01.結界師は追放される、最強なのに…
こちらは、短編
『最強【結界師】の気ままな新婚旅行〜弱すぎる味方に最強結界を施してたのに、自分が強くなったと勘違いした勇者に追放された。効果が永続じゃないと気づいても遅い、俺を溺愛してくれる幼馴染と旅してる』
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↑を改題した、連載版です。
新規エピソードは4話からです!
「【リクト・ガードマン】。結界魔法しか使えぬ欠陥品は、完璧なこのボクには必要ない。出て行け」
「……………………え?」
ダンジョン攻略を終え、近くの街へ戻る最中の出来事だ。
パーティのリーダーから、突如として追放を言い渡されたのである。
俺……リクト・ガードマンはあまりに突然のことで、呆然としてしまった。
「ボクの話を理解できなかったか? おまえはこのパーティにふさわしくないから、出て行けといったのだ」
「あ、……え? ど、どうして……だ?」
「明日からボクはお供どもを引き連れ、高難易度ダンジョンを攻略しようとしてる。だが今のままだと攻略は難航するだろう。どうしてかわかるか、リクト・ガードマン?」
俺への嫌悪感を丸出しにしながら、そう言い放つのは、パーティのリーダー……【オチブレル】殿下。
オチブレル=フォン=ゲータ=ニィガ。
この国の王太子であり、勇者の職業を持つ男。
職業とは生まれ持って天から授かる恩恵のことで、かつて魔王が生きていた頃は、魔王を倒す使命を帯びた存在だった。
だがそれも魔王が滅びた今では、単なる称号でしかない。
ゲータ・ニィガ王国の現国王は、いずれ王となるオチブレル殿下に、箔をつけるため、現在はパーティを組んでダンジョン攻略をさせているのだ。
宮廷魔導師である俺は、王命により、殿下が怪我しないようにと、護衛としてついてきているのである。
「おまえのような、足手まといの欠陥魔導師がついてきているからだ」
欠陥魔導師。
俺についたあだ名だ。
俺は1つの魔法しか使えないのである。
【結界魔法】。
文字通り、結界を作る魔法のことだ。
どういうわけか、俺は生まれつきこの結界魔法しかつかえないのである。
「ボクは十二分に強くなった。もはや、貴様の防御など必要ないくらいにな。おまえも見ただろう? ボクがダンジョンのモンスター達を華麗に、一撃で倒していく様を! 一度だって反撃を受けたか?」
「いいえ……」
「そうだろう! 天下無双の剣の腕を持つボクに、結界なんて無粋な物は必要ないのだ!」
オチブレル殿下の手には、国宝である聖剣が握られている。
たしかに聖剣を装備したオチブレル殿下の攻撃力は、【並のモンスター】など一撃で倒してしまうだろう。
だが……俺は彼の言葉を否定する。
「オチブレル殿下、聞いてください! 確かに俺は結界を張る以外何もしてない……足手まといと思われてもしょうがないかもしれません。ですが……」
「うるさい! 貴様が結界張るしか能が無いのは事実だろう?」
「……そう、です。ですが……俺の結界は……」
「言い訳は無用!」
ぴしゃり、と言葉を遮られてしまった。
殿下は、気づいていないのだ。
俺の結界が、【防御だけ】の代物ではないということを。
いや、説明したはずだが……これは……。
「殿下。俺は、あなたのために働いております。たとえば野営の際、俺の張った結界のおかげで魔物が近寄ってきません。それに殿下やお供たちの体には結界が張ってあります」
「はッ……! 結界を体に張るだと? 馬鹿馬鹿しい」
殿下がさげすんだ目を俺に向けてくる。
「結界魔法というのは、ドーム状のバリアのことだろう? 魔法教本に載っている、初歩の魔法だ。魔力さえあれば誰でも使える」
「はい。そのとおりです。基本の魔法です。ですが俺は、結界を応用して、いろんなことができるのです。それで俺はあなたを支えてきました!」
というか、ちゃんと説明したはずなんだが……。
「馬鹿馬鹿しい。体に張る結界などきいたことない。結界がボクを支える? そんな恩恵を感じたことは一度も無いぞ」
「そんな……」
ふんっ、と再度殿下がさげすみのまなざしを向けてきた。
「平民出身で、魔法の才能を見抜かれて王立学園に推薦入学し、歴代トップの成績で卒業、最年少で12人しかいない宮廷魔導師の一人になった天才ときいたが……蓋を開けてみれば結界しか能の無い欠陥品とはな」
確かに、俺は他の宮廷魔導師と比べると、使える魔法の数は圧倒的に少ない。
なにせ結界しか使えないのだから。
「ですが……俺は、あなたたちが安全に旅を続けられるように、ずっと頑張ってきたんです……」
「必要の無い結界を施してただけだろう? というか、貴様ほんとうに魔法をかけていたのか?」
「ど、どういう……」
「結界など、目に見えぬではないか」
