10.マト当て、そして決闘で驚かせる
帝国冒険者ギルドにて。
俺は冒険者登録するべく、試験を受けている。
「続いての試験は、マト当てです」
ギルドの裏手にある、練習場みたいなところにて。
少し離れたところに、魔道具っぽいマトが置いてあった。
「あのマトに遠距離から攻撃してください。マトには威力を測定する魔道具が組み込まれており、数値が一定以上あれば合格となります」
「なるほど……遠距離の威力を試すわけですね。魔法とか関係なく」
「はい。そのとおりです。なので、魔法以外でも、たとえば弓などでもOKです」
さて、どうするか……。
「どれくらいの威力まで耐えられるんです?」
「固定化の魔法がかかってますので、大丈夫です。絶対壊れません」
ふぅん……そうか。
壊れないのか。いや、そうなぁ……。
「さっきの魔道具の例もありますし……手加減した方がいいですかね」
「欠陥品の分際で、何を調子乗ってるんだねきみぃい!?」
……やかましいやつがきたな。
「はっはっは~ん! 結界魔法しかつかえぬ欠陥品がよぉ! どうやってマトに攻撃を当てるってんだぁーい!」
「あ、噛ませ」
「カマッセだ!!!!!!!!」
さっき絡んできた帝国貴族、カマッセがまたからんできやがった。
「君はこの試験不合格だろ? なにせ! 結界しか使えないのだからね! え、どうやって遠くのマトに当てるというのかね? んんぅ~?」
はあ……ウザい。
帝国に来ればこの手の輩はいないとおもったんだがな。
「このわたくしが手本を見せてやろう」
「いや、結構です」
「見せてやろう!」
なんでこいつ、こんなからんでくる……まさか。
「あんたも冒険者登録するのか?」
「そのとおり!」
「貴族なのに、なんで?」
「うるさいよ!」
ちら、と受付嬢さんを見ると、疲れたような顔をしていた。
まあ、この噛ませ、何らかの理由……たとえば家を追われたとかで、冒険者やらないといけなくなったんだろうな。
「見よ! わが滅獄の炎を!」
帝国の貴族ってんだから、さぞ凄い魔法を使ってくるんだろう。
「来たれ! 火の精霊! 我が手に宿りて敵を討て……火球……!」
カマッセが放った火球はマトへ一直線に飛んでいく。
どがんっ!
「威力132……合格です。すごいです、合格ラインを大きくオーバーしてます」
「ふほほほぉ! どうだいみたかい? これがわたくしの実力!」
なるほど、イキがる程度には、魔法の腕はあるようだな。
しかし……なるほど。
あのレベルでいいわけだ。
「では、リクト様の番です」
俺はマトの前に立つ。
ずらりと並び立つ、10個のマト。
『おまえさまよ、わかっておるな?』
「わかってるよ。【 】は使わん」
狭いところじゃ使えないしな、威力がありすぎて。
だから……こうする。
「攻式、【星】!」
右手を突き出すと、そこに小さな結界が出てくる。
ズドンッ……!
打ち出した【星】は魔道具をぶち抜いて、背後の壁まで貫いて見せた。
ふぅ……まあ、こんなもんだろ。
「「ええええええええええええええええええ!?」」
え、何驚いてるんだ……?
ちゃんと威力も抑えたよな?
「む、無詠唱!? 今、詠唱をしてなかったねきみ!?」
「ああ、それが?」
「無詠唱魔法は超高度な技術じゃ無いかね!?」
「そうだな。それがどうした? あんたは使ってなかったみたいだが」
カーミラが汗を垂らしながら言う。
『こ、こやつ……高等テクだとわかったうえで、使ったのか……』
いや、使えるものを使っただけだぞ。
高等テクらしいが、俺には使えるしな。
「無詠唱だと威力が落ちます。そのうえで……魔道具を破壊してしまうなんて……!」
「え? うそ……! 壊れたの!?」
俺はマトに近づく。
【星】は完全に魔道具を貫通していた。
「おかしいな……壊さないように手加減したんだが……」
「う、うそだ! でたらめだ! だ、だいいち結界でどうやって攻撃したのだ!? わたくしは信じないぞぉ!」
いや信じないって言われても……。
事実なんだが……。
「んじゃどうすれば信じるんだよ」
「け、決闘だ! わたくしと決闘するのだ!」
はぁ……?
