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07.怪我人を治療したらスカウトされた



 俺、リクト・ガードマンは伝説の吸血鬼を封印した。

 どうやら他にも凄い吸血鬼はいるらしいので、その対策として、吸血鬼を眷属として飼うことにしたのだった……。


「にゃーん♡ かわいいにゃーん♡ にゃーん♡」


 幌付き馬車に乗っている俺たち。

 御者はいない。


 馬車も幌付きの荷台も、全部俺が結界で作ったものだ。

 結界で作ったものなら、俺は自在に操ることができるのである。


「にゃーん♡」

「……そんなに気に入ったか、そいつのこと?」

「うんっ!」

 

 フレアの胸には1匹の白猫が抱かれている。

 その首輪には十字架のペンダントがつけられていた。


 何を隠そう、この白猫が夜の女王(ノスフェラトゥ)こと、カミーラ・ヴラド・ツェペッシュ。

 あの十字架に封印したのだが……。


 ずっと十字架に閉じ込められているのは嫌だ……! と主張するものだから、しかたなく、器を用意してやったのだ。

 器、つまり結界で作った(見た目)猫。


 そこの首輪に十字架を取り付けることで、カーミラの意識だけを、猫(作り物)に転写しているだけである。


「ちっちゃくてかわいいなーん♡ にゃーん♡」


 フレアはカーミラにご執心のようだ。

 思えばちっちゃいときから、動物好きだったもんな。


 家が貧しくてペット飼えなくて、さみしそうにしていたっけか。


「リク、どこで拾ったの、こんな可愛い子」

「さっき吸血鬼と戦ったあたりに、転がってた。親とはぐれた子猫なんだろ」

「かわいそう! うちの子にしちゃいましょう♡ そうしましょう♡ にゃーん♡」


 フレアがカーミラのやつをぎゅぎゅっと抱きしめてる。

 若干うんざりしてそうなカーミラ。

 

 くそ……うらやましいぞ……あんな風にイチャイチャしやがって。


「ま、どうしたのリクったら。そんなに物欲しそうな顔しちゃって~? ん~? フレアさんともいちゃつきたいのかな~♡」


 すっごい笑顔のフレア。

 ああしまった、顔に出ていたのか……。

 いかん、付き合いが長いから、隠し事ができん……。


「しょーがないっ♡ さ、おいで~♡」

「い、いいの?」

「もちろんっ。だぁって私たち、付き合ってるんだよ~?」


 た、確かに……!

 付き合ってるなら……いちゃついてもいいじゃんな!


 俺はすすす、とフレアの隣に移動する。

 彼女が微笑んで、ぎゅーっと抱きついてくる。

 いつかいでも、フレアの髪の毛からは甘くて良い香りがする……。


 それに、温かい体に、柔らかく、大きな胸。

 ぎゅっとくっつくと、よく干している布団にくるまってるような、安心感を覚える。


『おぬしよ、いちゃついてるところ申し訳ないが……外でトラブルのようじゃぞ』


 どうやらカーミラのやつ、猫の体を手に入れたことで、五感が鋭敏になっているらしい。

 ったく、良いところだったのに……。


 結界の馬車を止める。


「どうしたの?」

「なんかトラブってるみたいだ。様子見てくる」

「私もいくよ。おいで猫ちゃんも」


 まあ結界があれば問題ないだろうし、いいか。

 俺はフレア(+カーミラ)と馬車を降りる。

 

「これは……」

「ひどい……怪我人がいっぱいだわ……」


 黒い鎧を着た、騎士? みたいなやつらが、あちこちで倒れている。


「うう……」「いてえ……いてえよぉ……」「ポーションを! ありたっけのポーションをもってこい!」


 察するに、この騎士たちは何かに襲われて、大けがを負ったようだ。


「…………」


 さて。

 目の前には、関係の無い人たちが、怪我して倒れている。


 それに対して、俺はどうするか?

