30．古武術
俺と水の男は、盗賊を捕まえることになった。
と言っても俺の結界術では殺しすぎてしまう。
だから、結界術なしで敵を無力化する必要があるのだが……。
正直、俺の専売は結界なので、それを使わない戦闘には自信が無い。
『珍しく弱気じゃの』
影の中でカーミラが言う。
無論こいつをだすのも論外だ。殺しすぎてしまうからな。
「おらぁ！ 死ねやぁ！！！！」
曲刀を持った盗賊が俺に殴りかかってくる。
……遅い。遅すぎる。
なんかのフェイントか……？
いやそれにしてはお粗末な剣筋だしな。
ぱしんっ。
くるんっ！
ずでーん！
「『は……？』」
カーミラと盗賊がそろって驚いていた。
俺は敵の腕をつかんで、その場で体勢を崩したのである。
「な、なんだこの妙なワザ！？ 態勢がくずされ……」
「当て身」
びしっ。
がくん……。
「……合気道か？」
水の男がそういう。
なんだ、知ってるのかこいつ。
『合気道とはたしか、古武術の一種じゃったな。敵の力を利用し、受け流したり投げ飛ばしたりする』
この吸血鬼ほんとにいろんなこと知ってるな。
長生きだからだろうか。
「てめえ！」
ずてーん。
「この！」
ぱしーん。
「やんのか……！」
ぽーい。
襲ってくる盗賊達を、合気道で片っ端から投げ飛ばしていく。
そんで、倒れたところに当て身をいれて、気絶させるの繰り返し。
『古武術なんて珍しいものを、誰に習ったんじゃ？』
「師匠だよ。結界術が使えないシチュエーションを想定して、教えてもらってたんだ」
『なんと……結界術だけでもすごいのに……武術まで……すごいとは……』
「いや結界術と比べると、お粗末だよ」
相手がこんな雑魚だからよかったものの。
もうちょっと強い敵相手じゃ、俺のにわか仕込みの古武術なんて、通用しなかったな。
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