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小話51 聖マリアの文化祭

※ 本編の補足、本編に関係のない日常等々です。読まずとも問題ありません。

ただ、読んで貰えたら喜びます(笑)



「聖マリアの文化祭へようこそー。こちらがパンフレットでございます」

「ありがとう」

渡されたパンフレットを僕は受け取り、校門をくぐる。

その後ろを同じようについて来た桃ちゃんと夢子ちゃんが僕の横に並んだ。

「聖マリアって初めて入ったけど、凄いね」

「そうですわね。……ここに菊お姉様がいらっしゃるのですね」

二人の全く別方向の反応に僕は苦笑する。

でもそれも仕方ない事かなと納得も出来る。

夢子ちゃんにしたらこの学校に欠片も興味なかったっぽいし、桃ちゃんにしてみたら最大の敵がここにいる訳だし。

僕達は真ん中にいたら邪魔だろうし少し横にそれてパンフを開く。

えっと内容的には…一般的な文化祭と違いはない、かな?

「優兎さん。こちらを…」

そう言って桃ちゃんが体育館を指でさした。

えっと…演劇部の舞台があるんだね。…?、主役が吉村百世?本気?

「相変わらず脳味噌お花畑なお姉様ですわ」

「桃ちゃん…。一応ここ敵陣だから」

「あら?私としたことが。うふふ」

「…とりあえず、情報収集しようか。演劇部は開演まで時間があるから最後に見る事にして。他の情報を仕入れましょう。仕入れるのは聖マリアの投票状態と吉村百世の事ね」

本当ならバラバラに調べに行きたい所だけど…。

「もういっそお姉様の息の根を…」

「王子の事悪く言ってる人がいたら…」

……うん。駄目だ。野放しに出来ない。

「じゃあ早速行こう。まずは一番繁盛してそうな所へ行きましょう?」

僕の言葉に二人は頷いた。

校舎内に入る。

もうすっかり慣れたと思っていたけれど、こうして改めてこの状況になると不思議な気分になる。

廊下を歩くときゃあきゃあと黄色い声と一緒に人垣が割れて行く。

鴇兄や双子の兄達とはレベルが違うけど、可愛い女の子が一緒だとやっぱりこうやって道が出来るんだなと改めて思う。

……自分も女子の恰好をしていると言うのはこの際置いておく。

一番人気の教室へと入った。女子の渦だ。

「色んな種類のクレープがあるらしいよ?」

「へぇ」

「お持ち帰り出来るのでしょうか?」

「出来るなら美鈴ちゃんにお土産にしたいね」

僕達はその出店の列に素直に並ぶ。

そして会話に耳を傾けた。


「今年の文化祭。超つまんない」

「だよねー。私達準備とか何もしてないし。開催宣言される前まで普通に勉強してたし」

「知ってる?各クラスで出展取り仕切ってるのって生徒会長が連れてきた人らしいよ?」

「え?それどう言う事?」

「何でも、聖女の王子に喧嘩売る為に雇ったとか言ってた」

「えー?そんな事出来るのー?」

「出来るんじゃない?だって生徒会長ってお金持ちのお嬢様らしいじゃん」


……。

碌でもないね。学生の文化祭に人を雇うって…。

「お金持ち?もう我が家にはお金はありませんわ。となると吉村のお金を使っているのかしら?」

「…桃ちゃんには悪いけどさ。もしかしたら自分で稼いでるかもしれないよ?」

「……あぁ。お姉様ですものね。体の一つや二つ売り捌いてるかもしれませんわね」

……女の子って…。

どうしてそうケロリと言うんだろう…。

そしてそう言う事を男の僕の前で言わないで欲しい。

笑顔でニコニコと…。最近思うんだけど、生徒会の皆僕の事男だと思ってないよね?

男だってちゃんと伝えたはずなのに男だと絶対に思ってないよね?


「そもそも吉村会長って」


前で並ぶ生徒たちが吉村百世について話し始めたので僕達は会話をしているふりをして、生徒の話に耳を傾ける。


「何で聖女の王子に喧嘩売ったんだろうね?」

「え?どう言う事?それ知らないんだけど」

「ほらわたし生徒会メンバーに知り合いいるじゃん?その子が言ってたんだけどさ?聖女の王子が前来た時に、「アンタの所為で自分の人生狂わされたー」みたいなこと言ってたらしいよ?」

「何それ?聖女の王子ってそんな事する人じゃないでしょ?」

「うん。私もそう思う。って言うか、聖女の王子ってすっごい優しいらしいじゃん。聖女に通ってる友達に聞いたんだけどさ?目の前で転んだ子には確実に手を貸してくれるらしいし、話しかけたらいつも笑顔で答えてくれるらしいよ?」

「えー、何それー。うらやまー」

「あ、でも怒らせると滅茶苦茶怖いってのも聞いたよ?何でも王子の友達を怪我させた子が顔の形崩れるほど殴られたとか」

「マジ?こわー」

「怖いけど、でもそれ王子の友達を怪我させた方が悪くね?」

「まぁね」


こっちにまで綾小路菊を殴った噂話が来てるんだ。

美鈴ちゃんだもんね。噂が出ない訳ないか。

列が進んで前の子達がクレープを買って列から外れて行った。

さて。ここまで並んだんだから何か買おうかな?

