04.親へのご挨拶
ここから新展開です!
俺の名前はリクト・ガードマン。
宮廷魔導師の18歳。
勇者の職業を持つ王太子のパーティに参加してたのだが、俺の価値を理解しない彼から追放を言い渡される。
国外追放を言い渡され途方に暮れた俺を励ましてくれたのは、幼なじみのフレア・サリエル。
フレアは俺と一緒にこの国を出てくれると言ってくれたのだった。
さて。
話は、フレアと酒場で飲んだあとのこと。
俺たちはフレアの実家、サリエル孤児院へと向かう。
「ダリューンさんに国を出るまえに、あいさつしておかないとな」
「もうっ、リク。それもあるけど、結婚のご挨拶があるでしょ?」
「そ、そうか……」
隣を歩いてるのは、金髪巨乳美少女幼なじみの、フレア・サリエル。
今彼女はこの町、ミョーコゥの冒険者ギルドで、受付嬢をしている。
だが、やめて旅立つそうだ。
「あ、あのさ……フレア」
「なぁに?」
「その……ほんとうに俺に付いてきてくれるのか? だっておまえ……もうここには戻ってこれないんだぞ? それに……仕事だってあるのに……わぷっ」
フレアが俺のことを、正面から抱きしめてくれる。
彼女の方が少し背が低いので、見下ろす形になる。
フレアの体は温かく……そして、柔らかい。
抱きしめてもらえると、すごい、気持ちが楽になる。
「いいんです。わたしはリク、あなたの隣で支えるって決めたの」
「でも……」
「いいのっ。これはわたしの選択。納得して選んだことなんだから、君は気にしなくていいんです」
淡く微笑みながら、俺にそう言ってくれる。
正直……俺の事情に巻き込むことに、すごい申し訳なさはあったんだ。
フレアと一緒に居たい気持ちと、フレアに迷惑かけたくない気持ち。
どっちもあった。
でも……やっぱりこうして、付いてきてくれるって、俺を選んでくれたことが、うれしかった。
「ありがとう」
「よろし。じゃ、お父さんにあいさつにいきましょう」
「あ、ああ……なんて言えば良いかな?」
「そこはほら、びしっと! 男らしく」
男らしく、かぁ……。
俺は孤児院のなかにはいる。
ぼろいが、結構しっかりとした作りなのだ。
食堂へ行くと……明かりがついていた。
「お父さん」
「……フレア。っと、リクトじゃないか」
白髪の初老の男が、キッチンに立っていた。
彼はダリューン・サリエル。フレアの父親だ。
厳つい顔つき、背が高く、筋肉質な体をしてる。
それもそのはず、昔は凄腕の冒険者だったのだ。
そして現在は、冒険者ギルドのギルドマスターになるほど。
「……久しぶりじゃ無いか。元気していたか?」
ダリューンさんはこちらへやってくると、微笑みかけてきた。
強面だけど、優しい人なのである。俺はそんな優しくて強く、そして厳しい彼のことが好きだ。
「はい。おかげさまで」
「あのねお父さん。リクと結婚するから」
「ちょっ!? ふ、フレアさん……ストレートすぎない?」
「そう? いいでしょう?」
いやさすがに戸惑うだろ……いきなりだと……。
「いいじゃないか。是非そうしなさい」
「え、ええ!? いいんですか!?」
「? なぜ駄目なのだ? リクトの強さを私は知っている。それに君の性格も、そして……フレアのことを誰よりも愛してるってこともな」
「ダリューンさん……」
彼は微笑みながら、頭を下げてきた。
「こうなるのはわかっていた。フレアも君のことずっと愛していたからな。まだ帰ってこないかなっていつもぼやいてたし……あいたっ」
「余計なこと言わなくて良いんですっ」
つんっ、とフレアがそっぽを向く。
そ、そっか……俺の帰りをずっと待っててくれたのか。う、うれしい~……。
「結婚してどこに住むつもりだ? この町に帰ってくるのか?」
「あ、そのことなんですが……俺、実は国外追放されてしまって……」
てゆーか、まずはそっちから報告するべきだろう……。
「聞いてお父さん、馬鹿王子ったら酷いの。リクがあんなに尽くしてあげてたのに理不尽に追放ですって!」
プリプリ怒りながら、フレアがあったことを説明してくれた。
ダリューンさんの眉間に深いしわが刻まれる……。
「……そうか。あのバカが。またやらかしよって……」
「また? お父さん知り合いなの?」
「ん……まあ、少し稽古つけたことがあるのだ」
「ええー!? そ、そうだったの……」
「ああ。Sランク冒険者だった頃にな」
「ええ!? お、お父さんSランク冒険者だったの!?」
「ああ。言ってなかったか?」
「言ってないよ! 初めて聞いたよ! もー! 重要なことちゃんと説明しないからもー!」
ま、まじか……この人凄い冒険者だったんだ、元……。
「国王に頼まれ王子の稽古をしていたのだ。だが王子のお気に召さなかったらしい、すぐに解雇された」
「そうだったんだ……昔から馬鹿王子はバカなんだね!」
バカバカいいすぎでは……?
「まあ、それはいい。そうか、国を出るか。引き留めはしない。娘を連れて、幸せになってくれ。それと……」
ダリューンさんは一度出て行き、部屋へ戻ってくる。
その手には大きな革袋があった。
「お祝い金だ。これをもっていきなさい」
「そ、そんな……! もらえないです!」
「いいのだ。これは娘が結婚したときのために貯めていた金だ。リクト、もうこの孤児院に仕送りもいらない。これからは、私と妻が、孤児院を守っていく」
「ダリューンさん……」
この金には、ダリューンさんの娘への愛情が込められてる。
受け取らないのは却って失礼だ。
「ありがたく、ちょうだいさせていただきます」
「ああ、娘を頼むよ。妻もあいさつさせたかったが、あいにく今ちょうど外にでていてね」
「外……?」
こんな夜中に……?