 ……俺は昔、魔法を師匠せんせいから教わった。


『いいですか、リクト。あなたの魔法は、人を守るため天から授かった恩恵ギフトよ。愛する人だけじゃなくて、大勢の困ってる人を守るために使いなさい。愛する人とそうじゃないひとを、差別してはいけませんよ』


 ……わかってるぜ、師匠せんせい

「フレア。わるい、遅くなる」

「ん、大丈夫! わたしもお手伝いするわ!」


 フレアは俺の、次の行動を察してくれてたようだ。

 付き合いが長いと、とても楽で良いな。


「あの、大丈夫ですか?」


 俺は近くに居た、女騎士のもとへ行く。

「ん? 君は……」

「俺は旅のものです。少しばかり治癒術の心得があります。よろしければ、手伝わせてください」

「ほんとか! 助かる……!」


 女騎士は俺に向かって、何度も頭を下げる。


「あっちに重傷者がいるんだ!」

「そうですか……って! あなたも重傷じゃないですか。左腕どうしたんですか?」


 女騎士の左腕が……肘のあたりで無くなっていた。

 包帯が巻かれており、血がにじんでいた。


「ん。これは……【大物】にやられてな」

「大物?」

「ああ。我々はとある凶悪な【ケモノ】を追いかけてここへやってきた。だが途中、反撃を食らってな。この腕も、そのとき食い散らかされた」


 なるほど……。

 騎士達はそのケモノと戦って負傷したってことか。


「ん? どうちたの、猫ちゃん? さっきからぷるぷる震えてるけど?」


 フレアの胸のなかで、カーミラが震えていた。

 なんだ?


『こ、こやつらは……』


 カーミラのやつ、震えている。

 怯えてる? ナニにだろうか。 


 周りに吸血鬼カーミラの脅威となり得るものは見当たらんが……。

 まあいい。


「先にあなたを治療します。女騎士さん」

「ありがとう。でも……いいんだ。もうちぎれた腕は治らないから……」

「え? 治りますが」

「は?」


 俺は右手を前に出す。


「結界変形。補助式の二。【治癒ヒール】」


 突如、女騎士のちぎれた左腕の周りに、丸い小さな結界が現れる。

 みるみるうちにちぎれた腕が……。


「う、うおおぉお!? う、腕が!? 元通りに!?」

「動かしてみてください」


 女騎士が俺の前で、にぎにぎ……と左手を開いたり閉じたりしてる。


「き、奇跡だ……! すごすぎる……!」


 治った腕で、俺の手を握ってくる。


「ありがとう! これでまた、【牙】を狩ることができる!」

「いえいえ……ん? 牙を……狩る?」


 なんだ牙って。

 何かの暗喩だろうか?


『……わらわのことじゃ』

「ん?」


 ぼそっ、とカーミラがつぶやく。


「おおい、みんな! 助かるぞ! このお方は、高名な治癒術師のお方だ!」


 女騎士さんが仲間に呼びかける。

 あ、いや……治癒術師じゃないんだが……。


「お願いします、仲間達をたすけてください!」


 確かに、女騎士さんほどじゃないが、彼女の仲間達も、かなり負傷していた。

 俺は右手を前に出す。


「【結】」


 倒れている彼ら全員を、結界で包み込む。

 そして……。


「結界拡張。全体【治癒ヒール】」


 傷口が塞ぎ、失った臓器が元通りになり、顔色が元に戻っていく。


「す、すげえ……!」「なんだこりゃ!?」「神だ! 神がいる!」


 いやいや……神じゃないんだが……。


「ありがとう、治癒の神どの!」

「いやだから、俺は治癒術師でも、神でもなくて……ただの結界師だ」

「けっかいし……? 結界術なのですかれこれは!? いったいどうやって……?」


 俺は女騎士さんに説明する。


「この結界は外の世界と比べて酸素濃度が高く、また光の魔力に満ちてるんだ。そのためなかにある生物の治癒能力を極限まで高める効果を発揮するんだ」


 ぽかーん……とされてしまった。

 うーん、ムズカシイだろうか……。


「よくわからんが、すごいことには変わりない! ありがとう! 結界師殿!」


 みんなから「ありがとうございます!」「あなた様は命の恩人です!」と頭を下げられまくった。


 フレアは、人助けした俺を見て、嬉しそうに笑っている。

 ……って、ん?


