38.方針
九天たちは集まり、結界師であるリクトをどうするか話し合っている。
九天の一人、【木】の女、エバーグリーンが提案したのは……。
この場にいる牙狩り9人で、リクト一人を抹殺するという作戦だ。
「相手が何であろうと、この場にいる九人があつまって、数で押せば、倒せるんじゃないですか~? 倒せないにしろ、致命傷を負わせることができるかなぁ~って」
確かに九天のひとり、水のシアンは、リクトと互角に戦っていた(リクトが本調子じゃなかったにしても)。
九天は全員がほぼ、シアンと同等の力を持っている。
ならば……そんな彼らが集まれば、リクトを上回ることができるかも……。
というのが、エバーグリーンの考えらしい。
だが……。
「……おれは反対だ」
シアンが、異を唱える。
隣に座る火の男、レッドがシアンをにらみつける。
「どういうことだぁ、てめえ……?」
「……おれたちは結界師だけを相手にしてるわけじゃない。吸血鬼、特に……復活した十二聖座を倒す使命があるだろう?」
なるほど、と彼らのリーダーソーラがうなずく。
「そうだな……。我らの本懐は、異業種の討伐。今各地で活発に動いてる吸血鬼を倒す、それが最優先事項だ」
牙狩り本来の目的は、吸血鬼を倒すことなのだ。
そして……封印されており、近頃復活した、十二聖座を討伐すること。
そちらをおろそかにはできない。
「じゃあほっとくんですか!」
レッドがいきり立つ。
「しばらくは静観しよう。結界師の少年はどうやら、あまり好戦的な性格をしていないようだしな」
シアンがうなずく。
リクトは己の守りたいものを守ることを最優先してる。
人を襲うことはまずないだろう、というのがシアンの見立てだ。
「ともあれ、放置するのは危険だ。そこで……監視役をつけたい。エバー、頼めるか?」
「はーい、わかりました~」
エバーグリーンを監視役として、リクトについてはいったん保留とすることにした、ソーラ。
「では、それ以外の面々は引き続き吸血鬼を狩りること。以上」
ソーラは部屋から出て行く。
九天たちは頭を下げたまま、彼女が出て行くのを見送ったのだった。




