14.捕縛、圧殺
俺はイトイの街へとやってきた。
どうやら怪我人が多数出ているらしい。
転移の力を使ってやってきたのは、イトイの街外にある草原。
そこは……。
「なんだこりゃ……オーク? それもこんなにたくさん?」
視界に映るのは大量のオークども。
豚の顔をした亜人のモンスターと、それに対抗する冒険者(だと思われる)。
「スタンピード、デシ」
俺をここへ誘った商人さんがそういう。
なるほど、モンスターパレードか。
食糧難におちいった魔物は、大量に集まって、人間を狩りに街へ行くという。
この現象をスタンピードという。
普段魔物はよっぽどバカじゃないかぎり街には近づかない。
いけば人間が出てきて、袋だたきにあうことは確定してるからだ。
それでも、飢えて仕方ないとき、こうしてたくさん集まって、魔物は人を襲いにやってくるのである。
「商人さんは結界の中に入ってて」
「どうするデシか?」
このあたりを【 】で消し飛ばしてもいいが……。
中には人もいるしな。
それに人里も近い。
【 】は強力だがこの距離でうてば、街も危うい。
「ということで……こうする……【結】!」
俺は巨大な結界を周囲一帯に張る。
そして、ずずず……と縮めていく。
前にやった、薬草を採ったときと同じ使い方だ。
結界の範囲を徐々に狭めていく。
「な、なんだこの結界……?」
「おれたちだけすり抜けるぞ!」
人間だけを選別し、オークだけを結界の中に留める。
そして結界を徐々に小さくしていくと……。
「みろ! オークどもが一網打尽だ!」
結界内には大量のオークたち。
結界の範囲はだいぶせばまっており、やつらはぎゅうぎゅう詰めになっている。
「そうデシ! 身動きがとれないところに、みんなで一斉にぼこるんデシね!」
「いや、ちがう」
「ほえ……? じゃあなにを……?」
俺はさらに結界の範囲を狭める。
すると、どうなるか……。
ボキッ……!
「な、なんだ……結界がどんどん小さくなっていく……」
「見ろ! なかのオークたちが、苦しそうにしてるぞ!」
そう、結界に閉じ込めたあと、その結界を小さくしていけばどうなるか……?
答えは、結界に押しつぶされる。
ドンドンと結界が小さくせまくなっていく。 なかはすし詰め状態だ。
さらにさらに縮めていく。
ごき……べき……ばき……とどんどんと潰れていくオークたち。
やがて……手のひらくらいの、球体になった。
宙に浮かんでいるのは、縮んだ結界。
その内部は真っ赤に染まっている。
もちろん、オークたちの血だ。
「え、えぐい……」「すげえ……」「結界に閉じ込めて、圧死させるなんて……」「こんなやり方があるなんて、すごい!」
とまあ、冒険者達が苦戦していたオークを、俺は瞬殺したわけだ。
「ありがとうデシ! おかげでみんな助かったデシ!」
商人さん、そして冒険者の皆も笑っていた。
俺はその笑顔を見れて満足だった。