19.は? ゾンビ余裕だが?
ギルドからの依頼で、俺は生きる屍のいるというダンジョンへとやってきた。
俺たちの拠点としてる場所から、馬車で数時間ほどの、【ツァナ】という村へとやってきた。
『なぜ村にきたのだ?』
影の中から、カーミラが尋ねてくる。
「このツァナって村の近くにダンジョンが発生したようだ。一番事情の知ってるだろう村の人に、話を聞こうと思ったんだが……」
『死の気配がするのぅ』
……カーミラの言うとおりだ。
人の気配がまるでしない。
どうしちまったんだろうか……?
「【響】」
『ふぁ!?』
俺は結界を周囲に薄く広げる。
村を結界が包み、ゆっくりと閉じていく。
うん。
「子供がいるな。二人」
『まてまてまたんかい!』
「なんだ?」
『なんだ今のは!?』
「? 結界術、補助式の【響】だが?」
結界を展開し、小さくする。
結界を通るときに、生物を探知する。
「っていう単純な仕組みの補助式なんだが……」
『探知スキルってことか……。結界術万能すぎるじゃろ……』
「まあな」
響によって、村には生きてる人間が二人居ることだけが判明した。
「生きてる人間は……な」
『なんじゃひっかかる言い方しよって……』
「いるんだよ、生きてないやつが」
『は……?』
そのときである。
「グボロォオォオオオオオオオオオオオオ!」
村の建物のかげから、人間らしき存在が現れた。
そいつはしかし、生者ではなかった。
『ひぃ!? ぞ、ゾンビぃ!?』
体の腐った人間が、俺に向かって襲ってくる。
『ににに、逃げるのだ! ゾンビはかまれたらゾンビになるぞ!』
「大丈夫だろ、別に」
『何を言って!? 早く殺さないか!』
「いやいやいや。殺さないよ」
『何を阿呆なことを……ああ! かまれるぅう!』
ゾンビ(仮)が、俺の肩にかみつく。
がきぃん!
『! これは……結界の鎧!』
全身を包み込むようにして、俺は結界を纏っている。
これによって、どんな物理攻撃も防ぐことが出来る。
『あ、相変わらずなんという素早い結界構築……』
「そうなの?」
『結界術にはかなりの集中力がいる。この強度のものを作り上げるには、特にな』
「ほーん」
まあこの程度呼吸するくらい、簡単に作ること出来るけどね。
さて。
「治してやるから、待ってな」
『な、治す……? 何を言って……』
俺はゾンビ(仮)を、結界で包み込む。
そして、結界内部の時間を巻き戻す。
『治癒術か! こないだ人を蘇生させた……あの!』
「まあそんなもんだ」
『しかしゾンビ化は病気ではないから治せない……』
「治ったな」
『なにぃいいいいいいいいい!?』
目の前には、きれいな女性がたっていた。
さっきまでの腐った肉体からは、考えられないくらい美人だ。
「あ、あれ……あたい……なんで……?」
『なんじゃこれ!? 何が起きてる!?』
「いや、結界の中の時間を戻しただけだが?」
『ふぁ!?!?!?!?!?!?』
そんなむずいか?
結界内部だけの時間を、戻すことくらい容易いだろ?
『あいかわらず意味がわからん……! なにをやってるのかさっぱりだし、てゆーか! そんなことできるのほんとうに!?』
「? おまえ何見てたの? 出来てるじゃん」
『ぬがぁああああああああ! むかつくんじゃあああああああああ!』