50.エバーグリーン
ホテル屋上にて。
「んで、襲撃者さんよ。俺になんのようだ?」
そう言うと……。
ホテルの欄干の向こうから、1本の大きな木が突如として出現する。
「襲撃者さんとは酷いですね~♡」
『木の上に……女が乗っておる!?』
にょきにょき成長する樹の枝には、若い女が座っていた。
そいつはホテルの部屋にやってきた給仕の女だった。
「あんた、九天?」
『九天!? なんじゃそれ!?』
「牙狩りのトップらしいぜ」
俺がそう言うと、九天の女は枝からひょいっと飛び降りる。
「あら? どうしてあなたは九天を知ってるのですか?」
「ま、ちょいと小耳に挟んだんでな」
シアンとの戦闘後、俺はやつに極小の結界をくっつけておいたのだ。
んで、シアンが話してるのを盗聴したのだ。
シアンは牙狩り本部で、九天ってやつらと会議していた。
その内容を聞いていたのだ。そんときに、この女の声も聞いた。
「なるほどぉ~。すごいですねぇ。やはり人外さんですね♡」
「…………おまえもシアンと同じで、人外絶対許せないやつか?」
ならば、戦うしかない。
「待ってください♡ わたしはー別に人外さん絶対殺すって派閥じゃあないんですよ?」
……うさんくさい女だ。
『うそつけ! わらわを殺そうとしたくせに!』
「あれはこの子達が勝手にやったことなのでぇ」
『この子……たち?』
ふわ……と彼女の周りに、無数の光の点が現れる。
光が舞うと、地面から草花が生い茂る。
「精霊……?」
「そうです♡ 緑の精霊ちゃんたちです♡ わたしの友達です」
なるほど……この女は精霊使いなのか。
いや、森呪術師ってやつかもしれん。
『森呪術師……たしか、森に住む呪術師たちじゃったか。精霊と契約し、独自の植物魔法を使うとか』
まあそうだ。
「んで、森呪術師さんは俺となんのよう? 友達にでもなりたいわけ?」
「はい♡ わたしはあなたとお友達になりたくてきたんです。あ、申し遅れました。わたしは【エバーグリーン】と申します。九天がひとりです♡」
……さて。
どうするかな。
『敵意がないというのは嘘じゃろう?』
そらそうだ。
だがこいつが厄介なのは、その敵意も殺意も一切表に出していないってところだ。
師匠は言っていた。
感情を制御できるタイプは、相手の思考を読みにくいから、やりにくいって。
「友達……ね。舎弟を殺そうとしたやつを、信用できないな」
『おお! わらわを大事に思ってくれてたのか……って、舎弟って、おい! こっちは偉大な吸血鬼だぞっ!』
無視無視。
人間に使役されてる時点で偉大な吸血鬼なわけねーだろ。
「んー……じゃあこうしましょう」
ぽんっ、とエバーグリーンが手を合わせる。
「あなたの大事な人が、永遠に安全に暮らせるようにできる方法を提案できる……って言ったら、どうします?」
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