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第二十四話 計画の中間報告

どうしてこうなった…。

高校生になって本編に入り、色々あったけど概ね平和に過ごしている。

それはいい。

それはいいんだけど…。

予想外の事があった。

それは、


『同級生組の四人が、四聖と恋人同士になったこと』


である。いや、元々はライバル関係にある存在だったんだからおかしくはない。

おかしくはないんだけど、どう考えても組み合わせがおかしい。

確かに、ゲームプレイ中は何度も思ったことがある。


『彼女達はこんな相手じゃ報われない』


と。それはもう何度も思ったよねっ!

事実、四聖は彼らに惚れていたと言うよりは依存していたって方が正しくて。

一人になる恐怖と戦っていたようなものだったんだよね。

その証拠に、


愛奈は団体行動を苦手だから、未くんみたいな何も言わずに側にいてくれる人を望んだ。

円はヤンキーのような容姿や態度から遠巻きにされていたから、巳華院くんのような自分にしか興味のない、円を恐れない人を望んだ。

桃は両親や姉に監禁されて、体や精神が蝕まれて行ったから、近江くんという最後に残された家族、友達である唯一の人を望んだ。

夢子は既に親兄弟はなく常の孤独がついて回っていたから、風間くんみたいに全てを吹き飛ばしてくれる明るさのある人を望んだ。


でも、四聖の皆はその障害を乗り越えて、強さを手に入れていた。

そうなって成長した彼女達が望んだのは、自分とは別のタイプの男性だった。


愛奈は皆といる楽しさを知った。団体行動の苦手を克服した。そして広がった視野で見えてきたのは自分では手にする事の出来ない能力を持った男の子―――近江くんだった。

円は自分の容姿と向き合う事を覚えて、それを乗り越えた。そして出会ったのは自分を女として見てくれる初めての男の子―――風間くんだった。

桃は綾小路と向き合う覚悟を決めた。一人で戦う覚悟を持った、それでいて自分の位に並び立つ心の強い利用出来る政略結婚相手を探していた。そして見つけたのは桃の好みドンピシャの男の子――巳華院くんだった。

夢子は親や兄弟がいなくても孤独じゃない事に気付いた。そして、そんな夢子の孤独に気付いてくれた孤独な男の子がいた。その男の子が―――未くんだった。


本来はきっと惚れたりはしなかったであろう相手だ。

ゲームを見るとそれは顕著に分かる。こう言うゲームだと類友現象と言うか、似たキャラ同士でくっ付く要素がある。

けど…現実はそうはならなかったって事だよね。

彼らがくっついてしまった今、私とは本当に関係のない、ただの友達の彼氏ってなる訳だよね。

…となるとパソコンにまとめる内容もないんだよね…。

それに同級生組は基本早送り同時攻略プレイをしていたから記憶に残ってるはずもない。


結局は簡単にまとめるだけになってしまう。


風間犬太かざまけんた 主人公の同級生。緑の髪と深緑の瞳が特徴。戌年らしく犬の様に尻尾をふり長いものには巻かれようとする。ただしちょっと残念な所も…?雑学のパラメータが20以上になると出会う事が出来る。好感度を一定値以上上げるとライバルキャラ一之瀬夢子が邪魔をしてくる。エンディングを見るには雑学パラメータが100以上必要。イベントの一つとしてトリプルデートイベントがある。遊園地にて起こるイベントで、それを見る条件は夢子と既に出会っている事ともう一人ライバルキャラを出現させている事。イベント内容は遊園地でデート中に不良に絡まれるという内容。その時夢子と風間のどちらの好感度が高いかによって風間が不良から庇う対象が変わる。夢子との好感度が高いと風間は夢子を、風間の好感度が高いと主人公を庇ってくれると言う展開になる。発生期間は3月~5月の間。


巳華院綺麗みかいんきれい 主人公の同級生。このゲームの中でトップを誇る程の綺麗な顔をしている。主人公達と同じく金色の髪をしているが光り輝き具合が主人公の比ではない。瞳まで金色でどこもかしこも光り輝いている。折角神が作りたもうた美しさを自分では認めておらず謙虚な所が…?運動のパラメータが20以上になると出会う事が出来る。好感度を一定値以上上げるとライバルキャラ向井円が邪魔をしてくる。エンディングを見るには運動パラメータが100以上必要。イベントの一つとして巳華院家主催のパーティに出るというイベントがある。それを見るには円と出会っている必要がある。イベント内容は巳華院家のお見合いパーティで巳華院家が用意した偽の強盗がお見合いパーティに入り込み主人公を人質にとって金を要求するという内容。円と巳華院、どちらの好感度が高いかによって助けてくれる相手が変わる。円の好感度が高いと円が、巳華院の好感度が高いと巳華院が強盗の不意をついて攻撃し助け出してくれると言う展開になる。 発生期間は6月~8月の間。


