18.遺跡の不死者
ある日のこと。生活費を稼ぐため、ギルドに顔を出すと、受付嬢がこういった。
「ギルドマスターがリクト様にお会いしたいそうです」
「俺に?」
何かしてしまっただろうか……?
『こないだのモンスターの大量発生の件じゃないかの?』
俺の影のなかから吸血鬼、カーミラがそういう。
こいつは日の光が苦手……というのは建前で、朝が苦手らしく、大半は俺の影の中に隠れているのだ。
しかし……うーん。でも受付嬢さんすごい深刻そうな顔をしてるし、怒られるとか、こないだの報酬関連じゃあなさそうなんだよなぁ……。
「仕事の話?」
「はい。リクト様に緊急の仕事を頼みたいと……」
仕事か。まあいいか。仕事なら。フレアとの旅の資金を稼いでおきたい。
「了解した」
ということで、俺はギルドの二階へと通される。
ギルマスと名乗る人物から、部屋にしつらえたソファに座るよう促される。
そして、俺を呼び出した本題を言ってきた。
「実は最近、謎の遺跡が突如出現したのだ」
「ほぅ……遺跡?」
その調査とかいうんじゃあないだろうな?
時間がかかって、あんまかせげない仕事はしたくないんだが……。
「遺跡のなかに、謎のモンスターが出現しててな。その化物は人の形をしてるが、確実に生きてる人間ではない。死体が動いてるんだ」
「生きる屍……ってやつか」
そういうモンスターがいるのだ。
死者の肉体がモンスターになった存在……。
「生きる屍が、その遺跡内で大量発生してる。また、親玉らしき存在が確認されてる」
「そこまで調査が進んでいるのか……。その親玉とは戦ったのか?」
「ああ。だが、どんな攻撃も通用しなかったそうだ。Sランクの連中に行かせたんだが、何もできず帰ってきた」
なるほど……不死の存在か。
カーミラ同様、吸血鬼なのかもしれん。
『可能性は高いな。倒せないとなると、われのように、封印しか手立てはないだろう』
なるほど、だから俺がかり出された……か。
「あなたはこないだの高難易度クエストを一人で解決した実績がある。今回の件も、あなたなら解決できるだろうと思い、こうしてギルマスである私から、直接頼んでいる次第」
どうやら結界術師だから呼ばれたって言うより、単純に解決能力が高い(強い)から呼ばれた感じだな。
まあいいか。倒そうが、封印しようが、ようはその遺跡の中に発生した吸血鬼(暫定)を、封印して、活動できなくすればいいわけだ。
「了解した」
「おお、引き受けてくれるか!」
「ああ。だが、報酬はもらうぞ」
「もちろんだ!」
こうして俺は新しいクエストを受けることにしたのだった。