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第三十話 真の本編

ママは一体何を言ってるんだろう?

頭の中が混乱してる。今、ママは『輝け青春☆エイト学園高等部』がファンディスクだったって言った?

私が真っ直ぐママを見つめると、ママは頷き話を進めた。

「前世で貴女がプレイしたのはファンディスクの方だったのよ。このゲームの本編は『無限―エイト―』って言うPCでのみ販売された年齢制限付きのソフトなの」

「PC…パソコン専用ソフト…?」

「そう。本来ならヒロインの貴女に私が情報を与えるのはとても危険なのよ。でも、美鈴がこの先の話を知らないと言うのなら話は別だわ。良く聞きなさい、美鈴。


この『無限―エイト―』と言うゲームは、PCで発売された18禁ゲームよ。18禁なのは、ベッドシーンがあるとかエロいシーンがあるから、ってだけではないの。18禁の年齢制限の意味はいくつもあるでしょう?その内の一つ。残酷なシーンがあるからって意味もこのゲームにはあるのよ。美鈴が前世私に買って来てくれたゲームはフルボイス、フルリメイクの機種移植版だったのよ。

ファンディスクだけやった美鈴はきっとありきたりな乙女ゲームに感じたでしょう?でもね?このゲームは乙女ゲームを盛り立てた伝説的ゲームと言われていたの。私達の年齢の女子ゲーマーには神ゲーと言われてるくらいでね。『無限―エイト―』の発売元である会社はこれで荒稼ぎをして、ファンディスクを出すに至ったわ。そもそも、『無限―エイト―』は発売する時に大きな売り文句があったのよ。それが、


―――『貴女が望む道はどれ?貴女だけの愛を見つけろ』


だったの。このキャッチコピーで、異例の四種同時リリースって言われた乙女ゲームだったのよ。その四種と言うのはね?


一つ目は――『兄妹の禁じられた恋。貴女は愛しい彼との切ない物語を読み続けられるのかっ!?【『無限―エイト―』~白鳥家編~】』と言う王道ノベル系乙女ゲーム。


二つ目は――『戦いの中に芽生えた恋。貴女は彼との愛を信じ戦い続ける事が出来るのかっ!?【『無限―エイト―』~御三家編~】』と言うやり込みRPG系乙女ゲーム。


三つ目は――『友情が進化した恋。貴女は彼と二人、全ての謎を解き明かす事が出来るかっ!?【『無限―エイト―』~御曹司編~】』と言う謎解きパズル系乙女ゲーム。


四つ目は――『立場を越えた恋。貴女は彼を最後まで支え、見守る事が出来るかっ!?【『無限―エイト―』~年下組編~】』と言うアイドル育成リズム系乙女ゲーム。


以上の四種よ。

全て、ゲーム性の違う同じ世界感の乙女ゲームは、その当時それぞれ自分にあった乙女ゲームが出来るとゲーマーに一躍有名となった隠れた人気を博したゲームとなったのよ。これが男性も楽しんでやれるゲームが多くて男性ファンも多くいたわ。

私もやりたくて高校卒業したら直ぐに購入したもの。最初に買ったのは年下組編だったけどね。PCでのリズムゲームでしかも乙女ゲームでしょう?それがすっごく新鮮でね。ってそれはまぁいいわ。

タイトルで大体誰が何処に出てくるか分かるでしょう?

そう。


白鳥家編では、白鳥鴇、葵、棗。

御三家編では、天川透馬、丑而摩大地、嵯峨子奏輔。

御曹司編では、樹龍也、猪塚要、花島優兎。

年下組では、申護持陸実、海里、空良。


そして以上のタイトルに、主人公の男友達枠で出て来ていたキャラがいるの。


白鳥家編では、風間犬太。

御三家編では、近江虎太郎。

御曹司編では、巳華院綺麗。

年下組編では、未正宗。


の四人ね。このキャラクター達は、本当にキャラが立っていて攻略対象にならないなんて勿体ないーっ!って騒がれていたわ。

それに続編がないのも勿体ないっ!ともね。

本当に人気があったのよ。でも、『無限―エイト―』はそれだけで各々話が完成されていた。続編が出せる様な内容じゃなかったの。

そこで考えたゲーム開発者が知恵を捻って絞りだして開発されたのが、『輝け青春☆エイト学園高等部』よ。後日談が書けないなら、ゲーム前に戻ればいいってね。

『もしもこの攻略対象キャラ達がヒロインと高校時代に出会っていたら?』のコンセプトで出されたのよ。皆少しずつ若返らせられてね。全員がどうやって生きてきたのかを少しずつ盛り込んでるの。そこは後で必要な部分だけ詳しく説明するとして。

