46.偉そうな三下
蠍のスコーピオンが逃げようとしてる。
俺はスコーピオンを封印するための準備を進める。
一方、使い魔カーミラには、ダミースコーピオンのなかから、本物を探しあてるよう命令を下しておいた。
「ふは……ふはははは!」
カーミラは自らの血液で作った翼を広げる。
血液の羽が周囲に広がり……。
「我に恐れおののけぇい! 散血雨ぅ!」
羽1つ1つから、高圧縮された血液が、レーザーのごとく照射される。
血の雨は逃げ惑うスコーピオンダミーたちの頭を正確に射貫いていく。
『やめろぉお!』
「ふはは! いやじゃあ!」
『きさまぁ! 下級吸血鬼ごときがぁ! 上級吸血鬼に逆らうのかぁ!』
するとカーミラはニィ……と笑う。
「ざぁんねん! わらわは今、牙狩りの使い魔なのでなぁ! 上級の命令は聞けんのよぉ!」
下級は上級吸血鬼の命令に、逆らえないようだな。
なんかそんな感じがするんだわ。
しかし牙狩りっておまえ……。俺をあの連中と一緒にしないで欲しいんだが。
カーミラがダミーを、ものすごい早さで潰していく。
そして……。
ドスッ……!
『ぎゃあ!』
一匹のダミーに、血の雨が降り注ぐ。
どのダミーも一発で消滅していた。が、そいつは消えない。ということは……。
「貴様が本物じゃな! もう逃げられんぞ!」
カーミラがダミーを見下ろしながら言う。
『ちくしょぉお! 離せぇ! 離せよぉおお!』
「断る。先ほどもいったが、わらわは今、吸血鬼であって、人間の下僕」
『吸血鬼としてのプライドはないのか貴様ぁ!』
「ん。まあ、わらわにもあったよ、そういうの。だがの……」
俺はゆっくりと、スコーピオンたちの元へ向かう。
俺の背後には……翼を生やしたフレアがいる。
俺の右手には、次元刀が握られていた。
『あ、あば……あばば……』
スコーピオンはガタガタガタ……と震えている。
カーミラは、足下の虫に同情的なまなざしを向けた。
「わらわの仕える主人は、吸血鬼を凌駕する、怪物なのじゃ。こやつの前では、吸血鬼の持つプライドなんて無意味」
俺は次元刀を振りかざし、そして下ろす。
次元に切れ目が入る。
そして……しゅごぉおお! とスコーピオンが吸い込まれていく。
『いやだぁあああああ! いやぁああああああああああああ!』
スコーピオンは裂け目の中に入ってしまう。そして、後には何も残らなかった。
「おぬしの敗因はただ一つじゃ、スコーピオン」
カーミラが腰に手を当てて、ふんぞりかえって言う。
「けんかを売る相手を間違えた、じゃ!」
何偉そうに言ってるんだよ、三下のくせに。
やれやれ。




