31.牙を向く
移動途中に盗賊に襲われた。
だが、俺は水の力を使う男とともに、盗賊を無力化したのだった。
「助かりました! ありがとうございます!」
馬車に乗っていた人たちが、俺たちに感謝してくる。
まあフレアのためだったんだが、まあいいか。
「リク、偉いね」
「ありがとう!」
フレアに褒められたぞ!
うん、たまには人助けも悪くないな……。
すると水の力を使っていた男が、こちらに近づいてくる。
「なんだよ?」
「…………いや」
じろり、と男が俺……ではなく、足下をにらんできた。
『ひぃいいい! なんか……視線を感じるのじゃぁ!』
カーミラの存在に気づいてる……?
「その吸血鬼は、おまえのなんだ?」
やっぱり気づいてるようだ。
俺の何だ……と言われても。
「下僕だな」
『ひどいのじゃ!』
すると水の男は小さく息をつく。
「きちんと手綱を握っているようだな」
「ああ」
『よ、よかったぁ……見逃してくれる……』
だが、あまいな。
男は刀を抜くと、影にむかって突き刺してきた。
『うひぃいいいいいいいいいい!』
が、俺はその刃を指で受け止める。
「どういうつもりだ?」
「……人外は排除する。足下のこいつも、背後の……アレも」
……背後の、アレだぁ?
フレアのこと言ってるのか?




