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12.薬草拾いと、モンスター退治



 俺は冒険者としての初めての仕事を受けることにした。 

 サラディアスの街の外に自生してる、薬草を採ってくるというもの。


「ぎゃははは! 薬草拾いかぁ、いかにも欠陥品らしい仕事だなぁ」

「あ? ああ……カマッセくん。もう立ち直ったの?」


 さっき決闘の際に、自分の魔法で自爆した、カマッセ・ディ・エチゴーヤくんだ。


「わたくしは森に入ってモンスター討伐だよ! 欠陥品の君とちがってねえ!」

「はぁ」


 まあ結界魔法しか使えない欠陥品であることは事実だから何も言い返せないのである。


「所詮防御しかできない欠陥品なのだから、森に入らないようにね!」

「? ああ、俺が活躍して、自分が目立たないのがいやなのかおまえ?」

「そ、そんなこと一言も言ってない! 優しいわたくしが忠告してあげてるのだ! 分不相応なことはするなと!」


 ふんっ、と鼻を鳴らしてカマッセ君が去って行く。

 後ろから剣と盾持っている女が続く。

 

 多分取り巻きなんだろう。


『あのものは阿呆なのかの。おまえさまの強さを目の当たりにしたというのに、強いことを信じぬとは』

「まあ、人は自分の見たいものしかみえないっていうしな」


 俺に負けた事実を認めたくないだろう。 かわいそうに。


「んじゃま、薬草拾いにいくか」


 その後、サラディアスの街を出て……俺は目的地まで、ひとっ飛びした。


「よし到着」

『よしじゃないのじゃぁああああああああああああああああ!』


 くっついてきた、吸血鬼(今は猫)のカーミラが叫ぶ。


「どうした?」

『何をさらっと飛んでいるのじゃ!? おぬし何やったのじゃ!』

「魔法で飛んだ」

『結界魔法しか使えぬのではなかったのか!?』

「いやだから、結界魔法で飛んだんだよ」

『意味が! さっぱり! わからんのじゃ!』


 ああ、そうか、普通の人は結界を使わずに飛ぶのか。


「簡単な原理だよ。【結】」


 俺は空中に球体上の結界を出現させる。 そこに近くに置いていた石を入れる。


「結界ってのは空間に対して張るものなんだ。こんな風に空中のある一点を座標にして、張ることはできる。中に石を入れると、この結界が空に浮かんでいるから、石もまた空に浮いてることになる。ここまでは?」

『ま、まあなんとか……結界は空中にも作れるということじゃな』

「そう。あとはこの結界を移動させれば良い」


 結界が移動すると、中に入ってる石もまた空を移動する。


「このように、俺の体を結界で包んで、俺ごと結界を移動させれば、擬似的に空を飛ぶってわけだ」

『あ、相変わらず規格外の使い方するの……おぬし……』

「まあこれしか使えないんでね」


 道具が一つしかないのなら、使い方で工夫しないとな。


「さて、じゃ薬草を拾いますか」


 俺たちがいるのは森の入口だ。

 街から続いていた草原は、森に近づくにつれて、下に生えている緑も濃くなっていった。


『どれが薬草か見分け着くのかの?』

「そんなの必要ないよ。【結】」


 俺は周囲一帯に、結界を張る。

 

『何をしてるのじゃ? なにもおきておらんが』

「結界を張ったんだよ」

『目の前になにもないが?』

「デカい結界を張ったんだ。で、こうする……」


 俺はぐぐぐっ、ゆっくり指を曲げていく。

 ず……ずずず……。


『!? 光の結界が徐々に縮んでいくのじゃ!?』


 広範囲に広げた結界を、ゆっくりと縮めているのだ。

 やがて、目の前に緑色をした球体が出現する。


 結界をとくと……。


 ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサ!


『なんじゃこりゃああ! 全部……薬草か!?』

「そのとおり。このあたりに生えていた薬草、とりあえず全部」

『何をしたのじゃおぬし!?』


 俺はカーミラに説明する。


「このあたりに球体状の結界を作ったんだ。で、結界を徐々に縮めていく。で、目当ての薬草【以外】を結界の外に出す。すると……」

『結界の内部には、薬草だけが残る……?』

「そのとおり。結界はほら、閉じ込める使い方もあるだろ?」


 カーミラと戦ったときを思い出して欲しい。 

 あんなふうに結界は相手を閉じ込める檻になるのだ。


「結界は極めると、どれを中に入れるかって選別できるようになる。薬草だけをうちに留めるって命令を下しておけば、いちいち選別せずに、楽して大量に薬草がゲットできるってわけさ」


