64.隠し
妖精郷へは、馬車で三日くらいかかった。
見上げるほどの巨大な木が、何本もならぶ、森の前へとやってきた俺たち。
『ここが妖精郷……中には入れぬのだろう? どうするのじゃ……?』
ふっ……とエバーグリーンが笑う。
「どうしましょう♡」
『っておいい! まさかのノープランか!?』
「はいっ♡ なんとかしてください、リクトさん」
こいつ……はぁ。
「わたくしは妖精化すれば、見えなくなるので、入ります。でもぉ」
エバーグリーンは、森の入り口を指さす。そこには、軍服に身を包んだ男達が立っていた。
多分見張りだな、ありゃ。
「リクトさんたちは、このまま入れば、あのこわーい軍人さんたちに捕まっちゃいますよぉ」
「……だろうな。何もしなきゃ、な」
俺は手で印をくんで、結界を周囲に展開する。
「ねえ、リク。どうしたの? 早く森に入らないの?」
馬車の上から、フレアが俺に尋ねてくる。
「大丈夫。ほら、いくぞ」
『いくぞっておぬし……普通に目立つじゃろうがい』
「大丈夫。見つからないから」
エバーグリーンが馬車を動かす。
俺たちは荷台にのっている。どう見ても、怪しい馬車だ。止められるだろう……が。
見張り達は馬車を素通りしていた。
『ど、どうなっとるんじゃ……?』
「結界で馬車を包み、外から見えなくしたんだ。隠しの結界っつってな」
まず結界で周囲を覆う。そして、周囲の情報を、結界表面に投影。
結果、光学迷彩となる。
『うーむ……相も変わらず器用なやつよのぉ』
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