58.ゆうたじゃろ?
エバーグリーンから、妖精王を助けて欲しいとの依頼を受けた。
次に考える必要があるのは、フレアをどうするかだ。
エバーグリーンは明日迎えに来ると言って帰っていった。
俺はホテルの一室で、あぐらをかいて、今後のことを考える。
『何を考え込んでおるのじゃ?』
黒猫のカーミラが尋ねてくる。
「フレアをどうするかなって」
妖精界は別の次元に存在するという。
今俺たちがいるところとは、違うところ。そんなよくわからん場所に、フレアを連れて行っていいものか。
……そもそも論として、なんでそんなとこいくのか、ってフレアが疑問を抱いてしまったらどうしよう。
ってなことをカーミラに話す。
まあこいつは下僕なので、話し相手にはちょうどいいしな。(情報漏らさないし)
『そうか、フレアは己が天使サリエルであることを知らないんだったな』
俺が妖精界へいくのは、天使の封印をなんとかしてくれるという手立てを、妖精王が持ってるから。
なーんてことを、正直に彼女に言えるわけが無い。
フレアは天使のことを何も知らないし、知って欲しくも無い。
かといって、一人ここに彼女を残すわけにはいかない。
シアンのような牙狩りがこっちにいるし、それに……吸血鬼も襲ってくるしよ。
『ならば連れてくしかなかろうて』
「だよなー」
しかしそれじゃあ、どういう言い訳でカノジョを連れて行けば良い……。
『普通に観光でいいのではないか?』
「そんなんでいいのか……?」
『そもそもおぬしらが旅してるのは、観光目的じゃあなかったのか?』
……言われてみればそうか。
他に良い案も思いつかんし、正直に言ってみよう。
「リク? どうしたの? うんうんうなって」
お風呂場から、フレアが出てきた。
わしわし、と髪の毛をタオルで拭いている。
……バスローブから覗くフレアの、大きな胸に、目が行ってしまう……。い、いかん。
「えっち♡」
「いやすまん……」
「いいんだよ、リクならみほーだいっ。なんちゃって」
ベッドに座る俺の隣、フレアが腰を下ろす。
「で、考え事?」
「あ、ああ……次の目的地な。その……妖精みにいこうかなって」
ど、どうだろうか……。
さすがにストレートすぎる提案だったろうか。疑われる……。
「いいんじゃないっ? わたし、妖精さんみてみたいし」
……あれぇ。こんなあっさり?
『ほらな、言うじゃあろ?』
カーミラが得意げに鼻を鳴らすのだった。