なんでそんなことしないといけないんだ……?
「たしか第三試験は実技試験だったな、女?」
カマッセが受付嬢さんに言う。
女性のこと女っていうの、まじで不愉快だった。
名前があるだろうが。
「はい」
受付嬢さん……胸のプレートにはランカさんって書いてあった。
ランカさんはうなずいて説明する。
「本来なら我がギルドの冒険者との1対1でやってもらい、実力を試す形式になっております」
「ならばこのカマッセとこの欠陥品が戦って、それを冒険者に評価してもらうのはどうかね?」
まあ、実技の実力を見せればいいわけだしな。
「ええっと……リクト様がよろしければ……」
「まあ、別に良いよ」
こいつが相手だろうと、冒険者が相手だろうと、戦いは不可避。
別にどっちでもいいしな、俺は。
「ふん! 貴様、わたくしの実力を見て腰抜かすなよぉ!」
「はあ……てゆーか、高等テク使った相手に、よく勝つ気で居られるな」
「だまれ欠陥品! わたくしは信じない! さっきのだって、何かのトリックに違いないのだ!」
ああ……もう……なんか嫌なやつを思い出すなぁ。
「さっさと始めようぜ。時間の無駄だ」
「ふん! いいだろう! 欠陥品! わたくしめの魔法に驚くがよい!」
俺たちは距離を取って構える。
相手は魔法使い、しかも詠唱を使ってくる。
翻って、俺は結界師。
「魔法の打ち合いで、わたくしが負けるわけがない!」
「魔法の打ち合い……ね」
まあ、魔法使ってくる相手に、物理で殴るのは無粋か。
魔法で来るなら、魔法で相手してやろう。
「それでは……はじめ!」
「来たれ! 火の精霊! 我が手に……」
俺は詠唱を待ってやる。
いちおうこれは、相手のテストでもあるからな。
撃たせてやるか。
「くらえ! 火球!」
「【結】」
「はっ! ちんけな防御魔法で、このわたくしの魔法を防げるかなぁ……!」
防ぐ……?
「いや、その必要はないよ」
「なんだとぉ!?」
カマッセから火の魔法が放たれる。
それが俺の体に到達する前に……。
ぐるんっ!
「なっ!? ま、魔法の向きがか、変わっただとぉ!?」
俺めがけて直線に飛んできた火球が、180°向きを変えて……。
「うわあああ! くるなくるなうぎゃぁああああああああああああ!」
どがぁん! という音とともに、自爆。
「ふぅ……勝った」
「な、なに……を……なにがおきて……?」
カマッセは黒焦げになったが、まあ死んではいなかった。
あの程度の威力じゃな。
「結界で魔法を反射させたんだよ」
「は、な、何を言ってるんだ……?」
「おまえの周り、よくみてみ?」
「な……!? け、結界が……わたくしを中心に展開してる!?」
俺、ではなく相手の周りに結界を張ってある。
ドーム状の結界だ。
「結界変形の防式。【鏡】。魔法攻撃を反射させ、相手に自爆させる技だ」
結界は、別に攻撃を防ぐだけじゃない。
相手を閉じ込めたり、そして相手の攻撃を反射させたりできる。
ちなみに似たような術で、【弾】は物理攻撃をはじきかえし、【鏡】は魔法攻撃を相手に返す。
「魔法を……反射……そんなこと……できるなんて……」
「できるんだよ。結界魔法を極めたらな」
「そ、んな……すご……すぎる……」
どさ、とカマッセが気絶。
「すごいですリクト様! 結界魔法だけで、敵を圧倒してみせるなんて!」
受付嬢ランカさんがキラキラした目を向けてくる。
「どうもどうも。それで、結果は?」
「もちろん合格です!」
「ああ、ちがうちがう。カマッセは?」
「え、ああ、合格です」
「だよね。十分な魔法の威力ありますしね」
カーミラが尋ねる。
『おまえさまよ、自分が合格かどうか聞かぬのか?』
「え、大丈夫でしょ。カマッセが通るんだし。ですよね?」
こくこく、とランカさんがうなずく。
「ようこそ、冒険者ギルドへ! リクト・ガードマン様! あなた様のギルド入りを、心から歓迎いたします!」
まあとりあえず、俺は冒険者になれたのだった。
ほっとした。ふぅ。
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