男友達枠で出て来た彼らは四従士って言われてるでしょう?今現実には四聖と付き合っているからとなってるけれど、ゲームの中ではヒロインの男友達でヒロインにまるで執事の様に従い動いているからなのよ。

そして、四聖。彼女達も続編の方で日の目を浴びたキャラだわ。本来の『無限―エイト―』には出て来ていないキャラ達。だけど彼女達が続編で登場したのは意味があるわ。

彼女達の立ち位置。それはね。


『無限―エイト―』のヒロイン候補


って事よ。ゲーム製作中。当初の設定では各それぞれのストーリーに別の主人公がつく筈だった。それが彼女達よ。けれど、同じ世界感で同じ目線の話なのにヒロインが違うのはおかしいと話し合いの結果そうなり、彼女達の代わりに美鈴と言うヒロインが作られた。

けれど、キャラ案自体は勿体なかったんでしょうね。ならば、続編でライバルとして出してしまおう。となるとライバルキャラが活かせるのはどんなゲーム?同じパターンで作ったら、それはそれでつまらない。そうだ、パラメータ系にしよう。って流れがあったって情報誌には書いてあったわ。

彼女達は本来はこうなっていたの。


白鳥家編では、向井円。

御三家編では、新田愛奈。

御曹司編では、綾小路桃。

年下組編では、一之瀬夢子。


この組み合わせで、彼女達は本来主人公になるはずだった。けれど、白鳥美鈴と言うヒロインを作った手前、メインストーリーのキャラとくっつける訳には行かない。そして何より、四従士と言うキャラが増えたのだからライバルならばそこを競わせた方が良いだろう。プレイヤーに分かりやすい形を考えて、似たキャラ同士をくっつけるようにしよう。

そこで似たキャラ同士をくっつける事になった組み合わせが、美鈴が知っているファンディスクでの組み合わせよ。

現実では、やっぱり本来の行くべきストーリーのキャラクターとその従士と組み合わさったみたいだけどね。


―――ここまでは、理解出来たかしら?美鈴」


……理解出来たかと言われると、正直まだ全然脳味噌がついていっていない。

待って、待って待って。

要するに。私はまだゲーム期間から抜け出してないって事?そう言う事?

「私、まだ男の人に狙われる日々?」

「そうよ。それどころか、今までよりも、もっとハードに命を狙われ始めるわ」

「命っ!?」

「えぇ。言ったでしょう?残酷なシーンがあるから18禁なんだって。これからのストーリーの事は口に出来ないわ。でも過去のストーリーの事なら話せる。美鈴。貴女、普通のパラメータ学園乙女ゲームの割に命の危険が多いとは思わなかった?」

「え?」

「普通に考えて、乙女ゲームの一部に爆弾解除なんてそうそうないでしょう」

「それは、確かに…」

「ファンディスクだからこそ、全ての要素を少しずつ交えているのよ。本編に通じる様に、少しずつ少しずつ。解らないように混ぜ合わせられてるの。美鈴。ママはね?


貴女が前世の記憶を持っていると知った時、初めてヤバいと思ったのよ。

本編ストーリーに進めば、美鈴は確実に命の危機にさらされると私は知っていたから。ただでさえそんな状況が待ち受けているのに、男性恐怖症と言うトラウマまでついてきている。正直本気でヤバいと思ったわね。

だってそうでしょう?美鈴が誰ともくっつかないで本編の世界にまで男性恐怖症のまま進んだら誰にも助けを求められずに一人死んでしまう。そんなの―――絶対に許されないわ。

だから賭けることにしたのよ。美鈴がファンディスクのストーリーが展開している内で誰かとくっつく方に。高校卒業まではまだ時間はある。早く出会いを迎えてしまって、誰でも良い。誰かと恋に落ちてくれればと。

幸い貴女は男性恐怖症と言っていたけれど、良く観察していると全ての男性を怖がっている訳ではなかった。まぁ、自分に欲を向けてくる男は、どんな生物でも駄目だったみたいだけれど。それだって、ちゃんと相手を見極めていれば大丈夫になっていた。

私は貴女が攻略対象と出会う場をなるべく沢山もうけて、好感度を上げて行くようにした。…言うなれば私はプレイヤーだったのよ。ゲームの。

勿論、最初はストーリーに抗う事も考えたわ。

でも、考えて?美鈴。

私がいくら抗っていても、物語はストーリーを追う様に補正が入って行ったわ。その証拠に、嶺一が、死んだわ。真っ向で抗うなんて無理だった。なら私が取れる行動は…美鈴の危機を一つでも回避させる為に、男達を鍛える事と美鈴が乗っても危険のないイベントをより分けること位だった。


―――本当、頼りない母親ね…私は」


「そんな事ないっ!」

沢山の情報を一気に頭に叩き入れられたけど、それだけは違うよっ、ママっ。

だってそうでしょっ!?

