兎くん。どうでも良くはなってないけどね。でも、こんなの日常茶飯事じゃない?こう言う職に付いてる限りさ?」
「それはまぁ確かに」
「こっちに上がって来て無いだけで下で処理されてるの沢山あると思うよ?」
「それはそうだけどな、美鈴。脅迫文が来てるって事を伝える前に紙飛行機にするな」
「あれ?鴇お兄ちゃん、いつの間に」
「たった今入った所だ。紙飛行機が真ん前に落ちてたんでな」
鴇お兄ちゃんの手には紙飛行機とファイルが一冊。
「鈴。お待たせ」
「鈴ちゃん。ファイルまとめてきたよ」
お兄ちゃん達も来てくれたみたいだ。
今回は時間も時間なので、皆で白鳥家へ帰りそこの和室で会議となった。桃と巳華院くんも途中で回収済みだ。
何でかと言うと、白鳥邸は真珠さんや金山さん、あと樹先輩所の銀川さん、更に桃の所の銅本さんが加われば下手な密室より安心だからである。
和室へ入って、お茶の用意をしてから緊急作戦会議が開始した。
「まずSPICAが狙っていたものだが、奴らの狙いは『企業乗っ取り』だな」
「乗っ取り?その割には狙っていたのは個人情報じゃなかった?」
「……これを見ろ」
差し出されたのは以前見た情報だ。華菜ちゃんが持っていた情報もちゃんと合わせて書かれている。
「これは前に見たけど、これが?」
問うと鴇お兄ちゃんはもう一枚写真を出した。
「これは?」
「つい昨日撮った写真だ。良く見てみろ」
良く?……嘘っ。
「えっ!?ちょっと待ってっ!?同じ顔した人が二人写ってるっ!?」
私の言葉に他の皆も身を乗り出してその写真を見て同じく驚く。
「双子…ですの?」
「そう、思うだろ?けど、これを見たらその言葉も出なくなるぞ。…美鈴、綾小路。結構グロい写真だ。覚悟してみろよ」
「グロい?…うん。解った。いいよ、鴇お兄ちゃん」
グッと覚悟して、鴇お兄ちゃんからまた写真を受け取ると、そこに写っていたのは、
「ひっ!?」
さっきまで写真に写っていた一人の体がどろどろと溶けている姿だった。
全員が同じく驚き口を抑える。それだけ気持ちの悪い写真だ。
鴇お兄ちゃんは素早くその写真を裏返す。
「こ、れは一体…?」
巳華院くんが桃を慰めるように肩を抱いて、皆の代表で声をかける。
「恐らくだが…人間のクローンを作ろうとしたんだろう。…それのなれの果てだ」
あぁ、成程。
それなら納得だ。
だってクローンを作る技術が確立しているなら、死なない人間を作る事が可能だ。捨て駒にする事だって出来るだろう。
「これを作ってるのがSPICAって事だね?」
「そうだ。この会社は、一度目の倒産仕掛けた時、闇社会に手を出した。そこで当時の社長は自分の家族を売り得た金でクローンを生み出す研究を始めた。闇社会で臓器を売り、表向きには人材派遣会社として名を上げてきた」
「…頭の中にICチップでも入ってるのかな?脳内だけ機械ならデータは容量さえ大きければ入るものね。あぁ、そうか。その為に企業へのスパイなのね。個人情報を盗み、殺しても構わない人を選びその人を誘拐して知識を奪う。またはその人の生涯を奪うのね」
「やることが屑だな」
「問題はやっている事が巧妙な事だ。俺達白鳥財閥は美鈴と俺が作り上げたセキュリティシステムがある。これはどんな方向からの介入も許さないものだ。だがお前達の所には…」
「ないよね。僕は美鈴ちゃんがやっているのを見て、どうにかこうにか作り上げただけで穴はまだあるし」
「俺達はそれすらもないな」
「と言うか、流石に白鳥さんレベルの知識に僕達は追い付いていないから」
「王子。そもそもそのシステムの概要ですが、私達に売って貰う事は出来るのでしょうか?」
「んー、多分無理…と言うか、ねぇ、鴇お兄ちゃん」
「だな。あれは俺と美鈴がセキュリティシステムを親父に習ってた時に、改良合戦して出来上がったもんだから」
「正直あの時何をどうしたか、全く覚えてないんだよねー」
「横でそれを見ていた僕達だって正直さっぱりだったよ。ね、棗」
「うん。あの時の二人は何話しかけても答えてくれなかったしね」
あははは…。
だって、鴇お兄ちゃんが改良案出してきたから、それよりもっと凄いプログラム作って埋めたくなるじゃない?
そしてそれは今でもこっそり続いてて。……てへっ?
だから一応毎日進化してるのよねー。因みにそのセキュリティで守ってるのは、財閥で働く皆の個人情報です。会社は私達上の人間が頑張ればどうにか保てるけど、信頼はどうにもならないじゃない?第一優先で守るものは従業員です。
勿論システムとか企業秘密とかもあるし、そっちのセキュリティも気を抜いてはいないんだけどね。そっちはお兄ちゃん達に任せてるの。あと誠パパとかにね。ママは…うん、こう言う事に関しては無理だねっ!
「さて、美鈴。どうする?」
「うーん…そうだね」
技術提供したい所なんだけど…こればっかりは私の脳内にあるし。
それをファイルにした所で直ぐに実行出来るかどうか。
「一番いいのは、SPICAの裏稼業暴きだして潰すってのが一番なんだろうけど。まず今は働く人を守る事を優先しないとね」
「どうするの?美鈴ちゃん」
優兎くんの言葉に「ちょっと待ってね」と答えつつ、脳内を整理する。
一番はきっと私が樹と猪塚に勤めて、セキュリティをどうにかするって事なんだろうけど。
でもなぁ…それだけだと、根本の解決にはならないんだよね。
出来れば相手方を焦られて、おびきだしたい所で。
で尚且つ、企業を守るにはー…?
「あー…そっか。うん。その手があったか」
「……鈴ちゃん?」
「ちょっと待って?鈴がそう言う時って昔から…」
棗お兄ちゃんが慌ててる?
何でかは解らないけど、私は今考えてた答えをポロッと口にした。
「私が嫁に行けばいいのよね」
「駄目ーっ!!」
「絶対に駄目っ!!」
間髪入れずに却下が入った。
「…確かに、美鈴が嫁に行けば、相手の意表を突きつつセキュリティを上げる事が出来るな。美鈴がいけなかった場所に俺が行けばそっちも守れて尚且つ情報も手に入れやすい」
「ちょっと待ってよ、兄さんっ!それって政略結婚って事でしょっ!?」
「そんなの許せる訳ないって、兄さんっ!」
「大丈夫だ。美鈴が嫌なら即離婚させるから安心しろ」
「…それなら、まぁ…」
「離婚させて×が付いても、鈴ちゃんが傷つかないなら…」
「何で離婚前提で話されてるんだ?」
「半分以上は樹先輩の所為ですよ」
「一割は猪塚のせいだろうが」
「白鳥さんと、結婚っ!!」
何やら盛り上がってますが、さて。
私はどこに嫁に行くのが一番なのかな?
樹先輩の所は多分ネームバリューとして一番相手を誘いやすいよね。
猪塚先輩の所は一番危ないからセキュリティ強化を優先しないといけない。
優兎くんの所は本社がこっちにないからね。相手を一番探りやすい。
「美鈴。誰を選ぶんだ?」
「んー…じゃあ」
私は考えに考えた末、あの人を選んだ。
御曹司組の美鈴は…色々大変(笑)




