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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

おっさんのごった煮短編集

ウシノクビ

家紋 武範様企画 「牛の首企画」参加作品になります。





 西暦2300年代にはいり、人類の生殖はかつての自然交配では無くなっていた。

 一部の愛好家の間でのみ、生殖行為は残ってはいたが、それには厳しい「不妊処置」を事前に行うことが義務付けられていた。


 これらは2100年代から頻繁に行われるようになった。デザイナーズベイビーが関連する。


 受胎後の受精卵の遺伝子をベクターウィルスをつかい、体外で書き換え、母体へと戻す。これにより、先天的な病気、奇形はなくなり、見目は往々にして良好なものに、身体能力や頭脳も向上していった。


 

 倫理的な問題は常に取り沙汰されたが、結果として「我が子」だけが「ナチュラル」として劣等種扱いされることを拒んだ親たちはこの技術を使うことを躊躇わなくなっていった。



2200年代に入り、突如としてその問題は起きる。

 すでにデザイナーズベイビーとして産まれ育った「アーティフィシャルヒューマン」略称「AFH(アフ)」同士の交配が進み、第3世代を迎えるあたりになって、生殖不全や交配による受胎ができても、どんなに書き換えたとしても「奇形」が発生することが頻繁し始めたのだ。


 人類は保管されていた「ナチュラル」の「卵」を使いアフの遺伝子との体外受精による「人工交配」をすることで、この「奇形」を抑えるようになる。


 結果として、生殖不全の割合は減少したものの、自然交配による「奇形」の発生頻度はむしろ増していき、結果、自然交配での「受胎の禁止」が発布されたのだ。


 

 高度に発展し、犯罪も未然に防がれることが当たり前になった世の中でも、犯罪被害そのものが0になることは無かった。


 性暴力を受けて、禁忌とされる体内受精で妊娠する女性もいた。彼女たちは国から補助がおり、堕胎をするのだが、中には様々な事情で堕胎が間に合わないものもいたのだ。


 


 路地裏で産み落とされたその子供はある宗教団体の幹部により拾いあげられた。

 神を冒涜し続けた現代に鉄槌をと唱えるカルト団体はその赤子を神の怒りの顕現であると崇めて、現人神(あらひとかみ)だと宣っては見世物のようにあつかった。


 言葉を紡ぐことも出来ぬ幼子に粗末な食事を与えて、あれこれと芸を仕込んで稼ぎに走った。


 恐ろしいことに、権力側にパイプを持ったその組織は摘発されることはなかった。

 犯罪者に孕まされて、望まれず路地裏に産み棄てられたウシノクビを教団は保護している。そんな誰もがわかるうわべの擁護で慈善活動だとされたのだ。



 ウシノクビは思う

 なぜ 産まれたのか

 

 ウシノクビは思う

 なぜ 化け物と呼ばれるのか


 ウシノクビは思う

 なぜ 神様なんて呼ばれるのか


 ウシノクビは思う

 なんで僕だけ檻の中なのか


 


 ウシノクビはただ普通になりたかった。






 ある朝、ウシノクビが目覚めると、ウシノクビは願い通りに普通になった。

 神様が願いを聞いてくれたのか。

 檻を出たウシノクビは喜びにあちこちに声をかける。





 モーと啼く声だけが木霊していた。




 

企画作品の周回をしてますが、皆さん巧くて、

ホントに凄いなーと。


感想など、お待ちしてますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] なんというおぞましい未来(゜Д゜;) 健全な人間道な世界を目指していたのに行き着くのが畜生道とは。
[良い点] ∀・)ぶっとんだ設定来ましたね(笑)でも、なんでしょうか、そういう光景を未来に想像しても可笑しくないぐらいのリアリティが込められていた作品でもあったと思います。 [気になる点] ∀・)個人…
[気になる点] このウシノクビは、奇形の極みのようなものでしょうか?
感想一覧
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