60.信じず
翌日。
ホテルの部屋に、侍女服姿の、エバーグリーンが入ってきた。
「ルームサービスです~♡」
「…………入れ」
こいつ、牙狩りのくせに、よく俺と仲良くできるよな……。
まあ、別にいいけど。俺はフレア以外どうでもいいし。
「わぁ……! リク、見てみてっ。朝からちょーごーかー!」
フレアがテーブルの上に並ぶ朝食を見て、瞳を輝かせる……。
ああ……フレア。おまえの笑顔を見てるだけで、朝からの憂鬱な気持ちが一瞬で消えたぜ。
サンキューな。
「これ、ぜーんぶ食べていいんですかっ?」
とフレアがエバーグリーンに尋ねる。
「もちろんですとも、お客様」
「わぁ! じゃあいっただっきまーす! あーむっ! ん~~~~~♡ おひ~!」
フレアが上手そうにくってる姿をおかずに、俺も飯を食べる。
『牙狩りの作ったモノなんてたべていいのか? 殺されないか?』
と猫姿のカーミラが尋ねてくる。
俺を殺したら、こいつの目的が未達成になっちまう。だから、殺ししやしないだろう。
たとえ俺とフレアが、牙狩りの天敵だとしてもな。
『わしはこの女を全然信用できないぞ……』
奇遇だな。俺もだよ。
100%信用したわけじゃあない。こいつがフレアの天使のチカラを封印できる、という言葉も、全然信じていない。
こいつの目的が達成された瞬間、牙狩りとしての顔をのぞかせ、後ろからブスリとやってくるやもしれんしな。




