表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/68

03.勇者は国王から叱られる

《勇者Side》



 リクト・ガードマンが追放されたと、ゲータ・ニィガ国王が知ったのは、数日後のことだった。


「なんてことだ……なんて、愚かなことを!」


 部下の報告を聞いて国王は怒り心頭だった。


「今すぐ馬鹿息子を連れてこい! 今すぐにだ!」

「は、はい……」

「それとリクトを追い返した門番の馬鹿は、逮捕し、犯罪奴隷として鉱山送りにしろ」


 国王の部下は汗をかきながら尋ねる。


「そ、そこまでする必要があるのですか?」

「なんじゃ? 貴様も鉱山に行きたいか?」

「い、いえ……ただ、陛下は少々、リクト・ガードマンを過大評価しすぎてないでしょうか?」


 ため息をついたあと、国王は説明する。


「あのものは天才だ。100年、いや、1000年に一人のな。貴様、王都全体を包んでいる結界について知っているか?」

「魔物除けの結界ですか? もちろん、存じております。あれのおかげで我が国の王都は世界で一番安全で……」

「あれはリクトが施した結界じゃ」

「な!? そ、そんな……! ありえない、王都全体を包み込める結界なんて、聞いたことがない!」


 結界とは通常、自分ともう一人を守るくらいの代物なのだ。

優れた結界の使い手でも、せいぜい、半径3メートルくらいの結界を張れるくらい。


 町全体を包み込む結界を張るなんて、人間業ではない。


「それに、先日飛竜の大軍が観測されただろう?」

「え、ええ……ですが一瞬で消えたとか」

「あれも、リクトがやったのだ」

「はああ!? け、結界魔法で、どうやって飛竜を倒したというのですか!? 防御の魔法ですよね!?」

「それが、できるのだ。あやつは天才だからな」


 陛下は飛竜の件の報告を受けている。

 100はいる飛竜を、一瞬で消し炭にしたと。


「結界を使って、どうやって消し炭にしたというのですか。Bランクとはいえ相手は竜ですよ? それをひとりでどうやって?」

「あやつの結界術には、奥義が存在する」

「奥義……」

「ああ。人智を超えた力を発揮するという。それを使えば飛竜100匹を一瞬で消し飛ばすことなんて容易かろう」

「そんなことができるなんて……どうして御存じなので?」

「魔法学校の校長とは古なじみでな。あやつもいっておった、リクトは天才だとな」


 そう、そこまですごい人物だからこそ、息子につけてやったのだ。

 それを知らずに追い出すなんて……。


「せめてあの馬鹿が、リクトを追放したことを反省していればよいのだがな。今頃パーティは弱体化してるころじゃろうし、さすがに気づいてるか……」


 と、そのときだった。


「父上聞いてください!」


 ばん! と国王の部屋の扉が開くと、息子……オチブレルが帰ってきた。

 バカはまだ呼びにいってないので、おそらく偶然の来訪なのだろう。

 

 果たしてその表情はというと……。


「血税を無駄遣いしていた、重罪人のリクト・ガードマンを国外追放にしてやりましたよ!」


 なんとも晴れ晴れとした笑顔を浮かべながら、オチブレルがやってきた。

 国王は怒りのあまり顔を真っ赤にして、ぷるぷると肩を震わせ……。


「ばっかもぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「ひぃい! ち、父上? どうなさったので……」

「この愚か者が! なんて馬鹿なことをしてくれたのだぁ!」

「ば、ばか? 完璧なこのボクがどうして馬鹿なのですか?」

「それがわからぬから馬鹿だといってるのだぁ……!」


 かくして、最強の結界魔法使いは野に放たれた。

 その波紋は世界中に広がっていくことになっていく……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「あのものは天才だ。100年、いや、1000年に一人のな。貴様、王都全体を包んでいる結界について知っているか?」 >「魔物除けの結界ですか? もちろん、存じております。あれのおかげで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