近江虎太郎おうみこたろう 主人公の同級生。顔が常に覆面で隠されており、その素顔を見たものはいないと言われてる。忍者の末裔であることに誇りを持っているが、運動が苦手だったりする。文系のパラメータが20以上になると出会う事が出来る。好感度を一定値以上上げるとライバルキャラ綾小路桃が邪魔をしてくる。エンディングを見るには文系パラメータが100以上必要。イベントの一つに遭難イベントがある。 これは出先で発生するイベントで、見る条件としては桃と既に出会っている事。イベント内容は桃と近江、そしてもう一人その時点で好感度の一番高い攻略対象キャラの一人が四人で遭難すると言う内容。因みに近江くんが一番好感度が高い場合は次点のキャラクターが登場する。遭難する理由は散歩中に天候が崩れたり、うっかり海に落ちたりと様々で、どの場合でも体力のない桃が倒れてしまう。 ここで桃と近江のどちらの好感度が高いかにより、桃の入院の有無が決まる。桃の好感度が高いと意識が戻り学園復帰。近江の好感度が高いと桃の意識は戻らず入院を余儀なくされる。発生期間は毎年9月にある勉強合宿、修学旅行のみ。


未正宗ひつじまさむね 主人公の同級生。無表情がデフォのサックスブルーの髪の男の子。カラーコンタクトで隠してはいるものの実はシトリンとアクアマリンのオッドアイ。理系のパラメータが20以上になると出会う事が出来る。好感度を一定値以上上げるとライバルキャラ新田愛奈が邪魔をしてくる。エンディングを見るには理系パラメータが100以上必要。 イベントの一つに実験の失敗と言うのがある。これは未が作った薬を使用した主人公が倒れてしまうというイベントで、見る条件としては愛奈と出会っている事、そしてその前にあるサブイベントで未との会話で全ての感情を読み切った正解を答えている必要がある。イベント内容は未が行っていた実験の失敗に巻き込まれ意識を失った主人公を助ける為に未が動くと言う内容で、愛奈と未、どちらの好感度が高いかによって主人公のパラメータ減少値に変化がある。愛奈の好感度が高い場合、治癒薬の開発に時間がかかり、主人公が倒れた時のパラメータから数値が半減する。未の好感度が高い場合、治癒薬の開発に時間がかからず、更に能力向上効果現れパラメータが数値が二倍に上昇する。発生期間は10月~12月の間。


どれも、毎年起きるイベントなのでそうそう焦る必要もない。

それにしても私このイベント殆ど関わってないかもしれない。

や、関わってはいるんだけど、何だろう、脇役、的な?メインになっていないと言うか?

「そう言えば、この前のクリスマスパーティで未くんがユメの事、少し違う感じで呼んでたな。本当の名前がどうのって言ってたし」

「あぁ、それは夢子ちゃんの名前は本当の名前じゃないからでしょ」

「へ?ママ。それどう言う事?」

「夢子ちゃんは、施設にいたでしょ?」

「いたね」

「何で施設にいたかは聞いた事ある?」

「ない」

「夢子ちゃんは両親に捨てられたのよ。正しくは母親に捨てられたって言うべきかしら。父親が一人では育てられないって判断して、明子さんの旦那さん。猿城寺さんに助けを求めたのね」

「うん?じゃあ、ユメのお母さんは生きてるんだ?」

「そうよ。明子さんはどう夢子ちゃんに教えてるかは解らないけどね」

「あれ?だとしたらユメと明子さんってどんな関係なの?」

「姪と叔母、かしら?明子さんの旦那さんの弟の娘だから」

「えぇっ!?そうなのっ!?じゃあ、陸実くん達とはしっかり血縁関係にあるんじゃないっ!」

「まぁ、そうね。で、明子さんが言うには夢子ちゃんの母親は本当に母親としては屑だったらしくて。子供が生まれても放置。旦那に任せっきり。むしろ子供と言う存在が必要なかったみたいね。出生届も出されてなかったって」

「なら旦那さんが出しに行けば」

「旦那さんは知らなかったらしいわ。出したと言われてたんですって。下手すると夢子ちゃんは名前も戸籍もなく生きなければならなかった。それだけは避けたくて旦那さんは夢子ちゃんを連れて逃げた。けど母親は夢子ちゃんはいらなくとも旦那さんは手放したくなかったのね。多分彼女は『母親』ではなく旦那さんにとって『女』でありたかっただと思うわ。だから出て行った旦那さんを追い掛けたらしいわ。そんな彼女の事を知っていたから、旦那さんは夢子ちゃんを施設に預けて夢子ちゃんの安全を確保した足で、彼女の所へ帰ろうとしたの。でもその帰り道で事故にあって亡くなったって話よ」

