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33/68

33.引き分け



 シアンとか言うヤバい男と戦闘している、俺。

 自分を液体に変えることのできる相手に対して、俺は結界で器を作り、閉じ込めた。


「……正直、驚いた。ここまで強い化け物を、おれは見たことがない」


 瓶の中で、シアンがそういう。

 はっ。


 敵に褒められても全然嬉しくはないし、おれは違和感を覚えた。


「だからなんだよ」

「……いや。敵ながら見事だと思っただけだ。その術技を、ここまでのモノに昇華するのに、どれほどの時間と労力をかけたか」


 ……引き続き、別にこいつに褒められても嬉しくはない。

 だが、やはり違和感があった。なんだこの男……やけに饒舌だ。


「あんたをここで滅することは容易い。が、俺とフレアに二度と関わらないというのなら、見逃してやっても言い」


 別に俺は無差別殺人者じゃない。

 ……まあ、フレアに敵対するやつには容赦しないが。


 敵対しないというのなら、少し時間を置いて、封印を解いてやってもいい。


「それには及ばん。おれは自力でここから脱出する」


 ずぉ……! とシアンの体……いや、シアンから魔力があふれ出す。


『時間稼ぎじゃと!?』


 慌てるカーミラをよそに、シアンが攻撃を放ってきた。


 ビチュンッ……!


 早すぎて、最初何をされたのか理解できなかった。

 だが、目の前の【それら】を見て、俺は気づく。


「なるほど……水圧カッターってやつか」


 超圧縮した水を、高速で打ち出すことで、金剛石をも切れることがあるという。

 その原理を利用し、シアンは瓶を破壊して見せたのだ。


「…………」


 瓶から脱出したシアン。

 彼は目を大きく剥いていた。


「……何故生きてる?」


 やつは瓶を破壊すると同時に、俺の心臓をも打ち抜こうとしていた。

 だが、俺の目の前には、何重もの結界が張られている。


「あんたが時間を稼いでるのがわかってたからな、こっちも対策させてもらったよ」

「……そうか、バレていたか」


 急にこいつがおしゃべりになった時点で、何かの準備をしてることは明らかだった。

 だから、その時間をこちらも利用させてもらったのだ。


「あんたの手の内はわかった。これ以上やるなら、こっちも本気を出すぞ?」


 シアンに対して俺は奥義を使っていない。

 【  】(くうはく)を使えば、こいつを構成する水は全て、一瞬で蒸発するだろう。


 俺の発現、そして力を見て……。

 シアンは刃を納めた。


「……ここは手を引かせてもらおう」

「賢明だな」


 やつからの申し出を聞いて、ほっとする俺。

 正直、あまりフレアの前で戦いたくないのだ。


 殺すことは容易いが、な。


「……また会おう。次は、お互い全力で」

「もう来んな」


 俺は【保険】をかけておく。

 シアンはパシャッ、と水となってその場から消えたのだった。

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