 彼女の胸のなかで、カーミラのやつがまだ震えていやがった。

 結局何だったんだ……?


「ところで、あなたたちが追いかけていたケモノってなんだったんですか?」

「そうだった! 気をつけてくだされ、結界師殿。このあたりには凶悪な牙……、【吸血鬼】がいるのです!」

「なに? 吸血鬼だと?」


 カーミラの【他にも】、吸血鬼がいるのか。


「どんなやつだ? 可能なら力を貸すぞ?」


 吸血鬼による被害は人ごとじゃないからな。


「それは心強い! あなた様がいれば百人……いや、千人力です!」

「ありがとう。それで、いったいどんな強力な吸血鬼が現れて、あなたたちを怪我させたっていうんですか?」

「はい! 夜の女王(ノスフェラトゥ)ってやつです!」


 ……え?

 夜の女王(ノスフェラトゥ)……。


 って、カーミラのことじゃん。


「え、どこが強力な吸血鬼なんだ……?」


 普通に単独でボコって封印できたけど……。


『だから! わらわは弱くないの! おぬしが強すぎるだけじゃ!』


 しゃーしゃー、と白猫カーミラが叫ぶ。

 なんだ……こいつに手間取ってたのかよ……。


「それなら安心してくれ。夜の女王(ノスフェラトゥ)は俺が封印した」

「なっ!? 何ですって!? 本当ですか!?」

「ああ、だからもう安心しろ」


 騎士達の表情が晴れやかになる。


「え、てか俺の言葉信じるの……?」

「はい! あなた様のお力は、先ほどの神のごとき奇跡の技を見れば明らか! あなた様ほどの実力者が嘘をつく理由がない! ならば、封印したのは本当なのでしょう! すごいです!」


 どうやら俺の言葉を信じるようだ。


「すごい……あの! お名前を!」

「り、リクト・ガードマン……」

「わたしはセラージュともうします! 【牙狩り】の隊長をしてます!」

「はあ……セラージュさん。……ん? 牙狩りって……?」


 初めて聞く単語だ。

 すると白猫が忌々しそうに顔をゆがめる。


『牙狩り。吸血鬼退治のスペシャリストどもじゃ』


 へえー……。

 そんなやつらがいるんだな。


「リクト殿! 折り入って頼みがあります!」

「な、なんでしょ……?」

「是非! 我が牙狩りに、入ってくださりませんか! 今なら隊長の座をお譲りいたします! 是非! 是非! 入ってください! お願いします!」


 え、ええー……。

 そんな……。


「お断りします」

「なっ!? ど、どうして……? 夜の女王(ノスフェラトゥ)を封印するほどのお力があるのにっ! あなた様がいれば、世界を救うことなど容易いでしょうに!」


 世界を救う、か……。


「俺には、分不相応なんですよ。俺が守りたいのは……守れるのは、目の前の小さな幸せだけです」


 俺がフレアに微笑みかける。

 彼女は嬉しそうに笑っていた。


 そう、俺がしたいことは、別に吸血鬼を狩ることじゃあないんだ。

 フレアとともに、ありたい。

 ただそれだけ。


 その邪魔をしてくるやつは、容赦なく滅するつもりだがな。


「お願いします! どうか、どうか牙狩りに!」


 俺が断ったのに、セラージュのやつ、まだ熱心に勧誘しようとしてくる!


「だから、断るって……」 

「お願いします! あなた様が必要なんです! どうか、牙狩りに入って、一緒に世界を吸血鬼どもから守りましょう!」

「だから! もー! 話聞いてくれってばー!」

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[一言] 話を聞かない自己中が、一番厄介。 こういう奴に限って縁を切るのが大変です。 マジでしつこくてウザイんだもの。
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