「二人は何が食べたい?」

「私モカチョコクリームバナナっ!」

「えっと私は…ナッツブレンドカスタードにします」

二人が注文票を見て選んだのを聞いて僕はその二つと、美鈴ちゃんに持ってくお土産の苺カスタードを注文する。

勿論お金は僕が持つよ?

女の子に払わせる訳にはいかないからね。

買ったクレープを持って次の場所へ移動する。

「展示、とか観てみようか?」

「そうですわね」

「あ、あっちの教室、写真部の展示っぽいよ?」

夢子ちゃんが指さした教室へ移動する。

「…このクレープ美味しい」

「プロの味、ですわね」

「金にものを言わせすぎてるね」

僕にしてみたら美鈴ちゃんが前に作ってくれたクレープの方が絶対美味しいと思うけど。それは今言わないでおく。

教室へ入るとそこには受付の当番の生徒しかいなかった。

何故?

疑問に思ったけれど、展示されている写真をみて納得した。

「お姉様の写真しかありませんんわね」

「いかにも仲良くしてますー、みたいな写真ばっかり」

「そりゃ誰も見に来ないよね?」

三人でうんうんと頷いてると、受付の所にいた子が会話を始めた。


「さっき中に入った子達って聖女の人よね?」

「そうだと思うよ?」

「いいなぁ、私も聖女いけば良かった~」

「監獄とか言われてるけど正直な話今のうちの学校よりよっぽど良いよねー」

「本当だよね~。マジで早く卒業してくれないかな?吉村会長」

「他の学校に行ってた癖に、転校してきて行き成り前生徒会長を脅して入れ替わるとか最低」

「え?それ私の聞いた話とちょっと違う。前生徒会長をお金で買収したって聞いたよ?」

「えー?どっちが本当なの?」

「案外どっちも本当だったのかもよ?」

「生徒会長辞めさせたくても、教師も生徒も目をつけられたら何されるか分からないし」

「いっそ、今回の文体祭で聖女の王子がコテンパンにあの会長潰して、退学にしてくれたらいいな」


…成程?

吉村百世の株はとことん落ちてるらしい。

それを聞いて僕の両サイドにいる二人はとてもいい笑顔を浮かべている。

何かもう既に吉村百世の存在が聖マリアでは浮いている、かつ、嫌悪されているって事が分かったから情報を収集する必要が無い様な気がしてきた。

「そろそろ舞台のお時間ですわ」

「それを見たらもう帰ろうよ、王子にクレープ持ってかなきゃ」

「そうだね」

頷いて真っ直ぐ体育館へ移動する。

…聖マリアの生徒が一人もいないんだけど…。

体育館の特設席は全て埋まってるけど、それは文化祭に来ているお客のようで。

「うふふ…殿方ばかりですわね」

「女も何か如何にも雇われました系だよね」

「これ見る必要あるかな?」

取りあえず近くで見るのも嫌だから、体育館の後ろの壁に背を預けて見る事にした。

まぁ、見て思ったのは時間の無駄だったってことかな?

ストーリーは良くある恋愛もの。主人公の姫が旅立つ勇者に愛を告げるんだけど、王から命令された勇者はそれに逆らう訳にはいかなくて…みたいな話だ。いや、演技派凄かったけど。うん。大根ではなかったよ?ただ、悲劇のヒロインの役に入りこんでて、入り込み過ぎてて…。あんな悲劇のヒロインある?

多分、僕が思うに人生上手くやっていけるよ、あの姫。あれだけ全力で泣いて全力で叫べるんだったら何の問題もない。本当に悲劇になったヒロインってのはこう…はにかんで笑みを浮かべて。そう。儚げって感じ。

「逞しい悲劇のヒロインだったね」

「流石お姉様。もう脳内のお花畑は満開ですわね」

「……もう帰ろうか。多分僕達の敵じゃないよ」

むしろ吉村百世だけが敵だと思う。

聖マリアの一般生徒は皆美鈴ちゃんの味方だって良く解ったから、聖マリアに用はない。

僕達はとっとと聖女へ戻り、美鈴ちゃんへ結果とクレープを届けるのだった。


高校生編は長いので、小話は恐らく打ち止めになります(`・ω・´)ゞ

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