「妻は現役Sランク冒険者なのだよ」
「そ、そうなんすか……二人そろってSランクとかすごいです」
「ありがとう。最近、【吸血鬼】が頻繁に見受けられてな」
「吸血鬼……?」
たしか……。
血を吸い、夜に生きる、不死の化け物、だったか。
「近頃吸血鬼とその眷属が多く出没してる。うわさじゃ、【夜の女王】が復活したとか」
「夜の女王……?」
「いにしえの時代に存在した、超強力な吸血鬼の王だ。あまりの強さに、封印する以外に手立てはなかったと聞く、不死の化け物だ」
不死のバケモン……か。
いにしえの時代ってことは、確か勇者がいたはず。
勇者でも倒せなかった化け物が、復活した……か。
「あくまで噂だ。あまり真に受けないでおくれ。ただ吸血鬼の出没頻度が高くなってるのは事実だ。気をつけなさい」
「大丈夫よ、こっちには最強の結界師がいるんですものっ。ね?」
フレアは……俺に全幅の信頼を寄せてくれている。
その信頼にはこたえたい。
俺はフレアの手を、ぎゅっと握る。
「ああ。娘さんには、傷一つ負わせません。夜の女王だかなんだか知りませんが、近づくようなら容赦なく、俺が滅します」
「相手は不死のものだが……いや、大丈夫か。おまえの結界魔法なら」
「はい。俺はこと守ることなら、誰にも負けない自信があります」
「ありがとう、娘をよろしくな」
「はい!」
そんな感じで父親にあいさつをし終えた俺。
フレアは自室に戻って、旅支度を調えて、玄関先までやってきた。
「おまたせ~」
わりと荷物が大量にあった。
リュックが5つ。旅行カバンが2つ。
ダリューンさんはあきれたように言う。
「フレア……荷物を持ちすぎだ」
「必要なものだもの。調理器具とか、寝具とか。食材だって必要でしょ?」
「だからって……馬車の手配もまだなのに、こんな大量の荷物どうやって運ぶのだ?」
「あら、お父さんってば、知らないの? 大丈夫よね、リク?」
問題なかった。
俺は右手を前に出して……。
「【結】」
フレアの荷物に、結界を張る。
「結界変形。補助式の五。【収納】」
結界。それは単なるバリアにとどまらない。
結界術とは、空間を操る魔法。
内側に安全な空間を作り出すからな。
結界の内側に異空間を作り、そこにものを収納することもできる。
「そうだった……リクト。君の結界魔法には、こんな便利な使い方もあるんだったな」
「はい。攻撃、防御、補助の三パターンに加えて、それぞれの奥義もあります」
俺の使う結界術、補助式には収納以外にも、いろんな術が存在するのだ。
「リクがいれば安心安全。夜の女王だかなんだかしらないけど、出てきたところでリクの敵じゃ無いわ」
まあ……戦ったことないからわからないけど、後れを取る気はない。
「さ、リク。出発しましょ」
俺はダリューンさんに頭を下げる。
「今までお世話になりました」
「ああ、達者でな」
「はい。手紙送ります。それじゃ」
★
俺はフレアとともに旅立つ。
ミョーコゥの街を出て……。
「フレア」
「なぁに?」
「ちょっと、結界の中に入っててくれ」
「? いいけど……どうして?」
俺は空を見上げる。
大きな満月がそこにある。
「いいから」
「う、うん……」
「【結】」
俺は結界を作り出す。
半透明のバリアが出現。
フレアがおとなしくその中に入る。
「リク……いったいなにが……?」
「来る!」
「え?」
ドガアァアアアアアアアアアアアン!
突如として、俺の目の前で爆発が起きた。
俺は結界を張っていたので、ふたりとも無事である。
「い、一体何事……?」
ゆらり……と土煙の中から、【そいつ】が姿を表す。
「くくく……ごきげんよう、人間」
そいつは……息をのむくらい、美しい……女だった。
年齢は20くらいだろうか。
背は高く、美しい銀髪を持つ。
扇情的なドレスをみにまとい……。
その目は血のように赤く、口の間からは……牙がのぞく。
「吸血鬼だな」
「そうじゃ……わらわは夜の女王」
「夜の女王……」
本当に復活してやがったのか。
「美味そうな匂いがしたものでな、夜食にと思って立ち寄ったのじゃ。わらわの食料になれること……光栄に思うが……」
「【結】」
「ふぎゃ……!!!!」
夜の女王がぶっ飛ばされる。
「結界変形、攻式の一、【星】」
結界を小さく固くし、弾丸のように打ち出す術だ。
俺の周囲には、無数の結界の弾丸が精製される。
「な、なんじゃ……なぜわらわに触れられる!? 物理攻撃は不死者のわらわに効かぬはずじゃのに……!?」
「悪いが、俺たちの門出を邪魔するようなら容赦はせんぞ」
相手が不死の王だかなんだかしらないがな。
ふん……! と夜の女王が鼻を鳴らす。
「に、人間風情が不死者をなめるなよ!」
「そっちこそ、たかが不死者風情が、結界師をなめるなよ」
俺は右手をやつに向けて宣言する。
「宮廷魔導師がひとり、この【絶壁】がお相手させてもらう」
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