ママは私が死なないようにって、今度こそ幸せを掴むのよって、ずっと、ずっと私の為に動いてくれていたんだっ。

こうして思い返してみたら、一杯一杯ママが手を貸してくれた場面が思い浮かぶ。

例えば、幼児の時。ママが私をエイト学園に行かせた理由。それは多分透馬お兄ちゃん達御三家とのイベントを起こす為。

小学生の時、色々あったかもしれないけれど、一番不思議だったのは優兎くんのお母さんの指輪。あれがあんな所に落ちていた理由が不思議で堪らなかったけど今ならママが落としたって事が分かる。

中学生の時、ママは聖女に行けと言っていた。これだって、味方を付ける為ともう一つ。四聖が誰を選ぶのかを見極める意味もあったんだろう。

エイト学園に入学した時。ママは油断するなって言っていた。絶対に油断するなって。誰でもいいから一人を選んでくれって。きっとその後の事を知っていたから…。だから言っていたんだ。

そこまでママが影ながら動いてくれていたって事を。ママが私の為を思って動いてくれていた事を。

「頼りない何て思う訳ないっ!ママ…ママ、ありがとうっ」

私はママに抱き付いた。

「ごめんなさい。ごめんね、美鈴。…私がもう少し強ければ…。本来の運命をも跳ね飛ばせるだけの力があれば。攻略対象キャラなんて頼らずに私が貴女を幸せに導く事が出来たのに。私が出来た事は、貴女から小さな危険を遠ざける程度だった…」

「ママ…。違う。違うよ…。私、ママにずっと助けられてた。私がママに言える言葉は『ありがとう』だけ。全部私の為にやってくれていた事を、戦ってくれていた事をどうして責める事が出来るの?ありがとう…ありがとう、ママ」

ママをきつくきつく抱きしめる。ママも同じだけの力で私を抱きしめてくれていた。

「……ごめんなさい。弱気になっている場合じゃなかったわね。これからの事を考えないと、ね」

「うん。ママ。ねぇ、ママ?ママはわたしの為にヒロイン(わたし)や攻略対象キャラを操作していたのよね?それはやっぱりヒロイン補正のせい?」

「そうね。さっきも言った通り、最初は抗ったのよ。思い通りになるものかってね。私のキャラクター性を変えたりとか、鴇を中心に兄弟の性格を変えたりとかね。でも、ヒロイン補正の力は侮れなかったわ。どんな方向に持って行こうとしても、必ずイベントが起きてしまうみたいだった。だったら逆にイベントを起こすように動いて、少しずつ誤差を交えて行こうと思ったのよ」

「誤差…。例えば、優兎くんみたいな?」

「そうね。多分優兎の誤差が一番大きいわ。今や立派な紳士だし、それ以上に大きな誤差がもう一つあるけれど、今は言えない」

「さっきもそう言ってたね。どうして言えないの?ママ(プレイヤー)とヒロインで共同戦線張って行った方がいいんじゃないの?」

「私も、そう思ったのだけど…。いえ、ダメね。まだ言えないわ。貴女の命に係わる事だから。でも、ヒントは言える。『理由がヒロイン補正でも、真実はヒロイン補正ではない』ってことよ。美鈴、全てが片付き貴女が幸せになるって確定した未来を見届けたら言葉の真実を教えるわ」

「……分かった。それなら質問を変えるね。ママが今私にして欲しい行動は何?どうすれば私は死ななくて済むの?」

ママから離れ、私は真っ直ぐママを見つめた。

「美鈴。その場しのぎに過ぎないかも知れないけれど、選ばずに私が手を貸せない状態になるよりずっといい。誰か攻略対象キャラを選びなさい」

「えっ!?」

命を守るための何かしらの教えが来るかと思えば、全然違う方向からジャブが来て、一瞬思考が止まる。

「いいえ。この際一人に絞らなくても良いわっ。どのストーリーに添うか決めなさいっ。ヒロイン補正や、その他の事に付け入る隙を与えない為にも」

「ストーリーを…」

選ぶって言ったって…。どうしたら…?

「美鈴。貴女の心が求めるままに、決めなさい。…私はそれを全力で守るから。大丈夫。貴女は―――どうしたい?」




「……………私は――――」


最終章始まりましたが、諸事情により、続きは四回分のアップ予定日を過ぎた9月の13日より再開いたします(`・ω・´)ゞ

その間何も上げない訳ではないですが、不定期となります。

ご了承お願い致します。


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