「ユメ…」

「その時夢子ちゃんは幼かったから、さっきも言ったけど明子さんが何処まで教えているのか、夢子ちゃんが何処まで理解しているのかは分からない。けど夢子ちゃんはきっと覚えていたのね。父親が自分にだけ名付けてくれた名前を。夢子ちゃんを守ろうとした父親が名前を付けていないはずないものね。その名前が『夢芽ゆめ』だったそうよ。戸籍や証拠が残ってなくても夢子ちゃんの耳には残っていたんでしょう。明子さんも本当はその名前で戸籍を作ってあげたかったんでしょうけど、その母親に逆恨みされても面倒だからって安全面を考慮して、けれど彼女の中で忘れさせることのないように『夢子』って名前をつけたのね、きっと」

「そうなんだ…。因みにママ。その情報は明子さんから?」

「いいえ。前世で見た乙女ゲーム専門誌の一之瀬夢子特集から」

………ちょっと重い系の話の比重が狂った気がする…。

でもそっか。そんな理由があるならユメが教えたその本当の名前は、ユメが本当に好きになった人にしか教えられない訳よね。

私は今まで通りユメって呼ぶけどねっ!これはこれで私の特権だものっ!

…とユメの件はこれで納得出来たから良いとして。

私はママのパソコンの前で大きくため息をついた。

「美鈴。もう書かないの?」

「うーん。書く要素がないんだよね。だってこれは私が思い出した事を文字にして、イベントから効率よく逃げる為に書いてただけだから。もう私とは関係ない場合は書く必要ないかなって」

「……それは、確かにそうだけど。でも美鈴?」

「なぁに?ママ」

「貴女、本当にそれで良かったの?」

「?、と言うと?」

ママの言ってる事が分からなくて首を傾げる。

「本当に好きな相手だったら友達とか関係なく奪い取る事だって出来たのに」

「奪うって…そんな友達に対して酷い事出来ないよ。ううん、違うね、そうじゃなくて。そもそも好きじゃないもの」

「それはどうして?」

「どうしてって、ママ、私男性恐怖症」

「それは知ってるわよ。でもそうじゃなくて」

そうじゃなくて?

私はくるっと椅子ごと振り返りママと向き合うと、ママはベッドの端に座って真っ直ぐ私を見つめていた。

いつも以上に真剣な眼差しに一瞬怯む。

「例え男性に恐怖心を覚えていても、雌の本能として、気になる雄は出来るもの。男性恐怖症と言う点を除いてみた時、美鈴は誰を欲するの?」

「誰を…?」

「そう。男性が怖いからって恋をしてはいけない訳ではないでしょう?むしろ恋をした方がその恐怖心を克服出来るかもしれない」

「…考えた事なかったなぁ」

素直にそう口にすると、ママは更に真剣な目つきで私を見た。

「高校生生活で貴女の道が確定する。それはもう分かっているでしょう?」

「…うん」

誰を好きになっても、誰とも恋に落ちなくとも、私の道は高校卒業時に確定する。それだけは確か。

だから私はしっかりと頷く。

「慎重に考えなさい。美鈴。『誰を選んでも、どんな結末を選んでも良い』だけど、『後悔のない道』を選びなさい。分かったわね?」

後悔のない道…か。

今この状況は私が望むルート、卒業エンドへまっしぐらな気がするけれど。

ママが真剣にここまで言うのだ。

きっと油断出来ない何かがまだ待ち受けているんだと思う。

だったらママの言葉に素直に頷いておこう。

深く頷くとママは満足気に私を抱きしめてくれた。

でも、私はこの時、ママの言葉をもっとちゃんと考えなければいけなかったんだ。

ママが言った言葉。


『ここは現実ではなくゲームの世界』

『ヒロインはトラブル体質なのだから油断してはいけない』

『慎重に考えろ』


これだけじゃない。

他にも一杯一杯ママはママの出来る精一杯の忠告をしてくれていたのに。

私はそれを頭に入れるだけで、深く意味を読み取ろうとしていなかった。

ママと私が考えている事が同じじゃない可能性だってあったのに。

ママと私が知っている事が同じじゃないってことだって知っていたのに。

私は卒業エンドを迎える事が出来ると、あれだけママに言われていたのにも関わらず、どこかで油断をしていたのだ…。


高校生編の前編が終了ですっ!!(≧▽≦)

次回から後編スタートですっ!!

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