16.
俺、リクトは諸々を片付けて、嫁の待つ街へ戻ってきた。
転移で。
「あのなぁ……汝、どうなってるのじゃ?」
隣には幼女吸血鬼、カーミラが居る。
呆れた調子で尋ねてきたが……どうなってる?
「なにが」
「何がではない。なんだ汝? 破壊の光で攻撃したと思ったら、死者すら蘇生させて見せた。並みの人間にできることではないぞ? いったいどうやったら、汝のようになれるんだ?」
俺はフレアの泊ってる宿屋へと歩きながらいう。
「師匠に教えてもらったんだよ」
「師匠?」
「ああ。師匠もまた、魔法の使えない人だった。無属性魔法の使い手でさ」
この世界の魔法には、6つの属性が存在する。地水火風光闇。そして、それ以外の属性、無属性魔法。
「俺の結界術は、厳密に言えばこの無属性魔法に分類される。師匠から、無属性魔法の伸ばし方、アレンジの仕方を教えてもらったのさ」
「ふぅむ……ということは、師匠は汝より強いのか?」
「そうだな。俺より遙かに」
「どこの誰じゃ?」
「今どこに居るのかわからないけど、ガーネットって名前……どうした?」
ぶるぶる、とカーミラが震える。
「め、冥界の魔女……」
「はい? なんだそれ、冥界の魔女って?」
「死者の国で、悪しき魂が地上に還らぬよう、番人をしてる魔女じゃ!!!!!!!」
死者の国?
なんか色々専門用語が出てきたぞ……?
「ガーネットは、我ら牙や、魔なる物たちが最も恐れる魔女じゃ……なるほど、主の強さの秘訣がよーーーーーくわかった! あの魔女に育てられたのならば、そりゃ強いわな!」
たしかに師匠はすごかったな……。
あの人、属性魔法なしで、素手で古竜とか普通に倒してたし。
「そんなすごい人物とよく知り合えたなおぬし」
「まあ……色々あったからさ。色々」
目を閉じると、当時のことを思い出す。
……死にかけてる、フレア。襲い来る謎の存在。窮地に現れたの……あの橙色の髪の魔女。
あの人がいなかったら、俺も、そして、フレアも……今こうして生きては居ないだろう。
師匠、ありがとう。今日もあなたが教えてくれた力で、人を救うことができた。
「わらわはなんて不幸なんじゃ……冥界の番人の弟子に見つかってしまうなんて……うう……」
がっくり、とカーミラは肩を落とすのだった。