23.天秤
天秤のリブラとの戦闘中。
俺は討伐ではなく、別の手段で、やつを鎮圧することにした。
「カーミラ、後頼む」
「はぁ!? 何をいきなり言い出すのじゃ!?」
俺はカーミラを召喚、肩にぽんと触れる。
「俺はちょっと準備がいるから、その間リブラの相手を頼むな」
「無理無理無理無理!!!!! 上位種にかなうわけがないのじゃ!!」
リブラはたしかに、カーミラよりも上位の吸血鬼だ。
真っ向から勝負を挑んで勝てる相手ではない。
「時間稼ぎでいい。それに俺の力も貸してやる」
俺はカーミラに防御鎧と、身体強化用の結界を付与する。
さらに周囲にはいくつもの【星】をまとわせた。
「あとよろしく」
「ちょっと!?」
リブラがゾンビどもに命令を下す。
大量のゾンビどもが俺に押し寄せてきた。
「わしは逃げるぞ!?」
「その場合はおまえの命の炎を消す」
「鬼か貴様!!!!!!!!!!!! くっそぉおおおおお!」
カーミラがゾンビ相手に突っ込んでいく。
ゾンビが彼女にかみつこうとするつが、鎧によって弾かれる。
彼女は血の手裏剣をつくり、【星】とともに、周囲のゾンビどもの頭を消し飛ばす。
無論火力が足りないので、完全に殺すことはできない。
それでいい。
時間が稼げれば。
「なにやらよからぬことを考えおるようだな?」
にやり、とリブラが不敵に笑う。
「お互いに、な」
やつがさっきからその場から動かない。
俺と同様、儀式を完成させようとしてるのだろう。
「何かするつもりだろうが、遅い。こちらのほうが一手早かったようだぞ」
リブラが手に持っている天秤を掲げる。
「【天秤に魂を乗せる】」
すると俺の胸に、ぼぅ……という音とともに青白い炎がともる。
「これはあなたの魂。そして、私の魂とを、この天秤に乗せる」
リブラの手には天秤がある。
そこに、俺とリブラの魂の炎が乗っかる。
「今から儀式を行う。魂の強さ、すなわち精神力を比べる。そして、より強い魂の持ち主の言うことを強制的に聞かせることができる」
「精神力か」
「ええ。精神力、つまり思いの強さだ」
「そうか……なら、俺の勝ちだな」
「なに……?」
リブラの天秤が……がくん! と傾く。
俺の方に、だがな。
「ば、馬鹿かな……? あり得ない。こちらは悠久の時を生きる吸血鬼! 精神はもはや神の領域に達してるといって過言ではないのに!?」
「神とか言ってるくせに、人間ごときに動揺するなんてな」
「くっ……! だ、だが……無駄だぞ。こちらは不死の存在。自害を強いても、殺すことはできないぞ!」
なるほど。
この天秤ゲーム、リブラが勝とうが負けようが、リブラにとってまったくデメリットがないわけか。(リブラが負けて死ぬことはない)
クソゲーもいいところだ。
「だが、いい。時間が稼げた」
「なんだと……?」
「天使召喚……来てくれ、サリエル!」
その瞬間、俺の目の前に魔法陣が展開する。
そこから出てきたのは……。
白い翼をはやした、ひとりの、美しい女性。
俺の幼馴染……フレア・サリエルだった。