 俺はゲットした薬草を【収納インベントリ】しておく。


『あいもかわらず、奇想天外な使い方をするのじゃ……おぬし……。結界だけでここまでできるとは、すごすぎるのじゃ』

「そりゃどうも。さて帰るか……」


 と、そのときだ。


「うぎゃばぁあああああああああああああああ! たぁすけてぇええええええええええええええええええ!!!!!」


 どこからから、悲鳴が聞こえてきた。

 この声……。


『あの噛ませ貴族じゃな』

「みたいだな」


 俺は体を結界で覆って、空を飛ぶ。


『なんじゃおまえさま、助けるのか?』

「当たり前だろ」

『自分を馬鹿にしてきたというのに?』

「? それがピンチの人を助けない理由になるわけ?」


 師匠から教わった技術は、人を守るためのものだ。

 ピンチだとハッキリわかっているやつを助ける。


 そこにいっぺんの迷いも無かった。


『変なやつじゃが、いいやつなのじゃなおまえさま』

「どーも。っと、いたな」


 眼下でカマッセたちが、イノシシに追いかけられていた。

 お連れの女たちも後ろから付いてくる。

「あっ!」


 取り巻き女のひとりが転ぶ。


「しめた! 今のうちに逃げるぞ!」

「え!? か、カマッセ様! ひどい!」

「うるさい! 命あってのものだねだ……ぷぎゃっ!」


 俺はカマッセを結界で閉じ込める。

 やつは勢いよく鼻をぶつけて悶絶していた。


「そこでおとなしくしてろ」

「け、欠陥やろう……!」


 俺は地上へと降り立つ。

 イノシシモンスターがこっちに向かって突進してきた。


「【バウンド】」


 転んだ女の子を覆うように、結界が出現する。

 イノシシは軟質性の結界にぶつかって……。


 ぼよぉおおおん!

 どがぁん!


 はじき飛んだイノシシは、大木にぶつけて気を失った。


「大丈夫かい?」

「あ、ありがとう……」


 取り巻きちゃん……獣人のようだ。

 彼女は怯えながらも、しかし、俺に頭を下げる。


「お礼はあとでいいかな」

「あと……?」


 そこへ……。


「GYAORAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

「ひぃいい! お、猪王オーク・キングぅ……!!!!」


 顔がイノシシで、二足歩行のモンスター。

 猪王が現れた。


「Bランクの強力なモンスターがこんなところになんでいるのだ!? ひいぃ! 駄目だぁ! 勝てっこないよぉお! ままぁ……!!!!」


 ふむ……勝てっこないってことは、昔負けたことでもあるのかな。

 カマッセのやつ、涙流しながら叫んでいる。


「GUROOOOOOOOO!」


 デカいイノシシの化け物は、俺めがけてやってくる。

 だが、まあ。


 バラバラ……!


「なっ!? う、うそだ!? 猪王が……一瞬で細切れにされただって!?」


 バラバラになった猪王の死体を見て、カマッセが驚く。


「な、何をしたのだ貴様!?」

「結界変形、攻式……【ワイヤー】」

「ワイヤー!?」

「結界を極限まで細くして作られた、糸を張っておいたんだよ」


 これはピアノ線なみに固く、そしてナイフのように切れ味が良い。


 ワイヤー状の結界に触れた猪王は、肉体をバラバラに分断されたって訳だ。


「す、すごい……!」「Bランクを一瞬でたおしちゃうなんて……!」


 取り巻きちゃんたちが、きゃあきゃあと歓声を上げる。

 カマッセは実に悔しそうに、ぐぬぅ……とうなっていた。


「馬鹿な……そんな……欠陥品にこんなマネができるわけが……」

「まあ、そんなふうに、できないって何事も決めつけてちゃ、何もできないよ」


 これしかできないっていうんだったら、諦めないで、極める。

 それ以外に、少ない手札しかない人間が、強くなる手段はないのだ。


 


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 薬草のみを取っているということは、若い若葉のようなものや根っこまで全てだろうから、今後その地で薬草が生えることはなくなるのだろうな。 大丈夫なのだろうか?不安だ。
[気になる点] 前話(11話)ラストで【転移】で草原へ到着しているのに、冒頭がサラディアスから始まるのはちょっとねぇ・・・ カーミラの空を飛んだ驚き方も、【転移】を見てからにしては驚きすぎかと・・・
[気になる点] >Bランクの★協力★モンスターがこんなところになんでいるのだ!? 協力→強力 でしょうか?
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