殿下の言うとおり、結界とは通常目に見えぬものだ。
なにせ基本は光のドームなのだから。
張ってあるぞといわれても、なかなか効果が実感しづらい。
もっとも魔法に対する適性が高い人は、結界を視認できるんだけどな。
「聡明なるボクは気づいていたぞ。結界を張っていると嘘をついて、ついてきてるだけだと。目的はボクのお供としてついてくることで、支払われる、莫大な金だろう?」
「……! た、確かに……このパーティに参加したのは、金が目的です……」
魔法学校を卒業した俺には、結構な数の就職先があった。
その中で宮仕えしたのは、安定した給料が手に入ること。
そして、殿下のお守りをやろうと思ったのは、そのことでもらえる多額の補助金が目当てだ。
だが決して、俺はその金を自分のために使っていない。
「ふん! 金が欲しいか、卑しい奴め。仕事もせず、大金をもらうなんてな」
「その金は、家族のために……」
「家族? はっ! 貴様は孤児だろう。家族なんていないではないか」
確かに俺は孤児だ。
王都外れの村にある、孤児院で育てられた。
その孤児院に、全額寄付しているのである。
貧乏な孤児院なのだ。
だから、金が必要なのだ。
「…………あ、あの! 皆さんはどう思いますかっ?」
俺はお供……パーティメンバーを眺めていう。
しかし彼らは……。
「嘘ついて国の金を着服するなんてな。最低だなおまえ」
「どうせ宮廷魔導師も、裏で金を使ってなったんだろ?」
「魔法が1つしか使えない宮廷魔導師なんて前代未聞だもんな」
……駄目だ。
他のパーティメンバーたちも、俺のことを認めてくれていないようだ。
「そんなわけだ、リクト・ガードマン。貴様は今日限りでボクのパーティから追放。そして、国外追放とする!」
「は、はぁ……!? こ、国外追放!?」
そんな……!
理不尽すぎる……!
「どうして!? 何かしましたか俺!?」
「貴様はボクをだましていた。そして国民の血税を不正に着服していた。ただ役に立たないだけならまだしも……そんな風に嘘をついてまで、私腹を肥やそうとした。そんな大罪人を、この国においておくわけにはいかぬ。即刻、立ち去るがよい……!」
そんな……。
そん、なぁ……。
「猶予は今日より10日後。10日経ってまだ国に居るようならば、捕まえて罪人として処刑する。それまでに荷物を持って国を出るのだな」
……。
…………。
……………………はっ!
気づけば、辺りが暗くなり、雨まで降っていた。
ショックで今の今まで、茫然自失としていたらしい。
「嘘だろ……パーティ追放のうえ、国外追放だって? そんな……」
追い出されたら、大変だ。
孤児院はこの国にある。
国を出て行けってことは、もう二度と家族に会えない。
そして、もう二度と……あの子に会えない。
「そんなのは、嫌だ! なんとかして、追放処分を取り消してもらわないと!」
取り急ぎ、俺は王都へいき、国王陛下に会いに行くことする。
父親の口からきちんと説明してもらえれば、オチブレル殿下もわかってくれるはずだ!
そのときだった。
「ギャオオォオオオオオオオオオオオオオオ!」
空から突如として飛竜が襲ってきた。
森の中だから、魔物が襲ってきても仕方ない。
飛竜は素早い動きで俺に近づき、丸呑みしてこようとしてきた。
「【結】」
がきん!
かみつこうとした飛竜の牙が、全て……粉々に砕け散った。
俺の体を、透明のドームが包み込んでいる。
これが、結界魔法。その基礎の形だ。
飛竜は確かBランク、だったか。
その程度じゃこの【一番弱い結界】すら破壊できない。
「悪いが急いでるんだ」
俺は右手を前に突き出す。
「結界変形……攻式の五、【杭】!」
ドーム状の結界が変形する。
細長い杭となって、勢いよく伸びる。
「ごぎゃ……!」
飛竜の口に透明の杭が突き刺さり、体を貫通する。
「ぐ、ぎゃ……」
「まだ生きてやがるのか。結界変形。攻式のニ【刃】」
透明な杭が、今度は無数の刃に変化。
飛竜をズタズタに切り裂いた。
そう……確かに俺は結界しか使えない。
だが結界は意外と応用が利く。
防御だけじゃない、攻撃に転用することができるのだ。
それが、攻撃用結界、攻式。
ほかに防御用結界の防式、補助用結界の補助式がある。
「ごぎゃああああああ!」「ぎゃああああああ!」「ぐぎゃぎゃあああああああああ!」
「飛竜の群れ! ったく! 急いでるときに!」
……確かに俺は欠陥魔導師だ。
結界しか使えない。
だが、1つしか使えないからこそ、俺はそれを極めたのだ。
「結界変形、奥義のニ、【 】」
ドガァアアアアアアアアアアアアアアン!
……奥義を発動させたあと、飛竜の群れは、1匹残らず消し飛んだのだった。
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